「揚げ物は体に悪い」と書いてある記事は、たくさんあります。理由の説明も、よく似ています。酸化した油。トランス脂肪酸。
ところが、11万人と4万人を追いかけた2つの研究は、どちらも「揚げ油の種類で分けても、差は出なかった」と報告しています。
揚げ物が好きで、やめられない。そういう方に向けて書きます。
先に、答えから。週4回を超えたあたりから、関連が報告されています。ただし、その関連は、体重・血圧・コレステロールを計算に入れると、大きく小さくなります。そしてスペインの4万人では、関連そのものが出ていません。見るべきものは、別にあります。
この記事は、査読を受けた論文をもとに整理しました。数字は、すべて原文から取っています。分かっていないことは、分かっていないと書きます。
週4回を超えたあたりから、関連が出ています
11万人を、最長26年追いかけた研究があります
ブリガム・アンド・ウィメンズ病院とハーバード公衆衛生大学院のグループが、2014年に報告しています(文献1)。米国の2つの大きな追跡研究をまとめたものです。
- 対象:看護師健康研究の女性70,842人(1984〜2010年)と、医療従事者追跡研究の男性40,789人(1986〜2010年)
- 除外:開始時にがん・糖尿病・心血管疾患があった人
- 調べたもの:2型糖尿病の発症と、冠動脈疾患(非致死性の心筋梗塞、または冠動脈疾患による死亡)
- 起きたこと:2型糖尿病 10,323例、冠動脈疾患 5,778例
揚げ物の測り方は、質問票の2問しかありません。
家庭の外で、揚げ物をどれくらいの頻度で食べますか(例:フライドポテト、フライドチキン、揚げ魚)
家庭で揚げた食べ物を、どれくらいの頻度で食べますか(略)
選択肢は、週1回未満・1〜3回・4〜6回・7回以上の4つです。
回数が増えるほど、数字が上がっていました
結果です。次の表は、年齢・人種・家族歴・喫煙・飲酒・身体活動・食事全体の質などを計算に入れています。
| 揚げ物の頻度 | 2型糖尿病 | 冠動脈疾患 |
|---|---|---|
| 週1回未満 | 1.00(基準) | 1.00(基準) |
| 週1〜3回 | 1.15(0.97〜1.35) | 1.06(0.98〜1.15) |
| 週4〜6回 | 1.39(1.30〜1.49) | 1.23(1.14〜1.33) |
| 週7回以上 | 1.55(1.32〜1.83) | 1.21(1.06〜1.39) |
数字は相対危険度です。1.00が「差なし」で、かっこの中は95%信頼区間です。ここに1.00が含まれていると、差があるとは言えません。
週1〜3回では、2型糖尿病も冠動脈疾患も、信頼区間に1.00が入っています。どちらも、差があるとは言えません。週4回を超えたあたりから、はっきりしてきます。
この集団で、実際に週4回以上食べていた人の割合です。
| 週4〜6回 | 週7回以上 | |
|---|---|---|
| 女性(看護師) | 14.0% | 3.5% |
| 男性(医療従事者) | 22.6% | 7.4% |
ここで、大事な但し書きがあります。
この2本は、どちらも観察研究です。揚げ物をよく食べる人と、あまり食べない人を、あとから比べています。食べさせて比べた試験ではありません。
つまり、揚げ物を食べたから病気になった、と示した研究ではない、ということです。
揚げ物をよく食べる人は、ほかの生活習慣も違います。体重、運動、ほかに何を食べているか。研究はそれを計算に入れようとしますが、取り除ききれたかどうかは分かりません。この点は、3つ目の節で詳しく見ます。
そのほかの注意も、書いておきます。
- 観察研究です。揚げ物を食べさせる試験をしたわけではありません
- 揚げ物の量は分かりません。回数だけを聞いています
- 何を揚げたのか、揚げ時間も温度も、油を何回使い回したのかも分かりません
- 参加者の95%超が白人で、全員が医療の専門職です
- 著者は「ドーナツなど、揚げ物と認識されなかった食品があるかもしれない」とも書いています
週3回までなら、この2つの研究では差がついていません。2型糖尿病も冠動脈疾患も、週1〜3回の信頼区間には1.00が入っています。
まず、数えるところからです。この1週間で、揚げ物を何回食べましたか。
- 家で揚げたものも、買ってきたものも、外で食べたものも、すべて含めます
- 唐揚げ、天ぷら、とんかつ、フライ、フライドポテト、コロッケ
- 思い出せる範囲で構いません。この研究も、質問票で聞いているだけです
この線の出どころ:この「週4回」という線は、米国の医療専門職を追いかけた研究のものです。日本人の揚げ物の摂取頻度を測った公的なデータは、探しましたが見つかりませんでした。国民健康・栄養調査と「日本人の食事摂取基準(2025年版)」を当たりましたが、目次にあるのは栄養素(脂質など)で、「揚げ物」という調理法の項目は見当たりませんでした。本文まで開いて確認したわけではないので、見落としの可能性があります。
