健診の結果が届いて、いくつかの項目に印がついていた。血圧、血糖、コレステロール。「要再検査」と書いてある。
でも、どれから行けばいいのかは書いていない。全部すぐ行くべきなのか、少し様子を見ていいのか。そこが分からないまま、封筒を引き出しにしまう。
この記事では、厚生労働省が健診の現場で使っている「フィードバック文例集」をもとに、どれが「すぐ」で、どれが「様子を見てから」なのかを整理します。
放置する人は、なんでも放置します
先に、いちばん言いたいことを書きます。この記事を読んでいる時点で、あなたはもう動いている側にいます。
著者の視点:放置する人は、なんでも放置します。血圧も、血糖も、まとめてそのままにしている。特に多いのは、血圧と血糖です。
その方たちは、こういう記事を検索しません。「どれから行けばいいんだろう」と調べている時点で、あなたはもう動いています。
だから、この記事は不安をあおるために書きません。優先順位をつけて、動きやすくするために書きます。
まず、健診結果を手元に出してください。この記事は、結果票を見ながら読むと1回で終わります。
見るのは数字です。「要再検査」という言葉ではなく、血圧・血糖・コレステロールの実際の値を確認してください。
「要再検査」と「受診勧奨判定値」は、別のことばです
まず用語を片づけます。ここが混乱の入口だからです。
健診結果票に書かれている「要再検査」「要精密検査」「要医療」といった表記は、健診機関ごとの書き方です。
一方、国の資料が使っているのは「保健指導判定値」と「受診勧奨判定値」という2つのことばです(文献2)。
| ことば | 意味(文献2の原文より) |
|---|---|
| 保健指導判定値 | 保健指導の対象とする値 |
| 受診勧奨判定値 | それよりも高い値で、重症化を防止するために医療機関を受診する必要性を検討する値 |
著者の視点:この2つを分けて考えられるかどうかで、読み方がまったく変わります。健診票の「要再検査」という3文字には、この区別が入っていません。だから読者は、全部同じ重さに見えてしまう。数字を見るしかないのです。
健診票の文言ではなく、数字で判断してください。「要再検査」の3文字は、健診機関ごとに基準が違うことがあります。
超えた=病気、ではありません
ここは、多くの記事が書き間違えているところです。
「受診勧奨判定値=病気の値」と書かれているのをよく見かけます。国の資料は、そう書いていません。
それよりも高い値で重症化を防止するために医療機関を受診する必要性を検討する値(受診勧奨判定値)(文献2)
判定値の表そのものにも、注釈がついています。
判定値を超えるレベルの場合、再検査や生活習慣改善指導等を含め医療機関での管理が必要な場合がある(文献1)
「必要な場合がある」。断定していません。
そして、こう続きます。
健診機関の医師は、検査結果の持つ意義、異常値の程度、年齢等を考慮した上で、医療機関を受診する必要性を個別に判断し、受診者に通知することが重要である(文献2)
著者の視点:「個別に判断」と国が書いているということは、一律の線ではないということです。同じ数字でも、年齢や他の項目によって意味が変わる。これは記事を書く側にとっては不便ですが、読者にとっては救いです。「超えた=終わり」ではありません。
「引っかかった」で思考を止めないでください。どれくらい超えているかが、次の行動を決めます。
受診勧奨判定値を超えていても、薬を飲んでおらず、医療機関にもかかっていない人は、特定保健指導の対象になりえます(文献2)。
同じ「超えている」でも、2段階に分かれます
これがこの記事のいちばん大事なところです。
厚生労働省は、健診の結果を本人に伝えるための「フィードバック文例集」という資料を出しています(文献1)。健診機関や保険者が、結果通知に添える文章の見本です。
ここに、答えが書かれています。血圧を例にします。
| 血圧の値 | 文例集が指示している対応 |
|---|---|
| 収縮期160以上 または 拡張期100以上 | ①すぐに医療機関の受診を |
| 140〜159 または 90〜99 | ②生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を |
| 130〜139 または 85〜89 | ③④生活習慣の改善を |
| 130未満 かつ 85未満 | ⑤今後も継続して健診受診を |
140も160も、どちらも「受診勧奨判定値を超えている」状態です。それでも対応が違います。
