「揚げ油は2〜4回まで」「厚生労働省の基準では酸価2.5以上で交換」。検索すると、どのサイトにもそう書いてあります。
その通知は、2021年6月1日に廃止されています。
揚げたあとの鍋を前にして、この油はあと何回使えるのか。そう迷ったことのある方に向けて書きます。
先に答えを書きます。「何回まで」という公的な数字は、探した範囲では見つかりませんでした。そしてよく使われる数字のひとつが、揚げ油ではあてにならないという指摘があります。目安になるのは、色と粘りと泡です。台所で見ているもので、判断できます。
この記事は、厚生労働省の通知の原文と、査読を受けた論文をもとに整理しました。数字は、すべて原文から取っています。分かっていないことは、そう書きます。
「2〜4回まで」の出どころは、見つかりませんでした
まず、よく見かける数字から。
- 揚げ油は2〜4回まで
- 油の劣化を考えると3回までが目安
- 1回目から2〜3週間のうちに使い切る
- 厚生労働省の衛生規範では酸価2.5以上で新しい油に交換
このうち、上の3つには出典がありませんでした。調理器具の販売サイト、生協、ガス会社、油のメーカー。どれも数字だけが書かれていて、どこから来た数字なのかは示されていません。
出典がたどれるのは、4つ目だけです。そこで、その原文を開きました。
その通知は、2021年6月1日に廃止されています
「酸価2.5」が書かれているのは、「弁当及びそうざいの衛生規範」という通知です(文献5)。昭和54年(1979年)に出されました。
厚生労働省が2021年6月1日付けで出した通知に、廃止する通知の一覧が付いています。その94番が、この衛生規範です。
| 番号 | 通知日 | 通知名 |
|---|---|---|
| 94 | 昭和54年6月29日 | 弁当及びそうざいの衛生規範について |
| 97 | 昭和56年9月24日 | 漬物の衛生規範について |
| 98 | 昭和58年3月31日 | 洋生菓子の衛生規範について |
| 101 | 平成3年4月25日 | 生めん類の衛生規範等について |
同じ日に、漬物も洋生菓子も生めん類も廃止されました。HACCPに沿った衛生管理が制度化されたことに伴うものです。
原文は「2.5を超えたら交換」とは書いていませんでした
もうひとつ、原文を読んで分かったことがあります。該当箇所を、そのまま引きます。
揚げ処理中の油脂が、発煙、いわゆるカニ泡、粘性等の状態から判断して、次のア〜ウに該当するにいたり、明らかに劣化が認められる場合には、その全てを新しい油脂と交換すること
イ 酸価が2.5を超えたもの
「2.5を超えたら交換」ではありません。「発煙・カニ泡・粘性から判断して、明らかに劣化が認められて、かつ2.5を超えたもの」です。
条件が1つ落ちて伝わっています。そして落ちたほうが、家庭で使える条件でした。酸価は家庭では測れません。発煙や泡や粘りなら、見れば分かります。
著者の視点:知らなかったので、何も思いません。載せるなら、誠実に載せないといけないと思います。
- 「厚労省が酸価2.5と定めている」と書いてある記事を見たら、いつの資料かを確かめてください
- 2021年6月1日以降、その通知はありません
- 「2〜4回まで」も同じです。出典が示されているかを見てください
廃止されたのは、あくまで通知です。即席めん類については、いまも告示で酸価3・過酸化物価30という規格が定められています(文献6)。そちらは生きています。ただしこれは、めんに含まれる油脂の規格であって、揚げ油そのものの基準ではありません。
過酸化物価は、揚げ油ではあてになりません
では、数字で測ればいいのか。ここに、もうひとつの問題があります。
熱で分解するため、低く出ることがあります
この記事に出てくる数字は、2つです。
| 指標 | 何を測っているか |
|---|---|
| 酸価(AV) | 油脂1gに含まれる遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数 |
| 過酸化物価(POV) | 酸化の一次生成物(ヒドロペルオキシド)の量。油脂1kgに対するミリ当量数(meq)で表します |
公益財団法人日本食品分析センターの資料に、こう書かれています(文献3)。