「酸化した油のせい」は、確かめられていません
ここまでなら、よく見る話です。問題は、その先の説明です。
検索すると、理由の説明はよく似ています。油が加熱で酸化する。トランス脂肪酸が増える。だから血管に悪い。
その説明が正しければ、油の種類で結果が変わるはずです。オリーブ油は酸化しにくいことが知られているからです。
米国もスペインも、油の種類では差が出ませんでした
2つの研究とも、油の種類で分けて解析しています。そして、どちらも差を見つけていません。
米国の研究(文献1)は、こう書いています。
これらの因子による層別解析も、揚げ油の種類による層別解析も、揚げ物の摂取と心血管代謝疾患との関連について、追加の情報を与えなかった
スペインの研究(文献2)は、もっとはっきり書いています。
結果は、揚げ物にオリーブ油を使った人と、ひまわり油またはその他の植物油を使った人とのあいだで変わらなかった(交互作用のP = 0.22)
この研究の参加者の62%はオリーブ油で、残りはひまわり油などで揚げていました。それでも差が出ていません。
ここは、正確に読んでください。「差が出なかった」は、「差がない」ことの証明ではありません。それぞれの群の数字は、どちらの論文にも示されていません。言えるのは、油の種類を変えれば安全になるという根拠が、この2本にはない、というところまでです。
なお、米国の研究のほうは、この解析の数字そのものを論文に載せていません。原文には「data not shown(データは示していない)」と書かれています。読者が確かめられる形にはなっていません。
スペインの4万人では、関連そのものが出ていません
そのスペインの研究を、もう少し詳しく書きます(文献2)。2012年にBMJに報告されたものです。
- 対象:29〜69歳の40,757人。1992〜1996年に登録し、2004年まで追跡。中央値11年
- 起きたこと:確定した冠動脈疾患606件、総死亡1,135件
- 摂取量:1日平均138g(うち揚げ油14g)。総食物摂取の約7%
食事の測り方が、米国の研究より精密です。
| 米国(文献1) | スペイン(文献2) | |
|---|---|---|
| 方法 | 質問票の2問(回数のみ) | 訓練された面接者による聞き取り。1回40〜50分 |
| 記録した食品 | — | 662品目。うち揚げ物212品目 |
| 量の把握 | なし | 35組の写真で g/日 を推定 |
結果です。摂取量を4つに分けて、いちばん少ない群と比べています。次の表は、年齢・性別・地域・エネルギー・学歴・喫煙・身体活動・持病に加えて、BMI・腹囲・高血圧まで計算に入れた解析です。
| 揚げ物の摂取量 | 冠動脈疾患 | 総死亡 |
|---|---|---|
| いちばん少ない群 | 1.00(基準) | 1.00(基準) |
| 2番目 | 1.15(0.91〜1.45) | 0.94(0.79〜1.11) |
| 3番目 | 1.07(0.83〜1.38) | 0.95(0.79〜1.13) |
| いちばん多い群 | 1.08(0.82〜1.43) | 0.93(0.77〜1.14) |
| 傾向性 | p = 0.74 | p = 0.98 |
どの群も、信頼区間に1.00が入っています。傾向性のp値も0.74と0.98で、用量反応の形になっていません。
いちばん多い群の摂取量は、少なくありません。男性で1日247g以上、女性で155g以上です。
論文の結論です。
オリーブ油またはひまわり油を揚げ物に使う地中海の国であるスペインでは、揚げ物の摂取は冠動脈疾患とも総死亡とも関連していなかった
著者自身は、範囲を限っています。
私たちの結果は、スペインと同様の揚げ方をする地中海の国々にのみ、直接には当てはまる
論文の別の箇所(「この研究が付け加えるもの」)には、こう書かれています。
他の種類の脂で揚げること、油を何度も使い回すこと、塩分の多い揚げ菓子を食べることは、なお有害かもしれない
もうひとつ、スペインの著者が挙げている限界があります。揚げ物は体に悪いと思われているため、実際より少なく申告された可能性があるという点です。その場合、数字は「差なし」の方向にずれ、あるはずの関連を隠すことになります。
「スペインで関連が出なかったから安心」とは、読めません。
家で揚げても、外で食べても、関連は出ています
油の種類では説明がつきませんでした。では、何が違うのか。2本の著者の言葉を並べると、ひとつの見方が出てきます。
米国の研究では、家庭の外で食べる揚げ物のほうが、関連が強く出ていました。週4回以上と週1回未満を比べたときの2型糖尿病です。
| 週4回以上 vs 週1回未満(2型糖尿病) | 相対危険度 |
|---|---|
| 家庭の外で食べる揚げ物 | 1.81(1.58〜2.08) |
| 家庭で揚げた揚げ物 | 1.26(1.09〜1.47) |
