野菜ジュースの棚の前で、赤にするか緑にするか迷う。よくある場面。
色が違えば中身も違うのだから、どれかがいちばん良いはずだ。そう考えたくなります。
この記事では、色ごとに何が分かっているのかを、査読を経た研究をたどって整理します。先に申し上げておくと、色によって成分は確かに違います。ただし「この色が最強」と言える研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
色が違うと、成分が違います
野菜の色は、含まれている成分の違いをそのまま映しています。見た目だけの区別ではなく、中身の区別。
| 色 | 代表的な成分 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 赤 | リコピン | 別記事で詳しく扱っています |
| 黄・オレンジ | βカロテン | 別記事で詳しく扱っています |
| 緑 | 硝酸塩・カリウム・葉酸・ビタミンK | この記事で扱います |
| 紫 | アントシアニン | この記事で扱います |
では、色ごとに優劣がつくのか。ここを調べた大きな解析があります。
95の前向き研究をまとめた2017年の系統的レビュー・メタ解析です。食べる量を割り当てた試験ではなく、ふだんの食事を記録して追いかけた調査の集まりになります。野菜と果物を合わせて1日200 g増えるごとに、全死亡のリスク比は0.90(95%信頼区間 0.87〜0.93)でした。そして、リスクの低下は1日800 gまで続いていました。がんだけは600 gで頭打ちです。
種類別に見ると、緑の葉物野菜やアブラナ科の野菜が、心血管疾患や死亡と逆の関連を示していました。トマトについては、冠動脈疾患との逆の関連が報告されています。
つまり、複数の種類がそれぞれ関連を示している、ということです。この研究は種類ごとの関連をそれぞれ調べたもので、色どうしを直接比べてはいません。
著者の視点: 色ごとの成分の違いは事実です。そこから「だから1色を選ぶべきだ」へ進むところに、飛躍があります。この研究が繰り返し示しているのは、量のほうです。
実践ポイント
- 「どの色にするか」より先に、野菜の総量が足りているかを見る
- 1日800 gという数字は野菜と果物の合計です。ジュース1本では届きません
- 色を決められないときは、原材料が複数入ったものを選ぶ
緑:注目されているのは、カリウムではなく硝酸塩です
緑の葉物野菜というと、カリウムや葉酸の話になりがちです。近年よく調べられているのは、別の成分です。
硝酸塩。野菜に含まれる硝酸塩は体内で一酸化窒素に変わり、血管の働きに関わると考えられています。
デンマークで行われた大規模な調査があります。心血管疾患のない53,150名を23年間追跡し、野菜由来の硝酸塩の摂取量との関係を調べたものです。追跡中に14,088件の心血管疾患が発生しました。
結果は、摂取量が多い人ほど発症が少ないというものでした。ただし、増やし続けても差は広がりません。
1日およそ60 mgで頭打ちになっています。この量は、著者らの換算で緑の葉物野菜およそ1カップにあたります。
その水準で、心血管疾患のハザード比は0.85。摂取量が最も少ない群と比べて15%低い。内訳は、入院を指標にすると、虚血性心疾患が12%、心不全が15%、虚血性脳卒中が17%、末梢動脈疾患が26%でした。
血圧も測られています。こちらは摂取量が最も多い群(中央値141 mg/日)と最も少ない群(同23 mg/日)の比較で、収縮期血圧が2.58 mmHg低い(95%信頼区間 −3.12〜−2.05)という差でした。
注意したいのは、141 mgが「1カップ」の2倍以上だという点です。発症の差が頭打ちになる60 mgとは、別の水準の数字になります。しかもこれは追跡を始めた時点での比較で、硝酸塩を増やしたら下がった、という読み方はできません。
統計上、血圧が説明できるのは全体の21.9%です。
残りの8割近くは、説明がついていません。
著者らは限界も挙げています。観察研究なので因果関係は言えないこと。硝酸塩だけの効果は介入研究でなければ判定できないこと。参加者がほぼ白人であり、他の集団にそのまま当てはめるには注意が要ること。
ひとつ、混同しやすい点を書いておきます。さきほどの「1日800 gまで下がり続ける」という話と、この「60 mgで頭打ち」は、数えているものが違います。前者は野菜と果物のグラム数、後者は硝酸塩のミリグラム数です。硝酸塩が頭打ちだからといって、野菜そのものを増やす意味がなくなるわけではありません。
著者の視点: 「頭打ちになる」という形が、この調査で最も実用的なところだと考えています。健康にいいと言われる成分は、多いほど良いと受け取られがちです。この研究が示しているのは、そこそこの量で足りる、という話でした。
実践ポイント
- 緑の葉物は、1日1カップほどが研究で見えている目安です。硝酸塩についてそれ以上を目指す根拠は、この調査にはありません
- サプリメントで硝酸塩を補う話とは別です。調べられたのは、食事から摂った量です
- 追跡されたのは23年です。数週間で変わる話ではないと考えてください