文例集には、伝える文章そのものも載っています。
(160/100以上)この血圧レベルの人は、望ましい血圧レベル(収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満)の人と比べて、約5倍、脳卒中や心臓病にかかりやすいことが分かっています。正確な血圧の診断の上で、治療が必要となる血圧レベルです。この健診結果を持って、至急かかりつけの医療機関を受診してください(文献1)
(140〜159/90〜99)約3倍、脳卒中や心臓病にかかりやすいことが分かっています。正確な血圧の診断の上で、治療が必要となる血圧レベルです。(中略)これらを実行した上で、おおむね1か月後にかかりつけの医療機関で再検査を受けてください(文献1)
著者の視点:私がこの資料でいちばん大事だと思うのは、「1か月後」という具体的な期間が書かれているところです。「早めに」でも「なるべく」でもありません。期間が書いてあれば、予定に入れられます。健康の記事がいちばん役に立たなくなるのは、いつまでにやればいいのかを書かないときだと思っています。
あなたの血圧の値を、いま確認してください。160/100を境に、対応が変わります。
「1か月後」に該当する方は、いま予定に入れてください。1か月は、忘れるのにちょうどいい長さです。
すぐ受診したほうがいいもの
文例集が「すぐに」「至急」「早期に」と書いている項目を、まとめます。
| 項目 | 値 | 文例集の表現 |
|---|---|---|
| 血圧 | 収縮期160以上 または 拡張期100以上 | すぐに/至急 |
| LDLコレステロール | 180以上 | 早期に/できるだけ早めに |
| 中性脂肪 | 500以上 | できるだけ早めに |
| 空腹時血糖/HbA1c | 126以上/6.5%以上(治療していない場合) | すぐに |
| 尿蛋白 | 1+以上 | すぐに |
| eGFR | 45未満 | すぐに |
| AST・ALT | 51以上 | 医療機関の受診を |
| γ-GT | 101以上 | 医療機関の受診を |
中性脂肪の500だけは、理由が違います。
血液中の脂肪が多く、この状態を放置しておくと急性膵炎になる可能性があります。急性膵炎は命に関わるリスクもある疾患です。できるだけ早めに医療機関を受診してください(文献1)
他の項目が長い時間をかけて血管を傷める話なのに対し、これだけは急な話です。
著者の視点:中性脂肪500以上は、動脈硬化ではなく膵臓の話として書かれています。ここを同じ枠で語ってしまうと、読者は「脂っこいものを控えよう」で終わってしまう。数字が同じ「脂質」の欄にあっても、意味が違うことがあります。
この表に1つでも当てはまったら、そこから受診してください。複数当てはまる場合も、まずは1か所、かかりつけ医から始めて構いません。結果票ごと持っていけば、必要な検査を判断してもらえます。
著者の視点として補足すると、「内科と眼科と腎臓内科、どこに行けばいいのか」は迷いやすいところですが、まずかかりつけ医で足ります。専門科が必要なら、そこから紹介されます。
生活を見直して、再検査でいいもの
こちらは、期間まで示されています。
| 項目 | 値 | 文例集が示している期間 |
|---|---|---|
| 血圧 | 140〜159 または 90〜99 | おおむね1か月後に再検査 |
| LDLコレステロール | 140〜179 | 3〜6か月後に再検査 |
| 中性脂肪 | 300〜499 | 3〜6か月以内に再検査 |
ただし、この3つには全部、但し書きがついています。次の節がそれです。
血糖については、126/6.5%に届かない範囲でも、文例集は精密検査をすすめています。
| 空腹時血糖 | HbA1c | 文例集の対応(治療していない場合) |
|---|---|---|
| 110〜125 | 6.0〜6.4% | 生活習慣の改善を。また、精密検査を推奨 |
| 100〜109 | 5.6〜5.9% | 生活習慣の改善を。リスクの重複等あれば精密検査を |
著者の視点:血糖は、「受診勧奨判定値に届いていないのに、精密検査をすすめる」という書き方をしている点が、他の項目と違います。糖尿病は境界型の段階で見つかると打てる手が多いからだと考えられます。
「再検査でいい」は「放っておいていい」ではありません。1か月なり3か月なりの間に、生活を変えることが前提になっています。
カレンダーに再検査の日を入れてから、この記事を閉じてください。日付が入っていないと、次の健診まで来ます。
