夏の甘い飲み物は血糖にどう響く?熱中症対策との折り合いを保健学博士が解説

血糖値ケア

夏になると、飲み物が変わります。麦茶や水だったところに、スポーツドリンクや炭酸、甘いアイスコーヒーが混ざってくる。冷たいものを選ぶと、甘いものが増えてしまう。私自身、そこが気になっています。

ただ、困ったことがあります。血糖は、上がってもすぐには症状が出ません。痛くも、かゆくもない。だから、後回し。

この記事では、日本人およそ3万人を追跡し、10年後まで追えた2万7千人余りのデータを中心に、甘い飲み物と血糖の関係を整理します。そして、熱中症対策との折り合いのつけ方まで書きます。

血糖は、症状が出るころには進んでいます

日本糖尿病学会の学会誌に、こんな症例報告が載っています(文献1)。

45歳の男性。10日前から、全身のだるさ、のどの渇き、水分をたくさん飲む状態が続いていました。清涼飲料水を1日1リットル以上飲んでいたそうです。

受診したときの数値です。

項目受診時の値
BMI25.7 kg/m²
血糖1,260 mg/dL
HbA1c12.4 %
尿ケトン3+

糖尿病性ケトアシドーシスと診断され、入院になりました。

この症例で私がいちばん重く感じるのは、受診のきっかけになった訴えが「全身のだるさ」「のどの渇き」「水分をたくさん飲む」の3つだったことです。夏なら、誰にでも起こりそうな状態。

そしてもう一つ。この方は、病歴と肥満の存在から「ソフトドリンクケトーシスを合併した2型糖尿病」が疑われました。ところが抗体を調べたところ、急性発症の1A型糖尿病だったのです(文献1)。

(「ソフトドリンクケトーシス」は、一般に「ペットボトル症候群」と呼ばれているものです。ただしこの呼び方は論文で使われている用語ではありません。1A型糖尿病とは、自己免疫のしくみでインスリンを作る細胞が壊れるタイプを指します。)

念のため書いておきます。1型糖尿病は、甘い飲み物が原因で起こる病気ではありません。この方の場合、多飲は原因ではなく、血糖が上がったことで起きた症状のほうです。それでも専門医が「飲みすぎによるもの」を疑うほど、見分けがつきませんでした。そこが、この報告の中身です。

そして、この方はその後よくなっています。入院した時点では、自分のインスリンを出す力(血中CPR)が0.37 ng/mLまで落ちていました。それが3か月後には、空腹時1.41・食後2時間8.39 ng/mLまで戻っています。外から補うインスリンの量も、1日あたり体重1kgにつき1.23単位から0.37単位へ減りました(文献1)。

論文の著者らは、こう書いています。

DKAで発症する肥満糖尿病患者の鑑別は困難なことが多く,本症例は1型糖尿病の発症における肥満の役割を考えるうえで貴重な症例と考え報告する(文献1)

著者の視点:糖尿病を専門にする医師が、目の前で診察して、なお原因の見分けがつかなかった。抗体検査をして、ようやく判明。これは「自分で判断できるものではない」ということを、そのまま示しています。血糖は、測らないと分かりません。症状が出ていても、それが何によるものかは、自分では分からない。私がそう考えているのは、こういう理由です。

実践ポイント

「だるい」「のどが渇く」「トイレが近い」「たくさん飲む」が数日続いているなら、夏バテとは限りません。とくに、甘い飲み物の量が増えている時期と重なっているなら、医療機関で血糖を測ってもらってください。

なお、これは1例の報告です。同じ症状が、同じ原因とは限りません。そして症状だけでは、何が起きているかは決まりません。

日本人のデータでは、女性で関連が出ました

甘い飲み物と糖尿病の話は、たいてい海外のデータ。ただ、日本人を追跡した研究もあります。

国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)です(文献2)。

項目内容
開始1990年
地域岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾
対象40〜59歳の男女 約3万人。開始時点で糖尿病・循環器病・がんがなかった人
追跡約10年
10年後まで追えた人27,585人
そのうち糖尿病を発症824人(男性484人・女性340人)

この研究では、清涼飲料水を「コーラや果汁飲料(果汁100%未満)」「100%果汁ジュース」「野菜ジュース」の3種類に分け、飲む頻度を「ほとんど飲まない」「週2回以下」「週3〜4回」「ほぼ毎日」の4区分で調べています。

