バナナは睡眠にいい?よく引用される研究の中身を保健学博士が解説

睡眠

「バナナを食べると眠れる」——よく見かける話です。

本当かどうかを確かめたくて、引用されている研究を1本ずつ開いてみました。

開いてみたら、思っていたのとかなり違いました。


結論を先に

分かっていること
盲検・プラセボ対照の試験今回見つかったのは1本だけ。しかも実ではなく皮のエキス客観的な睡眠指標はすべてプラセボと差なし
よく引用される「バナナ+深呼吸」の研究研究計画書です。結果はまだ出ていません
高齢者にバナナを配った試験盲検化の有無は抄録に記載なし。測ったのは自己記入の尺度のみ
「血中メラトニンが4倍」事実。ただし同じ試験でオレンジとパイナップルのほうが高い
メラトニンの量よく引用される8.9 pg/gは出どころを確認できず。仮に正しいとすると、バナナ2本で約2 ng=臨床用量の約24万〜240万分の1

「バナナを食べると眠れる」を、比較対照を置いて確かめた試験は見つかりませんでした。

以下、1本ずつ中身を書きます。


①盲検で確かめた試験は、1本だけでした

バナナ関連で盲検・プラセボ対照でおこなわれた試験を探したところ、見つかったのは1本だけでした(文献1)。2025年の報告です。

※「存在しない」ではなく「今回の検索では見つからなかった」という意味です。データベースに載らない試験や、他言語の報告がある可能性は残ります。

設計はしっかりしています。

  • DSM-5で不眠症と診断された成人50名(ピッツバーグ睡眠質問票5点超)
  • 精神科・睡眠専門医が診断を確認
  • ランダム化・二重盲検・プラセボ対照
  • 就寝2時間前に4週間、毎日摂取
  • 睡眠は心電図と加速度計を内蔵した機器で測定(台湾の医療機器認証あり)

結果です。

客観指標(4週後)バナナ群プラセボ群p値
入眠潜時14.9分10.7分0.20
中途覚醒22.1分23.7分0.75
総睡眠時間369.8分376.6分0.70
深睡眠39.1%42.3%0.45
REM睡眠18.3%19.2%0.69

すべて有意差なしです。

論文の要旨自身が、こう書いています。

睡眠の質の改善に有望である可能性はあるが、プラセボに対する上乗せの有意な優位性は示さなかった

一方で、唾液メラトニン・血清セロトニン・自律神経のバランス(LF/HF比)は改善しました。著者らは「入眠前の状態を整える方向に働いた可能性がある」と考察しています。

ただし、ここも読み分けが要ります。唾液メラトニン(4週で43.3%増)はプラセボ群より有意に高いと報告されていますが、血清セロトニン(13.9%増)は摂取前との比較で、プラセボ群との比較は示されていません。

ただし、2つ注意が必要です

ひとつ目。これはバナナの実ではありません。使われたのはバナナの皮から抽出したエキス(1日200mg、錠剤2粒)です。バナナを食べる話とは違います。

ふたつ目。この研究をおこなったのは、この製品を販売している企業です。責任著者の所属は、製品名(Happy Banana®)を持つ企業の研究開発センターです。論文にもそう明記されています。

著者の視点

企業研究だからダメだ、とは思いません。むしろ、この論文は自社製品について「客観的な睡眠指標に有意差はなかった」と正直に書いています。表もそのまま載せています。隠していません。

気になるのはそこではなく、この結果が日本語の記事にほとんど紹介されていないことです。「バナナの皮にセロトニンを増やす成分が」という部分だけが切り出されて、「客観指標では差がなかった」は落ちる。落ちるほうが、読者にとっては大事な情報です。

それと、掲載誌についても書いておきます。この論文が載ったのは Journal of Depression & Anxiety という雑誌で、投稿から掲載まで1か月です(2025年8月8日投稿、9月8日掲載)。査読の期間としてはかなり短い。読むときは、そのぶん割り引きます。

実践ポイント

  • 「臨床試験で効果が確認された」という表現を見たら、何を測って有意だったのかを探してください
  • この試験で有意だったのは血液・唾液・心拍のデータ眠りそのものではありません
  • 皮のエキスの話を、実を食べる話として紹介している記事があります。別の話です
  • 資金源は、たいてい論文の最後に書かれています。Funding/Conflict of interest の欄を見てください

