ゼロカロリー甘味料は本当に安全?エリスリトールと心血管リスクを保健学博士が解説

動脈硬化ケア

「糖質オフ」「カロリーゼロ」をうたう食品や飲料に欠かせないのが、砂糖の代わりに使われる甘味料です。なかでもエリスリトールは、“天然由来で安心”というイメージで広く使われています。ところが近年、このエリスリトールと心血管リスクの関連を示す報告が出て、話題になりました。結論を先に言えば、「すぐに危険」と断じる段階ではありませんが、「無制限に安心」とも言い切れません。実際のところ何がわかっていて、どう付き合えばいいのか。査読論文をもとに見ていきます。

ゼロカロリー甘味料とは

砂糖の代わりに甘みをつける甘味料には、大きく2種類あります。ひとつは糖アルコール(エリスリトール、キシリトールなど)、もうひとつは人工甘味料(アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなど)です。どちらもカロリーがほぼゼロか非常に低く、血糖をほとんど上げないため、ダイエットや糖質制限、糖尿病の方向けの製品に広く使われています。

エリスリトールは、果物などにも微量に含まれ、体内でも少量作られる成分です。「自然にあるものだから安心」という感覚は、このあたりから来ているのでしょう。

著者の視点:「カロリーゼロ=体に無害」と受け取られがちですが、体にとって“ゼロ”は「エネルギーにならない」という意味であって、「何の作用もない」という意味ではありません。まずはこの線引きから始めたいところです。

実践ポイント:まずは自分がよく口にする「糖質オフ/カロリーゼロ」商品の原材料表示を見て、どの甘味料が使われているか確認してみてください。

エリスリトールと心血管の“気になる報告”

2023年、エリスリトールと心血管リスクの関連を調べた研究が発表されました。心臓の検査を受けた人を対象にした解析で、血液中のエリスリトール濃度が高い人ほど、その後の心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントが多いという関連が、米国と欧州の集団で確認されています。さらに実験では、エリスリトールが血小板を固まりやすくし、血栓の形成を促す可能性も示されました(Witkowski M, et al. Nat Med. 2023)。

さらに同じ研究チームは2024年、別の糖アルコールであるキシリトールについても似た報告をしています。血中キシリトール濃度が高い人ほど、その後3年間の心血管イベントが多く(最も高い層は最も低い層のおよそ1.5倍)、エリスリトールと同じく血小板を固まりやすくする作用も確認されました(Witkowski M, et al. Eur Heart J. 2024)。「エリスリトールだけの問題」ではなく、糖アルコール全体で気にとめておくべき論点になりつつあります。

ただし、限界も大きい研究です。これらは主に観察研究と実験室での知見であり、「食べたから心血管病になった」という因果を証明したものではありません。血中のエリスリトールは体内でも作られるため、高値が“摂取のせい”とは限らない、という指摘もあります。実際、これらの報告の解釈をめぐっては研究者の間でも賛否の議論が続いており、各国の規制機関は現在もエリスリトールを安全性に問題のない甘味料として扱っています。

著者の視点:この研究は「エリスリトール=毒」を示したものではなく、「無条件に安心とは言えないかもしれない」という“注意信号”です。私自身は、こわがりすぎず、かといって無視もせず、「常用・過信は避ける」くらいの構えがちょうどいいと思っています。

実践ポイント:エリスリトール入りの食品を時々使う程度なら、神経質になる必要はありません。気をつけたいのは、「カロリーゼロだから」と大量・毎日に偏ることです。

人工甘味料も“精査”されている

エリスリトールに限らず、甘味料全般が近年あらためて検証されています。フランスの約10万人を追跡した研究では、人工甘味料(とくにアスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース)を多くとる人ほど、心血管疾患のリスクがやや高いという関連が報告されました(Debras C, et al. BMJ. 2022)。この研究が調べたのは人工甘味料で、エリスリトールそのものは対象に含まれていませんが、「甘味料なら安心」という前提を見直すきっかけになっています。

介入研究からも、気になる知見が出ています。健康な成人120人を対象にしたランダム化試験では、サッカリンやスクラロースを2週間とった群で、食後の血糖の処理(耐糖能)がやや悪化しました。その変化は、腸内細菌の変化を介して起きている可能性も示されています(Suez J, et al. Cell. 2022)。甘味料は直接は血糖を上げなくても、腸内環境を通じて間接的に血糖にかかわりうる。「血糖を上げないから安心」とは、単純に言い切れないのかもしれません。

著者の視点:甘味料は種類によって性質も評価も異なり、ひとくくりには語れません。ただ、観察研究も介入研究も、そろって“好ましくない方向”の関連を示しはじめている。この積み重ねは覚えておいて損はありません。