あなたが「繰り上がる人」かどうか
ここが、この記事でいちばん見落とされているところだと思います。
血圧が140〜159の人は「1か月後に再検査」でした。ただし、それは条件つきです。
文例集には、同じ140〜159の人に向けて、もう1つの文例が用意されています。
(脳心血管病、心房細動、慢性腎臓病、糖尿病、危険因子の集積がある場合)血圧以外の検査でも脳卒中や心筋梗塞を起こしやすい状態になっている可能性があります。(中略)至急かかりつけの医療機関を受診してください(文献1)
同じ数字でも、「1か月後」から「至急」に変わります。
では「危険因子の集積」とは何か。文例集に、定義があります。
以下の脳心血管病の危険因子が三つ以上ある場合を指す。
□ 高齢(65歳以上)
□ 男性
□ 喫煙
□ 脂質異常症(HDLコレステロール40未満、LDLコレステロール140以上、中性脂肪150以上)
□ 肥満(BMI25以上)(特に内臓脂肪型肥満)(文献1)
「男性」と「65歳以上」が、そのまま1つずつ数えられます。ここに喫煙が加われば、それだけで3つです。
著者の視点:この5項目のうち2つは、本人の努力と関係ありません。年齢と性別です。そこを責める話ではないということが、この定義から読み取れます。国の資料も別のところで、「生活習慣が悪いから病気になったという先入観・偏見を持たない」ことを求めています(文献1)。ただし、該当する人ほど早く動いたほうがいい。それだけの話です。
5つの□を、いま数えてください。3つ以上なら、血圧が140台でも「至急」の側です。
糖尿病・慢性腎臓病・心臓や脳の病気・心房細動があると言われたことがある方も、同じく「至急」の側です(文献1)。数を数える必要はありません。
脂質については、文例集も同じことを書いています。LDLが140〜179でも、糖尿病・慢性腎臓病・心血管病・高血圧を指摘されている方や喫煙者は、「できるだけ早めに」とされています(文献1)。
受診しても、すぐ薬とは限りません
この2段階は、専門家の間でも伝わりきっていません。
日本高血圧学会が、令和6年(2024年)5月24日に、こういう文書を出しています(文献3)。
特定健診の第4期(令和6年度から)用いられている血圧の受診勧奨判定値について、一部で基準が変ったという誤解が広まっています。(文献3)
そして、原因をこう説明しています。
今回の誤解は、2つの記載の①だけを強調されたものと考えられます。(文献3)
「①だけ」——つまり「160以上はすぐ受診」の側だけが独り歩きした、ということです。「140台は1か月生活を見直してから」のほうが落ちた。
学会は、こうも書いています。
健診では一過性の血圧の上昇もありますし、ちょっとした自己管理で血圧が下がる場合もあります。(中略)1か月後の時点で服薬の要否を判断するのは主治医と患者さんご自身です。(文献3)
そして最後に、念を押しています。
これらに変更があったわけではないことを繰り返し申し上げます。(文献3)
著者の視点:学会が「誤解が広まっている」とわざわざ文書を出すのは、めずらしいことです。それだけ、この2段階が伝わっていないということだと受け取りました。そして「服薬の要否を判断するのは主治医と患者さんご自身」という一文は、この記事でいちばん読者に届けたい部分です。受診=すぐ薬、ではありません。
「行ったら薬にされる」と思って受診をためらっている方へ。Ⅰ度高血圧の場合、受診してもまず1か月は生活の見直しで様子を見るのが標準です(文献3)。ただし、ひとつ前の節に挙げた条件に当てはまる方は、この限りではありません。その場合は至急の受診がすすめられています(文献1・文献3)。
受診するとき、持っていくといいもの
文例集は、受診する側に持たせるものまで指定しています。
「家庭用の血圧計をお持ちの方は、起床後と就寝前に1週間程度測定し、その記録を合わせてご持参ください。」のようなコメントを追記しておくと、かかりつけの医師等での診療上有益である(文献1)
もう1つ、文例集の冒頭に、こうあります。
フィードバックに当たっては、各検査項目の経年変化を確認し、悪化傾向なのか、改善傾向なのかといったことを踏まえた対応をすることが大切です(文献1)
1年分の数字ではなく、並べた数字を見る。これは受診する側にもそのまま当てはまります。
著者の視点:血圧は、測る場所で値が変わります。健診会場で高く出ることは、めずらしくありません。だからこそ、家で測った1週間分に意味があります。「健診では高かったが家では正常だった」という記録は、医師にとっても患者にとっても大事な情報です。持っていくものが1つあるだけで、受診のハードルは下がります。