結果。

女性で「コーラや果汁飲料(果汁100%未満)」の清涼飲料水の飲用量が多いほど、糖尿病の発症リスクが高いことを確認しました(文献2)

5年の追跡でも、10年の追跡でも、同じ方向でした(文献2)。

原著には、数字が載っています。「ほぼ毎日飲む女性」を「飲まない女性」と比べたときの、糖尿病になるオッズ比です(文献2)。

時点オッズ比(95%信頼区間)傾向性の検定
5年後2.10(1.23〜3.59)P = 0.004
10年後1.79(1.11〜2.89)P = 0.01

ここは正確に読んでください。この数字は「ほぼ毎日」と「まったく飲まない」を比べたものです。週に2回飲む人の話ではありません。また、信頼区間の下限が1.11・1.23と1をわずかに超えたところにあります。「2倍近い」と言い切れるほど、幅の狭い推定ではありません。

ここで、この研究の性質にふれておきます。これは観察研究です。飲む頻度をアンケートで聞き、5年後・10年後に糖尿病になったかを見たものです。「飲んだから糖尿病になった」と示したものではありません。

甘い飲み物をよく飲む人は、食事の内容も、体を動かす量も、体格も違うかもしれません。そうした違いを、統計で完全に取り除くことはできません。

著者の視点:それでも、日本人を10年追いかけて同じ方向の結果が出たことには意味があると考えています。この研究の意味は、日本人を、日本の飲用量で追跡した点にあります。研究チーム自身が「欧米に比べ、その飲用量の少ない日本人女性においても」と書いています。量が少なくても関連が出た、というところが重いと考えています。

実践ポイント

この研究は、量ではなく頻度で分けています。「ほぼ毎日」と「週2回以下」では、扱いが違います。

まず、ご自分がどの区分かを数えてみてください。

著者の視点として補足すると、この研究が数えたのは、3種類のうち「コーラや果汁飲料」だけです。缶コーヒーや乳酸菌飲料は、この分類には入っていません。とはいえ糖を含む点は同じなので、ご自分の一日を振り返るときは一緒に数えておくと、実態がつかみやすくなります。

なぜ、甘い飲み物が血糖に関わるのか

「関連があった」だけでは、腑に落ちない。研究チームは、考えられる理由を3つ挙げています(文献2)。

理由中身
余ったエネルギー飲み物は食事に追加して摂ることになる。肥満につながりうる
急な立ち上がり多量に摂ると血糖とインスリンが急に上がる。耐糖能異常やインスリン抵抗性につながりうる
フルクトース甘みに使われる糖。内臓脂肪の増加との関連が報告され、血中の尿酸値を上げる

著者の視点:1つ目が、いちばん見落とされます。飲み物は、食事の代わりになりません。ごはんを減らして甘い飲み物にする人は、まずいません。ふつうは食事に上乗せ。3つ目のフルクトースも大事です。「果糖だから体にやさしい」という言い方を見かけますが、この研究チームは逆の文脈で挙げています。内臓脂肪と尿酸です。なお、これらは著者らが「可能性が考えられる」と書いている説明であって、この研究で証明されたものではありません。そこは分けて読んでください。

実践ポイント

甘い飲み物は「食事のうち」ではなく「食事に足したもの」として数えてください。

健診で尿酸値を指摘されたことがある方は、飲み物の糖にも目を向ける理由があります。著者の視点として補足すると、尿酸はビールだけの話ではありません。

「男性は大丈夫」ではありません

同じ研究で、男性では明らかな関連がみられませんでした(文献2)。

ここを読み間違えると、話が逆。研究チームは、その理由をこう説明しています。

欧米人に比べ清涼飲料水の飲料量が少ないこと、また同じ日本人でも、男性は女性に比べ体格が大きいことから、清涼飲料水1杯分の影響が女性よりも小さく、関係が出にくかったのではと推察されます(文献2)

著者の視点:「関連がなかった」と「影響がない」は、違います。著者らが挙げているのは、影響がない理由ではなく、検出できなかった理由です。飲む量が少なく、体格が大きければ、1杯あたりの影響は薄まって見えます。私が健康記事を読むとき、いちばん気をつけているのがここです。「関連なし」と書いてあるとき、それが「効かない」なのか「見つけられなかった」なのかを、必ず確かめます。