- ワルファリンを飲んでいる方は、緑の葉物を急に増やさないでください。ビタミンKが多く、薬の効き方に関わります。量を変える前に主治医へ
紫:効いたものと、効かなかったもの
紫の色はアントシアニン。ベリー類や紫キャベツに含まれています。
2021年に、ランダム化比較試験44件と前向きコホート研究15件をまとめた解析が出ています。効いたものと効かなかったものが、はっきり分かれました。
数字は血液中の濃度の変化です(mg/dL。マイナスは低下、プラスは上昇)。
| 調べたもの | 動いた指標 | 動かなかった指標 |
|---|---|---|
| 精製アントシアニン(サプリ) | LDL −5.43/中性脂肪 −6.18/HDL +2.76/CRP −0.028 | 総コレステロール・BMI・血圧・血管内皮機能 |
| アントシアニンの多いベリー(食品) | 総コレステロール −4.48/CRP −0.046 | LDL・中性脂肪・BMI・血圧・血管内皮機能 |
同じアントシアニンでも、サプリと食品では動く指標が入れ替わります。LDLと中性脂肪が下がったのはサプリのほうで、ベリーでは差がつきませんでした。総コレステロールはその逆です。
そして、サプリでもベリーでも、血圧は動いていません。血管の広がりやすさを見る検査でも、意味のある改善はありませんでした。
表のHDLには、注意書きが要ります。解析全体では11.49 mg/dLという大きな上昇でしたが、これは1本の研究に引っ張られた数字です。その研究を除くと2.76 mg/dLまで下がり、研究間のばらつきも小さくなりました。表には、除いたあとの数字を載せています。
ベリーの総コレステロール −4.48 mg/dLも、有意といってもぎりぎり。信頼区間の端が −0.02、p値は0.049でした。
食事からアントシアニンを多く摂っている人を追跡した研究のほうでは、心血管疾患の発症のリスク比が0.73(95%信頼区間 0.55〜0.97)、冠動脈疾患が0.83(0.72〜0.95)、心血管疾患による死亡が0.91(0.87〜0.96)でした。ただしこちらは、飲ませて比べた試験とは違います。もともとよく食べている人を追いかけた観察研究です。
試験では血圧が動かないのに、追跡研究では発症が少ない。この食い違いをどう読むかは、まだ決着していません。
著者の視点: この解析には、資金源で分けた集計もあります。サプリの中性脂肪について見ると、業界から資金が入った10件が −0.29 mg/dLで差がつかず、入っていない4件は −9.98 mg/dLでした。業界資金の入った試験のほうが、効果が小さく出ています。そこまで載せる論文は、読んでいて信用できます。
実践ポイント
- 紫を「血管にいい」と受け取るのは、いまの根拠より一歩先です
- 試験で使われたのはサプリとベリーです。紫の野菜ジュースを調べた試験は含まれていません
- 味や値段で続けにくいなら、無理に選ばなくてかまいません
赤・黄・オレンジは、別の記事で扱っています
この2つの色は、成分がはっきりしているぶん、書くことが多くなります。1つの記事に詰め込めば、どれも中途半端。
- 赤(リコピン)は、トマトは血圧・コレステロールにいい?リコピンの働きと食べ方を保健学博士が解説へ
- 黄・オレンジ(βカロテン)は、黄・オレンジ野菜ジュースは何にいい?βカロテンから考える|保健学博士が解説へ
著者の視点: 色ごとに記事を分けているのには、理由があります。同じ「カロテノイド」でも、βカロテンとリコピンでは調べられていることが違うからです。まとめて書くと、その違いが消えます。
実践ポイント
- 赤か黄・オレンジで迷っている方は、上の2記事のほうが役に立ちます
- この記事で読むべきなのは、緑と紫の2色です
ここまでの研究は、すべて「野菜そのもの」です
ここが、いちばん大事なところです。
この記事で紹介した研究は、どれも野菜ジュースを調べたものではありません。
- 95研究のメタ解析が数えていたのは、野菜と果物の摂取量です
- デンマークの調査が計算していたのは、食事から摂った硝酸塩の量です
- アントシアニンの試験で使われたのは、サプリとベリーでした
「野菜に含まれる成分に、こういう報告がある」までは言えます。「その色のジュースを飲めば同じことが起きる」は、別の話です。
では、この問いに答えるには、どんな調査があればいいのでしょうか。
ひとつは、飲む量が記録されていること。デンマークの調査は、食事の記録から硝酸塩のミリグラム数を計算しました。同じことをジュースでやるには、その製品に硝酸塩が何ミリグラム入っているかが分かっていなければなりません。
もうひとつは、比べる相手がいること。アントシアニンの試験は、飲んだ群と飲まなかった群を比べています。ジュースで同じことをするなら、色だけが違う2種類を用意して、他の条件を揃える必要があります。
そして、追いかける期間。心血管疾患の発症を見るには、デンマークの調査は23年かけています。数週間の試験で分かるのは、コレステロールのような血液の数字までです。
この3つを満たす調査は、今回の検索では見つかりませんでした。「まだ調べられていない」ということであって、「効かないと分かった」ということではありません。