②よく引用される「研究」を開いてみると

バナナと睡眠の記事でよく引用される文献が、ほかに2本あります。開いてみました。

「バナナ+深呼吸で閉経後女性の睡眠が改善」——結果はまだありません

インドの研究です(文献2)。閉経後の女性135名を3群(各45名)に分け、①バナナ300g(16時と19時に分けて摂取)、②深呼吸10分、③両方、を14日間比べる——という内容です。

これは研究計画書(Research Protocol)です。

論文の冒頭にそう書かれています。実施期間は2023年5月から2026年5月。つまり、この論文には結果が1つも載っていません。

「〜を明らかにする予定である」「〜と仮説を立てる」という文章で構成されています。

高齢者にバナナを配った試験——測ったのは自己記入の尺度だけ

インドネシアの研究です(文献3)。高齢者63名を対照群・バナナ130g群・バナナ260g群(各21名)に分け、14日間観察しました。不眠尺度(Insomnia Rate Scale)を開始前・7日目・14日目に測定し、260g群で2.50点低下したと報告されています。

抄録から読み取れるのは、ここまでです。

抄録には「pre and post-test control design(前後比較・対照群あり)」とだけ書かれており、盲検化したかどうか、対照群が何を食べたかは書かれていません。評価尺度は自己記入のもので、装置による測定は出てきません。

この論文はオンラインで全文を入手できませんでした(取り寄せれば読めます)。上に書いたのは、抄録に明記されている範囲だけです。

比べる相手がいないと、この幅は区別できません

不眠症の臨床試験で、偽薬を飲んだ群に何が起きるかを統合したメタ解析があります(文献9)。入眠までの時間は平均13.5分短縮しました。

しかも、脳波で測っても同じでした。睡眠ポリグラフでの短縮は13.7分です。著者らはこう結論しています。

客観的な測定であっても、プラセボ反応から守られるわけではない

これは偽薬を飲んだ群に起きた変化です。試験に参加して、何かを口にして、記録をつける——それだけで、この幅は動きます。

文献3で報告された低下が、バナナによるものか、この幅の中のものか。比べる相手を置いていない以上、分けられません。

著者の視点

「引用されている=確かめられている」ではありません。

今回いちばん驚いたのは、文献2でした。結果のない論文が、結果があるかのように引用されている。引用している側も、たぶんタイトルと抄録の冒頭しか見ていません。

孫引きは、内容ではなく形だけを運びます。タイトルと結論の一文だけが次の記事に移り、「結果がまだない」という肝心の部分は落ちる。それが何回か繰り返されると、確かめられていないものが、確かめられたことになります。

私自身、キウイの記事で1本たどりきれずに止まりました。人のことは言えません。それでも、開けば5分で分かることでした。

実践ポイント

  • 論文のタイトルに Research Protocol / Study Protocol とあれば、結果はまだありません
  • 「〜する予定である(will be)」で書かれていたら計画書です
  • 「対照群」と書いてあっても、何も食べない群似たものを食べる群かで意味がまったく違います
  • 自己記入の尺度だけの試験は、本人が何を食べたか知っている場合、期待の影響を分けられません

③「血中メラトニンが4倍」の話

バナナの記事で、たいてい出てくる数字があります。「バナナ2本で血中メラトニンが32→140 pg/mLに増えた」。

出どころはタイの研究です(文献4)。健康な男性12名に、オレンジ1kg分のジュース、パイナップル1kg分のジュース、またはバナナ2本を、1週間の間隔(洗い出し期間)をあけて順に摂取してもらい、血中メラトニンを測りました。

この数字自体は事実です。ただ、同じ論文の他の行を見ると、話が変わります。

果物摂取前120分後p値
オレンジ40 pg/mL151 pg/mL0.005
パイナップル48 pg/mL146 pg/mL0.002
バナナ32 pg/mL140 pg/mL0.008

バナナがいちばん低いのです。

そして、「寝る前にオレンジジュースを」「寝る前にパイナップルを」と勧める記事は、ほとんど見かけません。

もうひとつ。この試験は睡眠を測っていません。血中濃度と抗酸化能を測った研究です。眠れたかどうかは、この論文からは分かりません。

なお、この論文は掲載誌が有料のため、オンラインでは全文を確認できませんでした。上の数値は抄録に明記されている範囲です(取り寄せれば読めます)。

「8.9 pg/g」も、出どころをたどれませんでした

バナナのメラトニン量として、どの記事にも「生の果肉1gあたり8.9 pg」という数字が出てきます。

この数字が実際に書かれているのを確認できたのは、文献2でした。「バナナには生果1gあたり8.9±0.3 pgのメラトニンが含まれる」と本文にあります。ただし文献2は、これを文献3から引用したものとして示しています。