揚げ調理では油脂を180℃前後で使用します。加熱により油脂は常温時には見られない激しい酸化が起こります。酸化によって生成したヒドロペルオキシドは熱に不安定であり、高温下ですぐに分解して二次生成物へ変化するため、油脂が劣化していても過酸化物価は低値を示す場合があります。そのため、揚げ油の変質(劣化)指標としては、カルボニル価の方が過酸化物価より適しています
過酸化物価が低いことと、劣化していないことは、同じではありません。
同じ資料の表では、劣化評価の項目が用途別に分けられています。
| 目的 | 分析項目 |
|---|---|
| 劣化評価 | 酸価、過酸化物価、TBA価 |
| 劣化評価(揚げ油) | 酸価、カルボニル価、アニシジン価 |
| 性状・外観 | 粘度、色、上昇融点 |
揚げ油の欄に、過酸化物価が入っていません。
3時間揚げ続けて、酸価は0.2から0.4へ。有意に上がっています
そのうえで、日本の実測を2つ紹介します。
富山大学の加藤征江氏が、2009年に報告しています(文献1)。
- じゃがいも:薄切り50gを、500gのサラダ油で170℃・3分間。10回繰り返して30分間を1セット
- 鶏肉:片栗粉を塗した100gを、500gのサラダ油で165℃・6分間。5回繰り返して30分間を1セット
- 連続6セット=180分(3時間)
- 測定回数は指標で違います。過酸化物価は7水準(30分ごと)、酸価は3水準(0分・90分・180分)だけです
| 3時間(0〜180分)を通じて | 実測 | 目安値 |
|---|---|---|
| じゃがいもの揚げ油 POV | 15以下 | 30以下 |
| 鶏から揚げの揚げ油 POV | 25以下 | 30以下 |
| 酸価(どちらも) | 0.2〜0.4 | 3.0以下 |
この「目安値」は、即席めんや菓子の製品に含まれる油脂の規格から来ています。揚げ油そのものに定められた数字ではありません。
★数字が小さいことと、変わっていないことは別です。原文は、酸価について0分・90分・180分の3水準の間に5%の危険率で有意差があったと書いています。3時間のあいだに、酸価は有意に上がっています。0.2〜0.4という幅は、その上がった先も含めた範囲です。
もうひとつは、岐阜市立女子短期大学の調査です(文献2)。大学の調理実習で、全交換をせずに足し油だけで約2か月使い続けた油を、25回測っています(うち6回は、足し油そのものです)。
- なす、さつまいも、えび、アジ、ドーナツ、レバーなどを揚げた
- 酸価は全サンプルで0.5以下
- 過酸化物価は最高4.49、多くは3前後
ただし、ここは慎重に読んでください。過酸化物価のほうは、先ほどの理由で低く出ることがあります。実際、文献1にその現象が出ています。
じゃがいもの揚げ油のPOVは揚げ時間60分間までは高くなっていき10を越えたが、その後は5近くまで低くなり、そして揚げ時間150分間から再び高くなった
上がって、下がって、また上がる。文献1は、この動きの理由を説明していません。ただ、文献3が書いている「ヒドロペルオキシドの分解量が生成量を上回る」という現象と、形は似ています。
文献1の著者自身は、こう書いています。
実際の家庭における揚げ油の使用では、180分間(3時間)でも油の酸化には安全性の点で問題ないとの実験結果は食生活において有用であると思われた
ただし、この結論はPOVとAVの2つの数字にもとづくものです。そのうち過酸化物価は、揚げ油では低く出ることがあります(文献3)。この2本から言えるのは、酸価で見るかぎり低い値だった、というところまでだと考えます。「だから安全」までは、この記事では書きません。
この研究を読むときの注意も、書いておきます。
- 文献1の油は500gです。家庭の鍋より少ない可能性があります
- 揚げたのは、じゃがいもの素揚げと、片栗粉を塗した鶏から揚げの2種類だけです。衣の多い天ぷらは入っていません
- 文献1には、足し油をしたという記載がありません
- 文献2は大学の研究紀要です。査読誌ではありません
- 文献2の酸価は簡易キットによる測定で、「0.5以下/1/1.5以上」の3段階判定です
- 「過酸化物価が低いから大丈夫」と書いてある記事は、揚げ油については割り引いて読んでください