持っていくもの3つ。
①今年の健診結果票 ②去年・一昨年の結果票(経年変化) ③家庭血圧を1週間分(起床後と就寝前)
血圧計がなければ、①②だけで構いません。結果票を持っていくだけでも、話が早くなります。
まとめ
- 「要再検査」は健診機関の表記。国の資料が使うのは「保健指導判定値」と「受診勧奨判定値」です
- 受診勧奨判定値は「病気の値」ではありません。原文は「受診する必要性を検討する値」です
- 同じ「超えている」でも2段階。血圧なら160/100以上はすぐ、140〜159は1か月後に再検査
- すぐ受診:血圧160/100、LDL180、中性脂肪500(急性膵炎)、血糖126・HbA1c6.5、尿蛋白1+、eGFR45未満
- 再検査でよい:血圧140台は1か月後、LDL140台は3〜6か月後、中性脂肪300台は3〜6か月以内
- 65歳以上・男性・喫煙・脂質異常症・肥満のうち3つ以上あると、繰り上がります
- 日本高血圧学会が「誤解が広まっている」と文書を出しています
- 受診しても、すぐ薬とは限りません。Ⅰ度高血圧はまず1か月、生活の見直しです
健診で引っかかることは、失敗ではありません。国の資料は「代謝の変化は可逆的、血管の変化は不可逆的」と説明しています(文献1)。数字が動いている段階は、まだ戻せる側です。
医療に関する注意
胸が締めつけられる、片方の手足が動かない・しびれる、ろれつが回らない、突然の激しい頭痛。こうした症状がいま出ているときは、この記事の目安にかかわらず、すぐに救急車を呼んでください。この記事は、症状のない段階の健診結果について書いたものです。(この段落は、著者の視点として書いています)
この記事は、公的機関の資料をもとに情報を整理したものであり、診断や治療の指針を示すものではありません。
ここに挙げた区分は、健診機関や保険者が結果を通知する際の文例です。実際の判断は、検査結果の意義・異常値の程度・年齢などを考慮して、医師が個別に行います(文献2)。
「すぐ受診」に当てはまらないからといって、放置してよいという意味ではありません。気になる症状があるとき、体調に変化があるときは、目安にかかわらず医療機関にご相談ください。
すでに治療を受けている方は、この記事の区分ではなく、主治医の指示に従ってください。
なお、ここで扱った判定値は、40歳から74歳を対象とした特定健診のものです(文献2)。75歳以上の方、39歳以下の方には、そのまま当てはまらない場合があります。
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【使用文献】
文献1 厚生労働省健康・生活衛生局「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」令和6年4月(2026年8月14日閲覧)
1-a 本編 mhlw.go.jp(PDF)
1-b 別紙5「健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値」および別添資料「健診結果とその他必要な情報の提供(フィードバック文例集)」 mhlw.go.jp(PDF)
文献2 厚生労働省保険局医療介護連携政策課「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4.3版)」2026年3月(2026年8月14日閲覧) mhlw.go.jp(PDF)
文献3 日本高血圧学会「特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を」令和6年5月24日(2026年8月14日閲覧) jpnsh.jp(PDF)
【数値の出典についての注記】本文の判定値・対応区分・説明文は、すべて文献1と文献2の原文から直接引用しています。「約5倍」「約3倍」などの数値は、文献1のフィードバック文例集に記載されている表現をそのまま引いたものです。文例集はこれらの根拠として国内のコホート研究(NIPPON DATA80、吹田研究、CIRCS、JALS など)を挙げていますが、それぞれの原著は今回は取得していません。
※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。


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