実践ポイント

男性の方は、この結果を安心材料にしないでください。同じ本数を飲んでいるなら、体格が大きいぶん、影響が見えにくいだけかもしれません。

果汁100%ジュースは、この研究では関連が出ませんでした

「甘い炭酸をやめて、果汁100%にした」——よく聞く置き換えです。

この研究は、飲み物を3種類に分けて調べていました。その結果は、種類によって分かれています(文献2)。

飲み物2型糖尿病の発症との関連
コーラ・果汁飲料(100%未満)女性で関連あり(男性では出ず)
100%果汁ジュース男女とも関連なし(傾向性P > 0.05)
野菜ジュース男女とも関連なし(傾向性P > 0.05)

原著の結論は、こう書かれています。

日本人女性において、2型糖尿病のリスク上昇と関連していたのは清涼飲料水であり、純粋なジュースではなかった(文献2)

著者の視点:置き換えには意味がありそうだ、というのがこの研究の読み方です。ただし「関連が出なかった」と「安全だと確かめられた」は、別のことです。関連が出ない理由には、本当に影響がない場合と、飲んでいる人が少なくて差を検出できなかった場合があります。この研究は飲む頻度を聞いたもので、量は聞いていません。だから「100%果汁なら何杯でもいい」という話にはなりません。それでも、コーラや果汁飲料からの置き換えについては、この研究は後押しする側に立っています。そこは、隠さずお伝えします。

実践ポイント

果汁100%や野菜ジュースへの置き換えは、この研究の範囲では悪い選択ではありません。

飲む量が増えれば、話は変わります。この研究が調べたのは頻度だけです。著者の視点として補足すると、果物そのものを食べれば食物繊維も一緒に摂れます。置き換えの先として、そちらも考えてみてください。

糖が濃いほど、水分が届くわけではありません

ここからは、熱中症対策の話に入ります。

「汗をかいたら、水よりスポーツドリンクのほうが吸収がいい」とよく言われます。これを確かめた試験があります(文献3)。

飲み物のブドウ糖濃度を変えて、飲んでから60分のあいだに、体にどれだけ水分が届いたかを測ったものです。

先に、この試験の条件を書いておきます。対象は健康な男性10人座ったまま飲んで、そのあと2時間座って採血するという設計で、運動も発汗も脱水もありません(文献3)。また、比較に使われた「無糖」の飲料にもナトリウムが20 mmol/L入っています。ただの水ではありません。(論文の考察では、この飲料を「water」と書いている箇所もあります。ここでは方法の記載に従います。

飲み物60分で届いた水分(多い順)
3%ブドウ糖1位(他のすべての条件より有意に多い)
無糖(糖0%)2位
6%ブドウ糖3位
9%ブドウ糖4位

著者らの結論。

飲んだ飲料の糖質濃度が6%を超えると、水分の供給が損なわれた。また、6%のブドウ糖飲料にナトリウムを0〜60 mmol/L加えても、水分の供給は増えなかった(文献3)

ただし、ナトリウムについては、著者らが同じ論文のなかで続きを書いています。

水分の届き方に差がなかったとはいえ、ナトリウムを入れることには、なお意味があるかもしれない。ナトリウムを加えると飲みやすくなり、自分から飲む量が増える。また脱水したあとの回復では、ナトリウムは水分を体にとどめるはたらきがあるため重要である(文献3)

そのうえで著者らは、今回の飲料に6%のブドウ糖が入っていたことが、ナトリウムの効果を覆い隠した可能性があるとも書いています(文献3)。

では、なぜ薄い糖のほうが多く届いたのか。著者らは、小腸のしくみで説明しています。

小腸でブドウ糖を取り込む輸送体(SGLT1)は、ブドウ糖1分子といっしょに、ナトリウム2個と、水をおよそ300分子まとめて運び込みます(文献3)。だから水は、濃度の差に逆らってでも入ってくる。運び屋つき、というわけです。3%が無糖より多く届いた理由は、ここにあると著者らは考えています。

では、糖が濃いとどうなるのか。著者らは「胃から先へ送り出す速さが落ちた可能性がある」と書いていますが、そこには「はっきりしない」と添えられています。実際、原文は「10%未満なら胃排出に影響しない」という別の報告も並べて挙げています(文献3)。腸のほうも、糖が濃いと水を引き込む力が弱まったかもしれない、という書き方です。

