インスリンが効きにくくなると、食後に血糖値が下がりにくくなり、高血糖の状態が続きやすくなります。健常者を対象とした研究では、たった一晩の睡眠制限(4時間睡眠)でもインスリン感受性が低下し、肝臓での糖産生が増加することが確認されています(Donga E et al., J Clin Endocrinol Metab. 2010;95(6):2963-8. PMID: 20371664)。
2. ストレスホルモン(コルチゾール)が増加する
睡眠不足になると交感神経が活性化し、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌が増えるとされています。睡眠制限により交感神経活性化・夕方のコルチゾール上昇が生じることが報告されています(Hirotsu C et al., Sleep Sci. 2015;8(3):143-152. PMC: 4688585)。コルチゾールは肝臓での糖新生を促進してインスリンの働きを阻害するため、血糖値が上がりやすくなると考えられています。
3. 食欲ホルモンのバランスが崩れる
一部の研究では、睡眠不足が食欲を増進させるグレリンを増加させ、食欲を抑制するレプチンを減少させることが報告されています(Spiegel K et al., Ann Intern Med. 2004;141(11):846-50. PMID: 15583226)。ただし研究によって結果が異なり、エビデンスはまだ一致していない部分もあるとされています。食事量が増えやすくなることで、血糖コントロールがさらに難しくなる可能性も考えられています。
睡眠時間が短い人では2型糖尿病のリスクが高まることを示す研究が複数報告されています。短睡眠がインスリン抵抗性と有意に関連することがシステマティックレビューで示されています(Singh T et al., Cureus.2022. DOI: 10.7759/cureus.23501. PMID: 35494895)。
Q1. 睡眠不足が続くと血糖値はどう変わりますか? A. 睡眠不足が続くと、インスリン感受性が低下してインスリンが効きにくくなり、血糖値が上がりやすくなることが複数の研究で報告されています。一部の研究では食欲ホルモンにも影響が出ることが報告されており、食事量が増えやすくなる可能性も考えられています。こうした要因が重なることで、血糖コントロールがさらに難しくなることも考えられています。
Q2. 何時間寝れば血糖値への悪影響を防げますか? A. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することが推奨されています。ただし個人差があるため、日中に眠気が出ない・すっきり目覚められることを目安にすることも大切とされています。判断に迷う場合は医療機関にご相談ください。
Q3. 糖尿病の方は睡眠に特に気をつけるべきですか? A. はい、血糖コントロールと睡眠は互いに影響し合うとされており、糖尿病をお持ちの方は特に睡眠の質に注意することが勧められています。睡眠の問題(いびき・夜中に何度も目が覚めるなど)が続く場合は、担当医に相談してみてください。
Q4. 一晩の睡眠不足でも血糖値に影響しますか? A. 研究では、たった一晩の睡眠制限でもインスリン感受性が低下することが報告されています(Donga E et al., 2010)。慢性的でなくても、睡眠不足が重なると影響が出やすくなると考えられています。判断に迷う場合は医療機関へご相談ください。
Q5. 健康診断で血糖値は正常でも、睡眠不足に気をつけた方がいいですか? A. はい。健常者を対象とした研究でも、たった一晩の睡眠制限でインスリン感受性が低下することが確認されています(Donga E et al., 2010)。現在の血糖値が正常でも、慢性的な睡眠不足が将来の糖尿病リスクに関係すると考えられているため、予防の観点からも睡眠を意識することが勧められています。
Q6. 睡眠を改善すれば血糖値は下がりますか? A. 睡眠の質・量を改善することで血糖コントロールが改善したという研究報告もあるとされています。ただし効果には個人差があり、すでに血糖値が高い方や糖尿病の方は、睡眠改善だけで対処しようとせず、必ず主治医にご相談ください。
Donga E, van Dijk M, van Dijk JG, et al. A single night of partial sleep deprivation induces insulin resistance in multiple metabolic pathways in healthy subjects. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95(6):2963-2968. PMID: 20371664
Singh T, Ahmed TH, Mohamed N, et al. Does Insufficient Sleep Increase the Risk of Developing Insulin Resistance: A Systematic Review. Cureus. 2022;14(3):e23501. DOI: 10.7759/cureus.23501. PMID: 35494895
Spiegel K, Tasali E, Penev P, Van Cauter E. Brief communication: Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Ann Intern Med. 2004;141(11):846-850. PMID: 15583226
Hirotsu C, Tufik S, Andersen ML. Interactions between sleep, stress, and metabolism: From physiological to pathological conditions. Sleep Sci. 2015;8(3):143-152. PMC: 4688585
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