- 数字で見たいなら、揚げ油には酸価のほうが適しています(文献3)
注意:酸価も過酸化物価も、家庭では測れません。簡易キットは市販されていますが、この記事ではおすすめしません。家庭での使用を想定した目安値が、公的な資料に見当たらないためです。測っても、判断の基準がありません。
目安になるのは、色と粘りと泡です
数字が使えないなら、何を見ればいいのか。
答えは、思ったより身近なところにありました。
色と粘りは、食品分析の専門機関が劣化指標としています
先ほどの日本食品分析センターの資料に、こう書かれています(文献3)。
揚げ油は劣化によって着色が進むため、色は揚げ油の劣化の指標となります
揚げ調理によって油脂の劣化が進むと重合が起こり、高分子量の化合物が生成し粘度が上昇します。粘度は揚げ油の劣化指標の1つになります
色が濃くなる、粘りが出る。台所で誰もが見ているものが、そのまま指標として挙げられています。
いま生きている指導要領にも、同じことが書かれています
廃止された衛生規範とは別に、「菓子指導要領」という通達があります(文献4)。油脂で処理した菓子を対象にしたものです。
揚げ油そのものについては、こうあります。
揚げ処理中の油脂は、粘度及びあわ立ち等の性状を目安に品質の劣化の程度を常に把握し、明らかに劣化が認められた場合にあつては、油脂の交換を行うこと
酸価の数字は、ここには書かれていません。「粘度とあわ立ちを目安に」だけです。
再使用することも、前提に入っています。
揚げ処理に使用した油脂(再使用するものに限る)は、速かにろ過する等浮遊物及び沈澱物を除去した後、冷却すること
この通達は、2021年の廃止一覧には入っていませんでした。厚生労働省の法令データベースにも、廃止の表示なく掲載されています。ただし、現行であると断定はしません。確認できたのは、この2点までです。
見分け方は5つ。ただし1つで決めません
文献2が、判断の目安を具体的に挙げています。
| 見るところ | 劣化のサイン |
|---|---|
| 色 | 開封時に比べ、透明感がなくなっている |
| におい | 熱を加えた状態で、すえたような匂いがする |
| 粘り | 冷めたときにドロっと粘りを感じる |
| 泡 | 揚げている途中の「カニ泡」。小さな泡がなかなか消えない |
| 煙 | 加熱し始めてまもなく発煙する |
ただし、同じ論文が但し書きをつけています。
このような判断の目安があっても、これはあくまで目安にすぎず、判断をあやまれば、まだ十分に使用可能な油を廃棄したり、逆に酸化が進んで劣化した油をまだ使用可能として使い続けたりする危険性もおこりうる
捨てすぎる方向にも、間違えることがある。そう書かれています。
そして同じ論文の緒言には、こうあります。
どのようにして油の劣化度を見極めるかということになると、各家庭や小規模な調理形態においては、明確な基準はないのが実情である
2005年の時点での記述です。その16年後、数字のある通知も無くなりました。
著者の視点:あまり頻繁に揚げ物をしませんし、置いておくのも手間です。置いておく容器もありません。油の色が濃くなると、なんとなく古そうで嫌ですし、前の揚げ物の匂いが油についているのも嫌です。
これは安全性の判断ではなく、手間と好みの話です。そして、それでいいのだと思います。色を見て判断すること自体は、食品分析の専門機関が指標として挙げているとおりです。ただし、どのくらいの色で替えるべきかは、今回見た資料には書かれていません。そこは、それぞれの判断になります。そう替えることを、否定する資料は見つかりませんでした。
見るのは、色・粘り・泡・におい・煙の5つです。
- どれか1つで決めないでください。文献2も文献4も、複数の性状を「あわせて」見ると書いています
- 使い回すなら、ろ過して浮遊物と沈澱物を取り、冷ましてから保存します(文献4)
- 「もったいない」で判断が鈍るなら、替えてしまって構いません。替えることの害は、今回見た資料には書かれていませんでした
注意:保存の容器や温度について、公的な資料に指定は見当たりませんでした。文献1ではステンレス容器に入れて冷蔵庫で保存していますが、これは実験の条件であって、推奨として書かれたものではありません。
「酸化」そのものについては、抗酸化サプリは効くのか?体が作る抗酸化を保健学博士が解説でも扱っています。