そこで文献3の抄録を見ましたが、この数値は出てきません。血中濃度を測った文献4の抄録にも、果実の含有量は書かれていません。

つまり、この数字がどこで測られたものなのか、私には確認できませんでした。

さらに、文献2には「バナナ2本(190g)で血中メラトニンが174 pg/mL上昇する」とも書かれています。しかし、その根拠にあたる文献4の抄録では、32 pg/mLから140 pg/mL——上昇幅は108 pg/mLです。数字が合いません。

仮に8.9 pg/gが正しいとして、計算します

確認できていない数値であることを承知のうえで、桁の感覚をつかむために計算します。

中くらいのバナナ1本は118g(文献7)。2本で236gです。

236g × 8.9 pg/g = 約2,100 pg = 約2 ng。

メラトニンの臨床用量は0.5〜5 mgです(文献5)。単位をそろえると 500,000〜5,000,000 ng。

バナナ2本のメラトニンは、その約24万〜240万分の1です。

他の果物と並べます。

メラトニン量(生果1gあたり)出どころ
バナナ(文献2に記載)8.9 pg/g一次資料を確認できず
タルトチェリー(文献5)1,350 pg/g(100gで0.135 µg)全文で確認済み
キウイ・よく引用される値(文献10)24,000,000 pg/g(24 µg/g)一次資料を確認できず

タルトチェリーは、睡眠用のサプリやジュースが実際に売られている果物です。そのタルトチェリーですら、臨床用量の3,700〜37,000分の1しかない——というのが、タルトチェリーのメタ解析を書いた研究者たち自身の指摘です(文献5)。

バナナは、そのタルトチェリーの約150分の1です。

いちばん下の行についても書いておきます。「キウイ24 µg/g」も、この記事では使いません。出どころのHattoriら1995年の論文(文献10)は掲載誌が廃刊で電子版がなく、原著を確認できていないからです。仮にこの値が正しいとすると、キウイはバナナの270万倍、タルトチェリーの約18,000倍メラトニンを含むことになります。

実践ポイント

  • pg・ng・µg・mgは1,000倍ずつ違います。表で並んでいたら、まず単位を見てください
  • 「血中の◯◯が増えた」は、「効いた」とは別の話です。何を測った試験かを確認してください
  • 「バナナには他の果物より多く」と書いてある記事は、その根拠となる比較試験を確認してください。同じ試験ではオレンジのほうが高く出ています
  • 食品のメラトニンでサプリの用量に届くものはありません

④トリプトファンの量でも説明できません

「バナナにはトリプトファンが多い」という説明もよく見ます。こちらも計算します。

トリプトファンの量
生バナナ100g(文献7)9 mg
中くらいのバナナ2本=236g約21 mg
臨床試験で使われる量(文献5)1,200〜2,400 mg

バナナ2本は、その約60〜110分の1にあたります。

なお、メラトニンのほうは「確認できない数値をもとにした計算」でしたが、こちらは違います。トリプトファン量はUSDAの成分データ、臨床用量はタルトチェリーのメタ解析の本文——どちらも一次資料で確認したものです。

参考までに、バナナ100gのタンパク質は約1.1 gです(文献7)。トリプトファンは、そのタンパク質を構成するアミノ酸のひとつにすぎません。

著者の視点

「トリプトファン→セロトニン→メラトニン」という説明は、経路としては正しいです。教科書に載っています。

問題は、「経路がある」ことと「食べた量で動く」ことが、別だという点です。経路の説明だけを聞くと、食べれば動きそうに思えます。でも実際にキウイで尿中のメラトニン代謝物を測った試験では、セロトニンの代謝物は増えたのに、メラトニンの代謝物は増えませんでした(文献6)。著者らは「メラトニンとは無関係な別の機序」の可能性を挙げています。

経路の図は、量の話をしてくれません。そこは自分で割り算するしかありません。

実践ポイント

  • 「◯◯が含まれている」と「◯◯の効果が出る量が含まれている」は別です
  • 気になる成分があったら、その成分の臨床用量を調べて、食品の含有量と割り算してみてください
  • トリプトファンのサプリを検討している方は、医薬品との相互作用があるため、主治医に確認してください