そして、スペインの著者は、こう書いています。
スペインでの揚げ物の摂取は、ファストフード摂取の代理指標ではない
ファストフードはたいてい、何度も使い回した油で揚げられ、主に家庭の外で食べられる
同じ「揚げ物」という言葉でも、国によって中身が違う可能性があります。
ただし、これも確かめられた説明ではありません。米国の研究では、家庭で揚げた場合にも関連が出ています(1.26)。「家で揚げれば安心」とは書けません。
著者の視点:油は重要な体にとっては大切。
この2本を並べると、「油そのものが悪い」という説明は、支持されていません。油の種類を変えても差が出ず、油を主にオリーブ油にしている国では関連そのものが出ていない。そういう結果です。
油の使い回しは、どちらの研究も測っていません
分かっていないところも、書いておきます。両方の研究とも、油を何回使い回したかは測っていません。質問票にも、面接の項目にも入っていません。
スペインの著者が「なお有害かもしれない」と書き添えていたのが、ここです。「かもしれない」です。この2本では確かめられていません。
著者の視点:揚げ物をするときは、油の酸化が気になって、毎回新しくしています。使い回しはどうなんだろう、と思っています。結構みんなやっていますよね。
この習慣を、2本の研究が支持しているわけではありません。どちらも使い回しを測っていないからです。支持も否定もされていない、というのが正確なところです。
- 「酸化した油が原因」という説明を見たら、そこで納得しないでください。2つの研究とも、油の種類では差を見つけていません
- 油の種類を変えれば安全になる、という根拠は、この2本にはありません。オリーブ油に変えても同じです
- 「家で揚げれば安心」とも書けません
- 油の使い回しについては、どちらの研究も測っていません
「酸化」については、抗酸化サプリは効くのか?体が作る抗酸化を保健学博士が解説でも扱っています。
見るべきは、揚げ物より体重と数値かもしれません
では、米国で出た関連は何だったのか。同じ論文の中に、手がかりがあります。
高血圧・脂質異常・体重を計算に入れると、大きく小さくなります
文献1は、調整を4段階で行っています。最後の段階で、高血圧・脂質異常症・BMIを追加しています。
| 週7回以上(週1回未満と比べて) | 体重・血圧・脂質を入れる前 | 入れたあと |
|---|---|---|
| 2型糖尿病 | 1.55(1.32〜1.83) | 1.19(1.00〜1.40) |
| 冠動脈疾患 | 1.21(1.06〜1.39) | 1.08(0.95〜1.24) |
冠動脈疾患のほうは、信頼区間に1.00が入りました。差があるとは言えなくなります。2型糖尿病も、下限がちょうど1.00です。ぎりぎりの値です。
ただし、調整しても傾向性は残っています(2型糖尿病 p < 0.001、冠動脈疾患 p = 0.006)。「体重さえ気をつければ、回数は自由」ではありません。週3回までの線は、意識する価値があります。
これが意味するのは、揚げ物と病気のあいだに、体重と血圧とコレステロールが挟まっているということです。論文の要約に、そう書かれています。
これらの関連は、体重と、併存する高血圧・脂質異常症によって、大部分が媒介されていた
揚げ物をよく食べる人が、2つの国で正反対でした
もうひとつ、2本を並べて気づくことがあります。揚げ物をよく食べる人が、どんな人だったか。
米国では、こうでした(女性の場合。週7回以上 対 週1回未満)。
| 週7回以上 | 週1回未満 | |
|---|---|---|
| BMI | 26.1 | 24.6 |
| 身体活動(METh/週) | 10.2 | 16.0 |
| 食事の質のスコア | 40.9 | 50.8 |
| 赤身肉(皿/日) | 1.7 | 0.9 |
| 全粒穀物(g/日) | 9.3 | 16.1 |
揚げ物をよく食べる人は、体重が重く、動かず、赤身肉が多く、全粒穀物が少なかった。
ところが、スペインでは逆でした。
| 開始時の有病率 | 揚げ物が最も多い群 | 最も少ない群 |
|---|---|---|
| 糖尿病 | 3.2% | 7.5% |
| 脂質異常症 | 16.7% | 24.8% |
| 高血圧 | 17.4% | 23.7% |
| BMI | 28.1 | 28.5 |
スペインでは、揚げ物をよく食べる人のほうが、糖尿病も脂質異常症も高血圧も少なかった。
同じ表に、こうも書かれています。揚げ物が最も多い群の平均年齢は48.3歳、最も少ない群は50.4歳。若かったのです。病気が少ないのは、それだけかもしれません。
この点について、米国の研究の著者自身が、結論でこう書いています。
私たちの知見を確認し、私たちが観察した強い関連が、習慣的な揚げ物の摂取が因果的な役割を果たしていることによるのか、それとも不健康な生活習慣の指標であることによるのかを明らかにするには、さらなる研究が必要である