まとめ
| 問い | いまのところ言えること |
|---|---|
| 何回まで使えるか | 公的な数字は、探した範囲では見つかりませんでした |
| 「酸価2.5」は | 2021年6月1日に廃止された通知の数字です |
| その原文は | 「発煙・カニ泡・粘性から判断して明らかに劣化」+「かつ2.5超」 |
| 過酸化物価で見れば | 揚げ油では、劣化していても低く出ることがあります |
| 実測ではどうか | 3時間揚げ続けて酸価0.2〜0.4。2か月足し油で使い回して0.5以下 |
| では何を見るか | 色・粘り・泡・におい・煙 |
この記事からお渡しできるものは、2つです。
- 「2〜4回まで」という数字を、根拠として使わなくてよくなります
- 粘りと泡は厚生労働省の通達に、色は食品分析機関の資料に、劣化の目安として挙げられています
買い替えるものは、ありません。
医療に関する注意
この記事は、公的な資料と査読を受けた論文をもとにした一般的な情報です。診断や治療を目的としたものではありません。
- 紹介した実測は、大学での実験と調理実習のものです。ご家庭の条件とは、油の量も揚げるものも異なります
- 油から異臭がする、色が明らかに変わった、加熱するとすぐ煙が出る。そうした油は、迷わず処分してください
- 揚げ油による油はねや、加熱しすぎによる発火にご注意ください。加熱中は、その場を離れないでください
- 食後に腹痛や吐き気などの症状が出たときは、油の状態にかかわらず医療機関にご相談ください
あわせて読みたい
そもそも揚げ物は血管に悪いのか、が気になった方へ。「酸化した油のせい」という説明を、原著から確かめています。
「酸化」という言葉そのものが気になった方へ。
【使用文献】
- 加藤征江. 揚げ物調理の条件が揚げ油の劣化と揚げ物の官能評価に及ぼす影響. 日本食生活学会誌. 2009;20(1):47-53.(2026年9月1日閲覧) J-STAGE
- 渡辺優子, 酒井千恵, 清水英世. 油脂の変敗に関する調査研究―調理実習における揚げ油の酸化度試験―. 岐阜市立女子短期大学研究紀要. 2005;54:119-121.(2026年9月1日閲覧) 岐阜市立女子短期大学(PDF)
- 公益財団法人日本食品分析センター. 油脂の化学的・物理的特徴を示す数値. JFRLニュース. 2023;7(29).(2026年9月1日閲覧) 日本食品分析センター(PDF)
- 厚生省環境衛生局長. 菓子の製造・取扱いに関する衛生上の指導について(昭和52年11月16日 環食第248号).(2026年9月1日閲覧) 厚生労働省
- 厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課長. 食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う営業等の取扱いについて(薬生食監発0601第3号 令和3年6月1日)別紙1.(2026年9月1日閲覧) 厚生労働省(PDF) ※廃止された「弁当及びそうざいの衛生規範」(昭和54年6月29日 環食第161号)の原文は、下の資料に収載されています
- 厚生労働省. 酸価・過酸化物価に関する規定等(食品、添加物等の規格基準 昭和34年厚生省告示第370号ほか).(2026年9月1日閲覧) 厚生労働省(PDF)
【引用についての注記】本文中の数値・引用は、いずれも各文献の原文から直接引いています。文献1はPDFの文字コードが壊れており、本文の数字が正しく抽出できませんでした。そのため、ページを画像として表示し、目視で読み取っています。「2〜4回まで」「3回まで」という家庭向けの目安については、出典を示している資料が見つかりませんでした。文献4(菓子指導要領)が現行であるかどうかは、2021年の廃止一覧に含まれていないことと、厚生労働省の法令データベースに廃止の表示なく掲載されていることの2点までしか確認していません。
※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。


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