野菜ジュースが野菜の代わりになるかどうかは、それだけで一つの論点です。野菜ジュースは健康にいい?補助はOK・代替はNGな理由を保健学博士が解説に、そちらをまとめました。
著者の視点: 成分の名前が同じなら効果も同じだろう、という読み方は、健康情報でもっとも起きやすい飛躍だと感じています。研究が何を測ったのかを見るだけで、防げることが多くあります。
実践ポイント
- 「◯◯が入っているから効く」と書かれていたら、その研究が何を食べさせたのかを見る
- ジュースは野菜の代わりではなく、足りない日の補いとして考える
- 野菜を食べる習慣は、ジュースとは別に続ける
それで、何色を選べばいいのか
ここまでを合わせると、答えは拍子抜けするほど地味。
色を固定しないこと。どの色にも別々の成分があり、それぞれに報告があります。1色に絞る根拠は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
無糖を選ぶこと。果汁や砂糖が加わると、糖質の量が変わります。判断の材料は原材料表示。
食事と一緒に飲むこと。脂溶性の成分の吸収については、黄・オレンジの記事で扱っています。
そして、野菜そのものを食べる習慣は別に続けること。今回紹介した研究が調べていたのは、そちらです。
飲む前に色を選び直すより、1年を通してどれくらい野菜を食べているか。研究が測っていたのは、そちらのほうでした。
著者の視点: 文献を並べながら思ったのは、「色で選ぶ」という問いの立て方そのものが、少しずれているということでした。読者が知りたいのは色ではなく、何をどれだけ摂ればいいのかのはずです。それに正面から答えている研究は、色ではなく量を見ていました。
実践ポイント
- 同じ色を続けているなら、次に買うときだけ別の色にしてみる
- 無糖・食事と一緒。この2つが守れていれば、色は後回しでかまいません
- 野菜ジュースを増やすより、野菜を1品増やすほうが確かです
医療に関する注意
この記事は、査読を経た研究をもとに情報を整理したものであり、診断や治療の指針を示すものではありません。
特定の色の野菜ジュースが、病気を予防したり治したりすることを示すものではありません。紹介した研究はいずれも野菜そのものやサプリを調べたもので、市販の野菜ジュースを対象にしたものではありません。
腎臓の病気でカリウムの制限を受けている方、糖尿病で糖質の量を管理している方、ワルファリンを服用していてビタミンKの摂取量を調整している方は、野菜ジュースの種類や量について主治医や管理栄養士にご相談ください。持病のある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方も同様です。
あわせて読みたい
- 野菜ジュースは健康にいい?補助はOK・代替はNGな理由を保健学博士が解説
- 黄・オレンジ野菜ジュースは何にいい?βカロテンから考える|保健学博士が解説
- トマトは血圧・コレステロールにいい?リコピンの働きと食べ方を保健学博士が解説
使用文献
- Aune D, Giovannucci E, Boffetta P, Fadnes LT, Keum N, Norat T, et al. Fruit and vegetable intake and the risk of cardiovascular disease, total cancer and all-cause mortality—a systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. International Journal of Epidemiology. 2017;46(3):1029-1056.
- Bondonno CP, Dalgaard F, Blekkenhorst LC, Murray K, Lewis JR, Croft KD, et al. Vegetable nitrate intake, blood pressure and incident cardiovascular disease: Danish Diet, Cancer, and Health Study. European Journal of Epidemiology. 2021;36:813-825.
- Xu L, Tian Z, Chen H, Zhao Y, Yang Y. Anthocyanins, Anthocyanin-Rich Berries, and Cardiovascular Risks: Systematic Review and Meta-Analysis of 44 Randomized Controlled Trials and 15 Prospective Cohort Studies. Frontiers in Nutrition. 2021;8:747884.
※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。


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