連休が明けて、体重計に乗る。増えている。
検索すると「3日で戻すリセット法」という言葉が並びます。
この記事では、その根拠とされている研究を1本ずつ開いて確かめました。先に申し上げておくと、測った研究が出している増加量は、思われているよりずっと小さいものでした。そして「3日で戻る」という数字の出どころは、見つけられませんでした。
そもそも、連休で何キロ増えるのか
まず、実際に測った研究を見ます。
26年前の2000年に報告された研究では、195名の体重を6〜8週間おきに4回測っています。対象は、米国の感謝祭から元日までの休暇シーズンです。なお、この195名は便宜的に集められた標本で、国民を代表するように選ばれたものではありません。
| 期間 | 体重の変化 |
|---|---|
| 休暇前(9月下旬〜11月中旬) | +0.18 kg(有意な差ではない) |
| 休暇中(11月中旬〜1月中旬) | +0.37 kg(有意な差) |
| 休暇後(1月〜2月下旬) | −0.07 kg(有意な差ではない) |
論文はこう結論しています。「休暇中の体重増加は、一般に言われているより小さい」
2017年の総説でも、成人の増加は0.4〜0.9 kgと報告されています。総説は、この増加が一貫して観察されたとしています。
ここで、大事な前提があります。どちらの研究も、調べたのは約1か月半から2か月にわたる休暇シーズンです。前者は11月中旬から1月中旬、後者は11月最終週から1月上旬。ゴールデンウィークは5〜7日。長さが1桁違います。
著者の視点: 「連休で2〜3 kg増えた」という話はよく聞きます。ただ、1か月半から2か月かけて測った研究でも1 kg未満でした。体重計の数字がそれ以上動いているなら、別のものを見ている可能性があります。
実践ポイント
- 測った研究が出している数字は、1か月半から2か月で1 kg未満です
- この幅を大きく超えて動いていたら、まず測定条件と前日の食事を疑ってください
- 測るなら、朝・排尿後・同じ服装で。条件をそろえないと比べられません
増えた分の正体は、何なのか
体重計の数字を動かしているものとして、よく挙げられるのがグリコーゲンです。糖質を貯蔵している形で、水分と一緒に蓄えられます。
根拠として引かれるのは、1992年の報告です。グリコーゲンは水を含んだ形(水分は3〜4倍)で、肝臓・筋肉・脂肪細胞に貯蔵されると記されています。
ただし、この文献の性格には注意が要ります。
- 34年前の報告です
- 2ページの補遺であって、通常の原著論文ではありません
- 調べたのは11名・4日間です
- そして、連休の体重増加を調べた研究ではありません。超低カロリー食のダイエット中に、体組成の推定が歪む、という話です
つまり、「増えた分は水分」という説明の土台は、思ったより細いということになります。
著者の視点: 説明としては筋が通っています。糖質を多くとれば貯蔵が増え、水も一緒に増える。ただ、しくみが正しいことと、それが連休の体重増加に当てはまることは別です。この論文が見ていたのは、超低カロリー食で体重を落としている最中の体でした。連休で食べ過ぎた体とは、向きが逆です。
実践ポイント
- 糖質を多くとった翌日の増加は、水分の可能性があります
- 著者の視点として、1日のうちでも体重は動きます。前日と比べて一喜一憂しないほうが現実的です
- 「水分だから大丈夫」と決めつけず、数週間後にどうなっているかを見てください
「3日で戻る」は、どこから来たのか
ここが、この記事でいちばん確かめたかったところです。
「2〜3日で戻る」という数字の出典を探しましたが、見つけられませんでした。
そのうえで、測った研究が何と言っているかを見ます。
2000年の研究では、休暇後の6〜8週間で −0.07 kg しか減っていません。有意な差ではありません。同じ研究は、9月下旬から翌2月下旬までの正味で +0.48 kg の増加を報告し、春から夏にかけても元に戻らなかったとしています。
2017年の総説では、減量に取り組んでいる肥満のある人でも、休暇中に0.3〜0.9 kg増えたと報告されています。ただし総説は「有意な研究とそうでない研究がある」と付け加えています。
「3日で戻る」を支える研究は、見つかりませんでした。むしろ、測った研究では、休暇後の6〜8週間に有意な減少が見られませんでした。
著者の視点: 「3日で戻す」と書いてある記事はたくさんあります。ただ、その3日という数字がどこから来たのかを示している記事を、私は見つけられませんでした。書きやすい数字だから書かれている、という可能性を考えています。
実践ポイント
- 日数を目標にしないでください。「◯日で戻す」の根拠は確認できませんでした
- 数日で戻らなくても、やり方が悪いわけではありません
- 戻ったかどうかは、数日ではなく数週間の幅で見てください
日本の連休を測った研究はあるのか
ここまで紹介したのは、どちらも米国の、1か月半から2か月におよぶ休暇シーズンの話です。
では、日本のゴールデンウィークを測った研究はあるのか。探しました。
1本だけ見つかりました。2016年に医学誌に載った短報で、米国・ドイツ・日本の3か国を対象にしています。
ただし、この記事では使いません。理由が3つあります。
ひとつめ。読めませんでした。購読者限定で、短報のため要旨も公開されていません。中身を確認できないものは引用できません。
ふたつめ。著者の1名は、体重計メーカーに所属しています。論文に記載されている所属を確認しました。測定機器を売っている会社が関わっている研究ということになります。
みっつめ。中身が読めない以上、この研究の限界も分かりません。誰を対象にしたのか、どれくらいの期間なのか、どう選ばれた人たちなのか。確認できないものを「日本のデータ」として紹介することはできません。