実践ポイント:「砂糖をやめて人工甘味料へ」と単純に置き換えるより、“甘い味そのものへの依存を少しずつ減らす”方向を意識すると、砂糖も甘味料も自然に減らせます。

WHOはどう言っているか

世界保健機関(WHO)は2023年、非糖質甘味料に関する指針を出し、体重管理や生活習慣病の予防を目的として、非糖質甘味料を使うことは推奨しないという見解を示しました。理由は、長期的な減量効果がはっきりせず、むしろ長期使用で2型糖尿病・心血管疾患・死亡リスクとの関連の可能性がある、というものです(WHO, 2023)。

なお、この指針が主な対象とするのはアスパルテーム・スクラロース・ステビアなどで、糖アルコールであるエリスリトールは直接の対象には含まれていません。ただし「やせるために甘味料へ頼りすぎない」という考え方は、エリスリトールを含む甘味料全般に通じる視点です。

これは「甘味料を今すぐ禁止すべき」という強い勧告ではなく、“条件付きの推奨”です。それでも、公的機関が「やせるために甘味料に頼るのはすすめない」と明言した意味は小さくありません。

著者の視点:ダイエット目的で甘味料入り飲料に置き換える人は多いですが、WHOの見立ては「長期的にはやせる助けにならない」。私も、甘味料はあくまで“甘さを当面やわらげる道具”で、ゴールではないと見ています。

実践ポイント:減量が目的なら、甘味料飲料への置き換えを最終形にせず、少しずつ水やお茶へ寄せていくのが王道です。

どう考えればいい?

ここまでを整理すると、エリスリトールも人工甘味料も、「すぐに危険」という確定的な証拠はまだありません。一方で、「カロリーゼロだから無制限に安心」とも言えなくなってきています。砂糖の代わりの“一時的な橋”としては使ってよいが、常用・過信はしない。そこが現実的な落としどころです。

何より大切なのは、甘い飲み物そのものを減らし、水やお茶を中心にすること。甘味料はその移行を助ける補助輪、というくらいの位置づけが安全です。

著者の視点:「砂糖か、甘味料か」の二択で考えると迷子になります。目指すのは“どちらもほどほど”。甘さへの慣れをリセットしていくほうが、長い目で見て健康にも近づきます。

実践ポイント:まずは1日の甘い飲料を1本減らすところから。甘味料入り・砂糖入りを問わず、「飲む甘さ」を減らす意識が、確実な一歩になります。

まとめ

エリスリトールをはじめとするゼロカロリー甘味料は、血糖を上げにくい便利な存在ですが、近年は心血管リスクとの関連を示す報告や、WHOの慎重な見解が出ています。いずれも「すぐ危険」を意味するものではなく、因果も未確定です。ただ、「カロリーゼロ=無制限に安心」という前提は見直しどき。砂糖の代わりの代役として上手に使いつつ、最終的には甘い飲み物そのものを減らしていくのが、最も確かな選択です。

医療に関する免責事項

本記事は、査読済みの学術論文や公的機関の見解をもとにした一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の診断・治療・予防を推奨したり、医師その他の医療専門職による助言に代わるものではありません。紹介した研究には観察研究や実験室での知見が含まれ、関連を示すものであり、因果関係を確定するものではありません。糖尿病などで甘味料の利用について指導を受けている方は、自己判断で変更せず、主治医・管理栄養士の指示を優先してください。

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主な参考資料

  1. Witkowski M, Nemet I, Alamri H, et al. The artificial sweetener erythritol and cardiovascular event risk. Nat Med. 2023;29(3):710-718. DOI: 10.1038/s41591-023-02223-9. PMID: 36849732
  2. Witkowski M, Nemet I, Li XS, et al. Xylitol is prothrombotic and associated with cardiovascular risk. Eur Heart J. 2024;45(27):2439-2452. DOI: 10.1093/eurheartj/ehae244. PMID: 38842092
  3. Debras C, Chazelas E, Sellem L, et al. Artificial sweeteners and risk of cardiovascular diseases: results from the prospective NutriNet-Santé cohort. BMJ. 2022;378:e071204. DOI: 10.1136/bmj-2022-071204. PMID: 36638072
  4. Suez J, Cohen Y, Valdés-Mas R, et al. Personalized microbiome-driven effects of non-nutritive sweeteners on human glucose tolerance. Cell. 2022;185(18):3307-3328.e19. DOI: 10.1016/j.cell.2022.07.016. PMID: 35987213
  5. World Health Organization. Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline. Geneva: WHO; 2023.

瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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