味噌汁は健康にいい?1日何杯が最適かを保健学博士が解説

食事・栄養

「味噌汁は体にいい」とよく言われます。その一方で、「塩分が多いから、かえって体に悪いのでは」と心配する声も根強くあります。どちらの言い分にも一理あります。研究を見ていくと、1日1杯くらいを食事に添えて続けるぶんには、味噌汁は健康的な習慣として理にかなっている、というのが今のところの答えです。ただ、味噌汁を飲めば健康になる、という単純な話ではありません。塩分とのつきあい方が前提になります。この記事では、味噌汁の何が体にいいのかを成分から見ていきます。動脈硬化予防を専門にしてきた立場からの整理です。

(味噌の種類の選び方は〔味噌はどれがいい?種類より減塩が大切な理由を保健学博士が解説〕でまとめています。)

味噌汁の正体は「発酵した大豆食品」

味噌は、大豆を麹菌などで発酵させて作られます。だから味噌汁には、大豆そのものの栄養と、発酵で生まれる成分の両方が入っています。代表的なのは、大豆たんぱく、イソフラボン(ポリフェノールの一種)、それに発酵と加熱でできるメラノイジンです。メラノイジンは味噌の茶色のもとになる成分で、抗酸化作用が報告されています。

「味噌汁=しょっぱい汁」というイメージとは、中身がずいぶん違うわけです。

著者の視点:味噌汁を“ただの塩水”のように思っている方は少なくありません。でも成分を分解してみると、大豆の栄養と発酵の産物がしっかり詰まっています。ここを知っておくと、このあとの話が入りやすくなります。

実践ポイント:栄養を活かすなら、味噌そのものだけでなく、豆腐・野菜・海藻を入れて具だくさんにするのが基本です。

発酵大豆食品は、死亡リスクの低さと関連する

味噌の健康効果を考えるうえで参考になるのが、日本人およそ9万人を追いかけた国立がん研究センターの研究(JPHC)です。納豆や味噌などの発酵大豆食品をよく食べる人ほど、総死亡リスクが約10%低かった(最高摂取群でハザード比0.90)と報告されています(Katagiri R, et al. BMJ. 2020)。目を引くのは、大豆製品“全体”の量では総死亡との明確な関連が出ず、「発酵しているかどうか」が効いているのかもしれない、という点です。

ただし、これは観察研究で、味噌の効果だけを取り出したものではありません。発酵大豆をよく食べる人の暮らし方全体が健康的だった、という可能性も残ります。「味噌汁を飲めば長生きする」と読み替えるのは行きすぎです。

著者の視点:発酵大豆が体にいいというイメージに、大きなデータが裏づけを与えているのは心強いところです。ただ、これを味噌汁の“万能薬扱い”に使うのは違うと思っています。健康的な食事の一部、という位置づけが実態に近いです。

実践ポイント:味噌汁に豆腐を入れたり、別皿の納豆を添えたりすると、発酵大豆をとる機会を無理なく増やせます。

塩分は多いのに、血圧はどうなる?

やはり気になるのは塩分です。ところが、いくつかの研究は少し意外な結果を示しています。高め〜軽症の高血圧の40人を8週間追った試験では、味噌の摂取で日中の血圧は変わらず、夜間血圧だけが下がり、脈拍にも変化はなかったと報告されています(Kondo I, et al. Hypertens Res. 2019)。日本人を対象にした別の調査でも、味噌汁を飲む頻度と血圧に目立った関連はなく、よく飲む人ほど安静時の心拍数が低めでした(Ito K, et al. Intern Med. 2017)。味噌の成分が、塩分による血圧上昇をいくらか打ち消しているのではないか、と議論されています。

とはいえ、「塩分は気にしなくていい」という話ではありません。塩分のとりすぎは高血圧に加え、日本人では胃がんのリスク上昇とも関連すると報告されています(Tsugane S, et al. Br J Cancer. 2004)。味噌汁の濃さと杯数は、やはり見ておきたいところです。

著者の視点:「塩分が多いからダメ」でも「味噌なら塩分は平気」でもありません。私が患者さんに伝えてきたのは、その真ん中でした。薄めに、具だくさんで、1日1杯。極端に振れないことが、いちばん現実的だと思います。