⑤それでも、バナナを食べる理由はあります

ここまで睡眠の話を削ってきましたが、バナナが良い食べ物であることは変わりません。

生バナナ100gあたりの成分です(文献7)。

成分100gあたり中くらい1本(118g)
エネルギー89 kcal105 kcal
カリウム358 mg422 mg
ビタミンB60.37 mg0.43 mg
食物繊維2.6 g3.1 g
マグネシウム27 mg32 mg
葉酸20 µg24 µg
ビタミンC8.7 mg10 mg

目を引くのはカリウムとビタミンB6です。中くらい1本で、カリウム422 mg、ビタミンB6 0.43 mg。皮をむくだけで食べられて、包丁もまな板もいりません。

(「他の果物より多い」という比較は、果物を横断して比べたデータを今回そろえていないため書きません。上の数値だけを示します。)

なお、「バナナのマグネシウムが睡眠にいい」という説明も見かけますが、その根拠となる試験を今回は確認していないため、この記事では扱いません。

著者の視点

睡眠の根拠が弱いことと、食べる価値がないことは別です。

バナナの利点は、成分より手軽さにあると思っています。値段が安定していて、季節に左右されず、洗う必要も切る必要もない。続かない食品に価値はありません。その点でバナナは強い。

ただ、「寝る前に」という条件を付ける理由は、今回の調べものからは出てきませんでした。朝でも昼でもかまいません。

実践ポイント

  • カリウム目的なら、時間帯は問いません
  • 腎機能が低下している方はカリウムに注意を。バナナ1本で422 mgあります。主治医の指示を優先してください
  • 血糖値が気になる方は、1本を分けて食べる・他の食品と一緒に食べるなどで調整してください
  • カリウムの多い食品は他にもあります。バナナが特別というより、手軽さが利点です

⑥バナナチップスは、別の食べ物です

白状すると、私が好きなのはこちらです。

同じUSDAのデータで、生バナナと市販のバナナチップスを並べます(文献7)。

100gあたり生バナナバナナチップス
エネルギー89 kcal519 kcal
脂質0.33 g33.6 g
飽和脂肪酸0.112 g29.0 g
糖類12.2 g35.3 g
カリウム358 mg536 mg
ビタミンB60.367 mg0.260 mg
食物繊維2.6 g7.7 g

カリウムが増えているように見えますが、これは水分が抜けて、重さあたりの密度が上がったためです。同じカロリーで比べると逆転します。

89 kcal分で比べると——生バナナ100gでカリウム358 mg。バナナチップスは約17gしか食べられないので、カリウムは約92 mgおよそ4分の1です。

そして飽和脂肪酸です。バナナチップスの飽和脂肪酸29.0 gのうち、最も多いのはラウリン酸(100gあたり14.9 g)で、これはココナッツ油の主成分です。揚げ油に由来します。

飽和脂肪酸29.0 gという量を、公的な基準と比べます。日本人の食事摂取基準(2025年版)は、18歳以上の飽和脂肪酸の目標量を総エネルギーの7%以下としています(文献8)。1日2,000 kcalなら約15 gです。

バナナチップス100gで、その約2日分にあたります。

著者の視点

書いていて、自分に刺さりました。

私はバナナチップスを「バナナの一種」だと思って食べていました。違いました。上の数値はUSDAが「Snacks, banana chips」として登録している製品のもので、脂肪酸の内訳を見るとラウリン酸が最も多く、揚げ油に由来すると分かります。なお、このバナナチップスのデータは測定が1991年のもので、現在の市販品と同じとは限りません。栄養の中身は、バナナよりお菓子に近い。

ただし、製品によって中身は違います。乾かしただけのものもあります。どちらなのかは、原材料表示を見ないと分かりません。

やめようとは思いません。お菓子だと分かって食べればいいだけです。困るのは「果物だから健康的」と思ったまま量が増えることで、分類を間違えると、量の歯止めがきかなくなります。

実践ポイント

  • 原材料表示を見てください。植物油脂・砂糖が入っていれば、それは揚げ菓子です
  • 「ノンフライ」「砂糖不使用」の乾燥バナナなら別物です。表示で確認できます
  • 果物の代わりにはなりません。お菓子の枠で数えてください
  • 一度に食べる量を決めて、袋のまま食べない——これだけで違います

試すなら、この条件で

「バナナを食べれば眠れる」の根拠は弱い、というのがこの記事の結論です。そのうえで、試すこと自体を止める理由もありません。

内容
実際に使われたのは130g・260g(文献3)。300gは結果の出ていない計画書の数字です(文献2)
タイミング決まった根拠はありません。朝でも夜でも
期間バナナを食べた試験は14日間(文献3)。4週間は皮のエキスの試験(文献1)
期待できる方向睡眠より、カリウムとビタミンB6