つまり「薄いと運び屋になり、濃いと足かせになる」——ただし足かせのほうのしくみは、まだはっきりしていません。

著者の視点:ここが、この試験のいちばん面白いところだと思っています。糖は、水を運ぶ道具にも、足かせにもなります。薄ければ運び屋、濃ければ足かせ。「甘いほど体にしみこむ」という感覚は、少なくともこの試験では成り立ちませんでした。もっとも、ここで比べられているのは糖の濃さだけです。電解質を補う必要そのものは、別の話として残ります。

実践ポイント

「甘いほうが吸収がいい」は、この試験では成り立ちませんでした。のどが渇いただけなら、水や麦茶で足ります。

この試験を、どこまで信じてよいか

ここまでの話には、条件がつきます。私は、それも一緒にお伝えするべきだと考えています。

まず、有意差が明記されている範囲は限られます。原文が「有意に多い」と書いているのは、3%と他のすべての条件のあいだ、および6%と9%のあいだです。無糖と6%・9%の差については、有意という語は使われていません。

次に、著者ら自身が、慎重に読むよう求めています。

この種の研究の結果は、つねに慎重に解釈されるべきである。ここで示したデータは、吸収そのものを表していないかもしれない…これらの体液の移動がどれだけ影響しているかは分かっていない。したがって結果は慎重に解釈されなければならない(文献3)

そして、先行研究とは食い違っています。6%・8%・10%の飲料と水を比べて差がなかったという報告があります(文献3が引用しているDavisらの研究)。著者らはその違いを、果糖(フルクトース)が入っていたかどうかで説明しています。ブドウ糖と果糖では、腸で取り込む入口が違うからです。

著者らは、6%で水分の届き方が遅くなることを示したのは、この研究が初めてだとも書いています(文献3)。初めてということは、その時点で追試がなかった、ということです。この論文は2009年のものです。その後に追試が出ているかどうかは、今回は調べていません。

最後に、資金源。この試験に資金を出しているのは、GlaxoSmithKline Consumer Healthcare UK。スポーツドリンクの製造企業です。そのうえで著者らは、「競合する利害はない」と申告しています。

著者の視点:私は、この組み合わせをそのままお伝えするべきだと考えています。そのうえで公平に見れば、この結果は資金源にとって有利ではありません。6%前後の飲料が、無糖より下に来ているからです。資金源が結論を歪めた形跡は、この論文に関しては見当たりませんでした。だから私は、条件つきでこの試験を使っています。

実践ポイント

この試験は「3%がいい」と決めたものではありません。健康な男性10人が、座ったまま飲んだときの結果です。運動も発汗もありません。

ここから言えるのは、「甘いほど水分が届く、とは限らない」までです。それ以上を、この1本から読み取らないでください。

熱中症対策と、どう折り合いをつけるか

では、スポーツドリンクは飲まないほうがいいのか。そういう話でもありません。

大量に汗をかいたときに失われるのは、水だけではありません。ナトリウムなどの電解質も一緒に出ていきます。そこを補う場面では、電解質を含む飲料に役割があります。この点は、当ブログの熱中症の記事でも扱っています(記事末尾のリンクをご覧ください)。

一方で、先ほどの試験が示しているのは、糖を濃くすれば水分が届くわけではないということでした(文献3)。「汗をかいたから、とりあえず甘い飲み物」ではない、ということです。

この2つは、別のことを言っています。文献3が調べたのは糖の濃さと水分の届き方の関係であって、電解質を補う必要そのものを否定したものではありません。「電解質は要る。ただし糖は、濃ければいいわけではない」——そう読むのが正確です。

著者の視点:この話は「スポーツドリンクは是か非か」で考えると、答えが出ません。場面が違えば、必要なものが違うからです。汗をびっしょりかいて食事もとれていない人と、冷房の効いた部屋で過ごしている人が、同じ飲み物を選ぶ理由はありません。私がお伝えしたいのは、飲み物を「良い・悪い」で分けるのをやめて、「いまはどの場面か」で選ぶという考え方です。

実践ポイント

場面で分けてください。

  • 大量に汗をかいた・屋外の作業や運動のあと → 電解質を含む飲料に役割があります
  • 室内で過ごしていて、食事もとれている → 水や麦茶で足ります
  • のどが渇いただけ → 水