実践ポイント:だしを効かせて味噌を控えめにし、カリウムの多い野菜や海藻を具にする。そして汁を飲み干さない。この工夫だけで、味噌汁の塩分負担はかなり抑えられます。

発酵食品としての「腸内環境」への影響

味噌は発酵食品なので、腸への働きも期待されます。発酵食品全般をまとめた国際的な合意文書(ISAPP)では、発酵食品は腸内細菌の多様性などに影響しうるものの、その健康への寄与は食品ごとに差が大きい、とされています(Marco ML, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021)。

「発酵食品だから腸にいい」と一括りにはできず、味噌単独の腸活効果を強く言い切れる段階ではありません。発酵食品を含む食事全体で考えるのが妥当です。

著者の視点:腸活ブームで発酵食品が持ち上げられがちですが、エビデンスは食品ごとにまだら模様です。味噌汁も“腸によさそうな候補のひとつ”くらいの温度感が、正直なところだと感じます。

実践ポイント:腸を意識するなら、味噌汁にきのこ・海藻・根菜など食物繊維の多い具を足すのが手軽です。発酵食品は味噌だけに頼らず、いくつか組み合わせましょう。

結局、体にいいの?何杯がいい?

ここまでを整理すると、味噌汁は「発酵大豆食品として良い面が報告されている一方、塩分という弱点も抱えた」食品です。この両面をふまえた落としどころが、1日1杯前後(約150ml)を、減塩・具だくさんで続けることです。

1杯なら塩分のとりすぎを避けやすく、習慣にもなりやすい。反対に、2〜3杯以上を濃い味で毎日続ければ、塩分のマイナス面が前に出てきます。味噌汁は健康の土台になる一杯であって、それだけで健康を作る食品ではありません。

著者の視点:「体にいいから何杯でも」ではなく、「1杯を丁寧に」。この感覚が、味噌汁と長くつきあうコツだと感じています。

実践ポイント:目安は1日1杯・約150ml。血圧が気になる方は、汁を薄めにして具を増やし、飲み干さない。血糖値が気になる方は、食事の最初に野菜の多い味噌汁をとると、食べ方の面でも役立ちます。

まとめ

味噌汁は、発酵大豆食品として死亡リスクの低さや血圧・心拍との良い関連が報告される一方、塩分という管理すべき弱点も持っています。だから結論は、1日1杯前後を、減塩・具だくさんで続けること。味噌汁だけで健康になるのではなく、健康的な食事を支える一杯として使うのが、いちばん無理のない付き合い方です。

医療に関する免責事項

本記事は、査読済みの学術論文をもとにした一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の診断・治療・予防を推奨したり、医師その他の医療専門職による助言に代わるものではありません。紹介した研究の多くは観察研究や小規模な介入研究で、関連を示すものであり、すべての方に同じ効果を保証するものではありません。高血圧・腎臓病などで塩分制限を受けている方、持病のある方は、味噌汁の量や頻度について主治医・管理栄養士の指示を優先してください。

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主な参考資料

  1. Katagiri R, Sawada N, Goto A, et al. Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study. BMJ. 2020;368:m34. DOI: 10.1136/bmj.m34. PMID: 31996350
  2. Kondo I, et al. Long-term intake of miso soup decreases nighttime blood pressure in subjects with high-normal blood pressure or stage I hypertension. Hypertens Res. 2019;42(11):1757-1767. DOI: 10.1038/s41440-019-0304-9. PMID: 31371810
  3. Ito K, et al. The Effects of the Habitual Consumption of Miso Soup on the Blood Pressure and Heart Rate of Japanese Adults: A Cross-sectional Study of a Health Examination. Intern Med. 2017;56(1):23-29. DOI: 10.2169/internalmedicine.56.7538. PMID: 28049996
  4. Marco ML, Sanders ME, Gänzle M, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on fermented foods. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021;18(3):196-208. DOI: 10.1038/s41575-020-00390-5
  5. Tsugane S, Sasazuki S, Kobayashi M, Sasaki S. Salt and salted food intake and subsequent risk of gastric cancer among middle-aged Japanese men and women. Br J Cancer. 2004;90(1):128-134. DOI: 10.1038/sj.bjc.6601511. PMID: 14704797

瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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