実践ポイント

  • 「2週間試して、変わらなければやめる」——期限を決めるほうが判断できます
  • 記録をつけると、それだけで眠りは良くなります。「良くなった=バナナのおかげ」とは限りません
  • バナナはアレルギーの原因になることがあります。ラテックスアレルギーのある方は交差反応に注意
  • 腎機能が低下している方は、自己判断で増やさないでください
  • 不眠が続くときは、食べ物で対処しようとしないでください。医療機関にご相談ください

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まとめ

「バナナを食べると眠れる」を、比較対照を置いて確かめた試験は見つかりませんでした。

盲検・プラセボ対照でおこなわれた試験は今回見つかった限り1本だけで、バナナの実ではなく皮のエキス。その試験では、入眠潜時・中途覚醒・総睡眠時間・深睡眠・REM睡眠のすべてでプラセボと差がありませんでした。

よく引用される「バナナ+深呼吸」の論文は研究計画書で、結果がありません。高齢者の試験は、盲検化の有無も対照群の処置内容も抄録に書かれておらず、評価は自己記入の尺度だけです。

「血中メラトニンが4倍」は事実ですが、同じ試験ではオレンジとパイナップルのほうが高く出ています。そして、その試験は睡眠を測っていません。

量で見ると、トリプトファンは臨床用量の約60〜110分の1です。メラトニンのほうは約24万〜240万分の1という計算になりますが、もとにした8.9 pg/gという値自体、出どころを確認できていません。

それでもバナナは良い食べ物です。カリウム422 mg、ビタミンB6 0.43 mg(中くらい1本)。皮をむくだけで食べられます。睡眠のためではなく、そのために食べてください。

そしてバナナチップスは、お菓子です。私も、そう分かったうえで食べ続けます。


医療に関する注意

本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。紹介した研究は対象・人数・期間が限られ、盲検化の有無が確認できないもの、企業が実施したもの、結果がまだ出ていない研究計画書も含まれます。すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。不眠が続く場合、日中の生活に支障がある場合は、食品で対処しようとせず医療機関にご相談ください。睡眠薬を服用中の方は、自己判断で中止・減量しないでください。バナナはアレルギー(口腔アレルギー症候群)の原因となることがあり、ラテックスアレルギーのある方は交差反応に注意が必要です。腎機能が低下している方はカリウム摂取について、糖尿病で食事療法中の方は果物の量について、主治医にご確認ください。


【使用文献】

文献1|Lee HC, Lin YK, Lin YH, Chan ST, Chiang CF. Banana Peel Extract (Happy Banana®) Promotes Circadian Rhythm Regulation and Sleep Health: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Clinical Trial. Journal of Depression & Anxiety. 2025;14:569. DOI: 10.35248/2167-1044.25.14.569. ClinicalTrials.gov NCT05130359 https://www.longdom.org/open-access-pdfs/banana-peel-extract-happy-banana-promotes-circadian-rhythm-regulation-and-sleep-health-a-randomized-doubleblind-placeboc.pdf (DSM-5で不眠症と診断された成人50名に、バナナの実ではなく皮の抽出物200mg/日を就寝2時間前に4週間投与した二重盲検プラセボ対照試験。客観的な睡眠指標はいずれもプラセボ群と有意差なし。本研究は製品を製造販売する企業の研究開発センターが実施しており、責任著者も同社所属

文献2|Sakharkar SN, Shinde RK, Ankar RS, Raut AR, Mude DV, Gujar SS. Comparing the Combination of Banana Consumption and Deep Breathing Exercises with Banana Consumption alone and Deep Breathing Exercises alone in the Management of Sleep Deprivation, Anxiety, and Depression among Postmenopausal Women: A Research Protocol. Journal of Clinical and Diagnostic Research. 2024;18(4):LK01-LK04. DOI: 10.7860/JCDR/2024/67867.19336 (研究計画書であり、結果は含まれていない。実施期間は2023年5月〜2026年5月と記載。本文中の「バナナは生果1gあたり8.9±0.3 pgのメラトニンを含む」「バナナ2本=190gで血中メラトニンが174 pg/mL上昇する」はいずれも文献3を出典としているが、文献3の抄録にこれらの数値は見当たらず、後者について文献4の抄録が示す上昇幅は108 pg/mLである