著者の視点として補足します。「甘いのをやめて水にする」は、たいてい続きません。甘い飲み物に手が伸びるのは、冷たくて味のあるものが欲しいからです。だから、冷たくて味があるのに糖が入っていないものを先に用意しておくほうが現実的です。無糖の炭酸水、水出しの麦茶や緑茶、レモンや生姜を落とした炭酸水、凍らせた麦茶。冷蔵庫にそれがない状態で暑い日を迎えると、結局は甘いものになります。これは論文の話ではなく、私自身がそうだからです。

日本の目安は4〜8%。ただし条件があります

日本の公的な目安も見ておきます。ここで一つ。これは運動をする場面の話です。公益財団法人日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」には、こう書かれています(文献4)。

補給する飲料の中身としては、0.1〜0.2%の食塩と糖質を含んだものが効果的で、一般のスポーツドリンクが利用できます。ただし、余り糖質濃度が高くなると胃にたまりやすく好ましくありません。エネルギーの補給を考慮すれば、4〜8%程度の糖質濃度がよいでしょう(文献4)

この4〜8%という数字は、「1時間以上の運動をする場合」を念頭に置いた記述です(文献4)。冷房の効いた部屋で過ごす日の話ではありません。

文献3と、数字が食い違って見えます。協会は4〜8%をすすめ、文献3は「6%を超えると水分の供給が損なわれた」と報告しています。

協会自身も「余り糖質濃度が高くなると胃にたまりやすく好ましくありません」と書いています。「濃すぎるのは良くない」という向きは、2つとも同じです。違うのは、協会が「エネルギー補給」も一緒に考えている点です。1時間以上動き続ける場面では、水分だけでなく燃料も要るからです。

とはいえ、重なっていない部分があります。協会が示す幅の上のほう——6〜8%は、文献3の結果では「水分の届き方が落ちる」側にあたります。

糖質濃度協会(文献4)Jeukendrup 2009(文献3)
3%前後範囲外(薄い)最も多く届いた
4〜6%推奨の範囲6%を境に落ちはじめる
6〜8%推奨の範囲届き方が落ちる側
9%範囲外(濃い)最下位

同じ濃度でも、目的が違えば評価が変わります。水分を早く届けたいのか、動き続けるための燃料も要るのか。そこで答えが分かれています。

このガイドブックにも、ひとこと添えます。奥付に「協賛:大塚製薬株式会社」とあります。スポーツドリンクの製造企業です。飲料の濃度について目安を示している資料が2つあり、どちらも飲料メーカーの資金が入っています。それでいて、どちらも「濃すぎるのは良くない」と書いている。私は、そこを見たうえで使っています。

もう一つ、このガイドブックには冷たさについての記載があります。

摂取する水としては、5〜15℃に冷やした水を用いる(文献4)

つまり、冷たいこと自体は問題ではありません。むしろすすめられています。この記事で気にしているのは冷たさではなく、冷たいものを選ぶときに、甘いものが混ざってくることのほうです。

著者の視点:目安が2つあって数字が違う——これは、どちらかが間違っているという話ではありません。測っているものが違うだけです。協会は「動き続けるための燃料も含めて」、文献3は「水分の届き方だけ」を見ています。自分がいまどちらを必要としているかで、選ぶ濃度は変わります。そして冷たさについては、迷わなくて構いません。協会が5〜15℃をすすめています。

実践ポイント

手元のペットボトルで確かめられます。栄養成分表示の「炭水化物」が100mLあたり何gかを見てください。その数字が、ほぼそのまま糖質濃度の%にあたります(100mLあたり6gなら、およそ6%)。ナトリウムは、100mLあたり40〜80mgで0.1〜0.2%の食塩水に相当します(文献4)。

糖尿病の治療を受けている方、腎臓に持病のある方は、熱中症対策としての飲み物の選び方を、あらかじめ主治医に確認しておいてください。とくにSGLT2阻害薬や利尿薬を使っている方は、脱水のリスクが重なります。当ブログに、そのための記事があります(記事末尾のリンクをご覧ください)。

こうなったら受診してください

この記事では、「1日何杯までなら安全」という線は示せません。そういう線を示した研究を、今回の検索では見つけられなかったからです。

そのかわり、受診を考える目安。

  • だるさが数日以上続いている
  • のどが渇いて、水分をたくさん飲んでいる
  • トイレが近い、尿の量が増えた
  • 体重が減ってきた
  • これらが、甘い飲み物の量が増えている時期と重なっている