どちらなのかは、決着していません。この記事では、両方をそのまま並べています。
著者の視点:私は、揚げ物とかはあまり食卓に乗らないタイプ。ものすごくたまにだけです。
数えた回数より、こちらの4つを見てください。
- 体重(BMI)
- 血圧
- LDLコレステロール
- 中性脂肪
この4つが動いていなければ、揚げ物の回数だけを減らしても、得られるものは小さいかもしれません。文献1で、関連の大部分がこの3つ(体重・高血圧・脂質異常症)に媒介されていたためです。
健診の数字の線引きは、こちらにまとめてあります。「すぐ受診」の線と、「1か月後に再検査」の線を分けて書いています。
注意:この記事は、揚げ物を減らさなくてよいと言っているのではありません。週4回以上での関連は、文献1で報告されています。言えるのは、減らすことだけを目標にすると、いちばん効く場所を外すかもしれない、というところまでです。
まとめ
| 問い | いまのところ言えること |
|---|---|
| 揚げ物は血管に悪いか | 週4回を超えたあたりから、関連が報告されています(米国11万人) |
| 酸化した油が原因か | 2つの研究とも、油の種類では差を見つけていません |
| オリーブ油なら安全か | 確かめられていません |
| 家で揚げれば安心か | 米国の研究では、家庭で揚げた場合も関連が出ています |
| どの国でも同じか | スペインの4万人では、関連が出ていません(傾向性 p = 0.74) |
| では何を見ればいいか | 体重・血圧・LDLコレステロール・中性脂肪。これらを計算に入れると、関連は大きく小さくなります |
揚げ物が好きな方に、この記事からお渡しできるものです。
- 週3回までを目安にする。超えているなら、そこを減らす
- 油の種類ではなく、体重・血圧・LDLコレステロール・中性脂肪を見る
買い替えるものは、ありません。
医療に関する注意
この記事は、査読を受けた論文をもとにした一般的な情報です。診断や治療を目的としたものではありません。
- 紹介した2本は、いずれも観察研究です。揚げ物を食べさせて比べた試験ではありません
- 糖尿病・脂質異常症・高血圧で治療中の方は、食事について主治医や管理栄養士にご相談ください
- 健診で指摘を受けている方は、この記事の内容にかかわらず、結果票の指示に従ってください
- 胸の痛み、片方の手足の力が入らない、ろれつが回らないといった症状があるときは、すぐに救急要請または受診をしてください
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【使用文献】
- Cahill LE, Pan A, Chiuve SE, Sun Q, Willett WC, Hu FB, Rimm EB. Fried-food consumption and risk of type 2 diabetes and coronary artery disease: a prospective study in 2 cohorts of US women and men. Am J Clin Nutr. 2014;100(2):667-675. doi:10.3945/ajcn.114.084129(2026年8月24日閲覧) PubMed(PMID: 24944061)
- Guallar-Castillón P, Rodríguez-Artalejo F, Lopez-Garcia E, León-Muñoz LM, Amiano P, Ardanaz E, Arriola L, Barricarte A, Buckland G, Chirlaque MD, et al. Consumption of fried foods and risk of coronary heart disease: Spanish cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study. BMJ. 2012;344:e363. doi:10.1136/bmj.e363(2026年8月24日閲覧) PubMed(PMID: 22275385)
【引用についての注記】本文中の数値・引用は、いずれも各文献の原文から直接引いています。なお、2本とも著者の利益相反の申告はありません。文献2は公的資金による研究で、資金提供者は研究に関与していないと明記されています。英語文献の訳は担当した表現であり、正確な文言は原文をご確認ください。日本人の揚げ物の摂取頻度を測った公的データは、探しましたが見つかりませんでした。
※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。


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