文献3|Panurywanti EE, Wiboworini B, Indarto D. The effect of banana dose and duration on the decrease of sleep disorders in the elderly. Journal of Medical and Allied Sciences. 2021;11(1):71-76. DOI: 10.5455/jmas.134020 (高齢者63名を対照群・バナナ130g/日群・バナナ260g/日群(各21名)に分け14日間観察。260g群で不眠尺度が2.50点低下と報告。抄録には「前後比較・対照群あり」とのみ記載され、盲検化の有無と対照群の処置内容は書かれていない。評価は自己記入の尺度による。オンラインから全文を入手できなかった[取り寄せによる入手は可能と思われる])

文献4|Sae-Teaw M, Johns J, Johns NP, Subongkot S. Serum melatonin levels and antioxidant capacities after consumption of pineapple, orange, or banana by healthy male volunteers. Journal of Pineal Research. 2013;55(1):58-64. DOI: 10.1111/jpi.12025 (健康な男性12名に、オレンジ1kg分・パイナップル1kg分のジュースまたはバナナ2本を摂取させ、血清メラトニンを測定したクロスオーバー試験。本試験は睡眠を測定していない。また、抄録に果実中のメラトニン含有量(8.9 pg/gなど)の記載はない。掲載誌が有料のためオンラインから全文を入手できなかった[取り寄せによる入手は可能と思われる])

文献5|Stretton B, Eranki A, Kovoor J, Bacchi S, Gupta A, Maddern G, Boyd M. Too Sour to be True? Tart Cherries (Prunus cerasus) and Sleep: a Systematic Review and Meta-analysis. Current Sleep Medicine Reports. 2023;9:225-233. DOI: 10.1007/s40675-023-00261-w (タルトチェリーと睡眠に関する8試験のシステマティックレビューとメタ解析。生果100g相当のメラトニンとトリプトファンは臨床用量に遠く及ばないことから、著者らは「いずれも直接の機序ではない」と述べている。本記事はこの臨床用量の数値を引用している)

文献6|Kanon AP, Giezenaar C, Roy NC, McNabb WC, Henare SJ. Acute effects of fresh versus dried Hayward green kiwifruit on sleep quality, mood, and sleep-related urinary metabolites in healthy young men with good and poor sleep quality. Frontiers in Nutrition. 2023;10:1079609. DOI: 10.3389/fnut.2023.1079609 (キウイ摂取後の尿を測定した試験。セロトニン代謝物5-HIAAは有意に増加した一方、メラトニン代謝物aMT6sには処置による効果を認めなかった。著者らは「メラトニンとは無関係な別の機序が関与している可能性」を挙げている)

文献7|USDA FoodData Central. Bananas, raw(FDC ID 173944)/Snacks, banana chips(FDC ID 168849) https://fdc.nal.usda.gov/food-details/173944/nutrients / https://fdc.nal.usda.gov/food-details/168849/nutrients (本文の成分表はこのデータベースによる。いずれもUSDA公式サイトから100gあたりの値を直接取得して確認した。バナナチップスの飽和脂肪酸で最も多いのはラウリン酸14.9 g/100g。ただしバナナチップスの成分は測定年が1991年であり、現行の市販品と一致する保証はない

文献8|厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書.2024年10月 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001396865.pdf (飽和脂肪酸の目標量は18歳以上で総エネルギーの7%以下。「高LDLコレステロール血症の主な要因の一つであり、循環器疾患や肥満のリスク要因でもある」として設定されている)

文献9|Perlis ML, et al. Do Placebos Primarily Affect Subjective as Opposed to Objective Measures? A Meta-Analysis of Placebo Responses in Insomnia RCTs. Behavioral Sleep Medicine. 2023;21(4). DOI: 10.1080/15402002.2022.2115046. PMID: 36094215 (不眠症のランダム化比較試験でプラセボ群に生じる変化を統合したメタ解析。著者らは「客観的測定はプラセボ反応から守ってくれるようには見えない」と結論している)

文献10|Hattori A, Migitaka H, Iigo M, Itoh M, Yamamoto K, Ohtani-Kaneko R, Hara M, Suzuki T, Reiter RJ. Identification of melatonin in plants and its effects on plasma melatonin levels and binding to melatonin receptors in vertebrates. Biochemistry and Molecular Biology International. 1995;35(3):627-634. PMID: 7773197 (「キウイのメラトニンは24 µg/g」という値の出どころはこの論文にたどり着く。掲載誌はすでに刊行されておらず電子版が公開されていないため、執筆時点でオンラインからは原著を入手できず、数値と単位を確認できていない。そのため本記事ではこの数値を使用していない


瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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