文献1の症例では、これらが10日続いていました。

著者の視点:「ペットボトル症候群だと思う」で、終わらせないでください。文献1の方も、まさにそう疑われました。そして、最終的な診断は1A型糖尿病でした。専門医が症状と病歴を見ても、決められなかったのです。血糖は、測ってはじめて分かります。逆に言えば、測ればすぐ分かります。受診のハードルは、思っているより低いはずです。

実践ポイント

上の状態が数日続いているなら、内科を受診して血糖を測ってもらってください。「夏バテかもしれないけれど、念のため血糖を診てほしい」と伝えれば十分です。

すでに糖尿病の治療を受けている方が、強いだるさ・強い口渇・吐き気・意識がはっきりしないなどを感じたら、その日のうちに主治医か救急に連絡してください。

まとめ

  • 血糖は、症状が出るころには進んでいます。症例報告では、だるさと口渇だけが10日続いたあと、受診時の血糖は1,260 mg/dLでした
  • 専門医でも、症状と病歴だけでは原因を決められませんでした。自己判断はできません
  • 日本人およそ3万人を10年追跡した研究(10年後まで追えたのは2万7千人余り)では、女性で「コーラや果汁飲料」の飲用量が多いほど糖尿病の発症リスクが高いと報告されています
  • 男性で関連が出なかったのは、影響がないからではありません。研究チームは飲用量と体格の違いを理由に挙げています
  • 果汁100%ジュースと野菜ジュースでは、男女とも関連が出ませんでした。コーラや果汁飲料からの置き換えは、この研究の範囲では悪い選択ではありません。ただし「関連が出なかった」と「安全が確かめられた」は別で、この研究は飲む量を聞いていません
  • 糖が濃いほど水分が届くわけではありません。3%が最も届き、6%・9%は無糖の飲料より少ない値でした(健康な男性10人・安静座位の試験)
  • 場面で分けてください。大量に汗をかいたあとは電解質を含む飲料、室内で食事もとれているなら水や麦茶
  • だるさ・口渇・多尿が数日続いたら、受診して血糖を測ってください

甘い飲み物を「絶対に飲まない」必要はありません。飲む場面と頻度を、自分で把握しておくことのほうが現実的です。

医療に関する注意

この記事は、査読を経た研究と公的機関の資料をもとに情報を整理したものであり、診断や治療の指針を示すものではありません。

紹介した症例は1例です。同じ症状が、同じ原因によるものとは限りません。症状だけで病名を判断することはできません。

糖尿病の治療を受けている方は、飲み物の選び方を主治医にご確認ください。水分と糖の摂り方は、治療の内容に関わります。

腎臓に持病のある方は、電解質を含む飲料の摂り方を主治医にご確認ください。

強い口渇、多尿、強いだるさ、吐き気、意識がはっきりしないといった状態がある場合は、様子を見ずに受診してください。糖尿病性ケトアシドーシスは、緊急の対応が必要な状態です。

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【使用文献】

文献1 栗山恵里沙, 福山貴大, 内田あいら, 相良陽子, 玉井秀一, 中野優子, 當時久保正之, 川﨑英二(2018)「ソフトドリンクケトーシスとの鑑別が困難であった肥満1A型糖尿病の1例」糖尿病 61巻1号 pp.22-27 doi.org/10.11213/tonyobyo.61.22

文献2 Eshak ES, Iso H, Mizoue T, Inoue M, Noda M, Tsugane S. Soft drink, 100% fruit juice, and vegetable juice intakes and risk of diabetes mellitus. Clinical Nutrition. 2013;32(2):300-308. doi.org/10.1016/j.clnu.2012.08.003
/日本語の解説:国立がん研究センター 多目的コホート研究(JPHC Study)「清涼飲料水(ソフトドリンク)と糖尿病発症との関連について」(2026年8月13日閲覧) epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3119.html

文献3 Jeukendrup AE, Currell K, Clarke J, Cole J, Blannin AK. Effect of beverage glucose and sodium content on fluid delivery. Nutrition & Metabolism. 2009;6:9. doi.org/10.1186/1743-7075-6-9

文献4 公益財団法人日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」平成30年7月20日 第4版2刷(2026年8月13日閲覧) japan-sports.or.jp(PDF)

瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。

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