結果として、日本の連休について私が確認できたデータは、ありません。
著者の視点: 無いものを「ある」ように書かないほうが、読者の役に立つと考えています。連休の記事に外国の数字が並んでいるのは、当てはめられる日本の数字がないからでもあります。
実践ポイント
- 「連休で◯kg増える」と書いてあったら、どの国の、何週間の休みの数字かを見てください
- 日本の連休を測ったデータは、この記事では確認できませんでした。外国の数字を自分に当てはめるときは、その分を差し引いて読んでください
- 出典が書かれていない数字は、いったん保留にしてください
元の生活に戻すと、どうなるのか
では、何をすればいいのか。
ここで、さきほどの研究をもう一度見ます。
2000年の研究で、休暇前の期間(9月下旬〜11月中旬)の体重変化は +0.18 kg で、有意な差ではありませんでした。普段の生活を送っているあいだ、体重はほとんど動いていません。
動いたのは、休暇中だけです。
つまり、戻すべきものは「特別な何か」ではなく、動く前の生活そのものということになります。
ただし、ここは正確に書きます。同じ研究で、参加者は休暇のあと普通の生活に戻っています。それでも体重は戻りませんでした。休暇後の6〜8週間で −0.07 kg、春や夏になっても元に戻っていません。
この研究が示しているのは、「元の生活に戻せば体重も戻る」ではありません。「元の生活に戻ると、それ以上は増えなくなった」です。この2つは違います。
2017年の総説には、これを裏側から示す報告があります。減量に取り組んでいた人たちでも、休暇中は体重が増えました(0.3〜0.9 kg)。ただし、有意な研究とそうでない研究があるとされています。そのうえで読むなら、特別に努力していた人でも、そのときの生活の影響は受けたということになります。
著者の視点: 私自身、連休明けに体重が増えていて焦ったことがあります。結局、元の生活に戻すだけでよかった、というのがそのときの結論でした。特別なリセット法を足すより、連休で変わっていたものを戻すほうが早いと考えています。
実践ポイント
- 足すのではなく、戻す。連休中に変わったもの(食事の量・時間・飲酒・活動量)を元に戻してください
- ただし、戻せば減るとは示されていません。示されているのは「それ以上増えなくなる」までです
- 極端な制限をしないでください。著者の視点として、戻すべきは普段の生活であって、普段より厳しくする根拠はありません
記録すれば防げる、とは限りません
連休対策として、体重を毎日記録することがよくすすめられます。
2017年の総説には、これに関わる報告があります。
意欲的に自己記録をしていた人たちでも、休暇中に体重は 0.4〜0.6% 増えました(p<0.001)。
同じ総説は、電話や毎日のメールで働きかけるプログラムが体重増加を防ぐように見えた、とも書いています。ただし「情報は限られている」と付け加えています。
この2つは、対象が違います。
| 何をしていたか | 結果 |
|---|---|
| ひとりで記録していた人 | 0.4〜0.6% 増えた(p<0.001) |
| 電話・メールで働きかけるプログラム | 防ぐように見えた(情報は限られている) |
記録という行為が同じでも、誰かが関わっているかどうかで結果が分かれています。
記録そのものを否定する話ではありません。ただ、この数字からは、「記録していれば増えない」とまでは言えない、という読み方ができます。
著者の視点: ここは、記事の書き方に関わる部分でもあります。「毎日記録しましょう」と書いたうえで、記録の道具を勧める記事は多くあります。ところが、その根拠として挙げられている研究が、記録していた人も増えたと報告していることがある。引用元まで開くと、話が違って見えることがあります。
実践ポイント
- 記録は、増減を知るためには役に立ちます
- ただし記録していれば増えない、とは示されていません
- 著者の視点として、毎日の数字に反応するより、週単位の傾向を見るほうが振り回されずに済みます
それで、連休明けに何をするか
ここまでを整理します。
増える量は、思われているより小さい。1か月半から2か月の休暇を測った研究で、0.37 kg。別の総説では0.4〜0.9 kgでした。
ただし、小さいからといって消えるわけではありません。秋から冬にかけての正味 +0.48 kg は、春や夏になっても戻りませんでした。そこから2000年の研究は、この増加が成人期の体重増加に寄与していると考えられると結論しています。1年で0.5 kgでも、積み上がれば別の話になります。
増えた分の一部は水分です。ただしその根拠は、11名・4日間の補遺論文です。そして、6〜8週間たっても戻らなかったということは、残った分は水分ではなかったということでもあります。
「3日で戻る」の根拠は見つかりませんでした。測った研究では、休暇後の6〜8週間に有意な減少が見られませんでした。
日本の連休のデータは、確認できませんでした。
戻すのは、特別な何かではなく、元の生活です。
著者の視点: 今回いちばん意外だったのは、支えている論文が少なく、しかも細かったことです。柱になる2本は、26年前と34年前でした。それなのに、「3日で戻す」という具体的な数字だけが、出どころのないまま出回っています。言い切ってある記事ほど、後ろにあるものは薄いことがある。連休の体重にかぎらず、健康の情報を読むときの構えとして、お渡しできるのはそこだと思っています。
実践ポイント
- 日数を決めて戻そうとしないでください
- 1回の連休より、毎年繰り返すことのほうが問題です。戻らないまま次の連休を迎えていないか、年単位で見てください
- 体重が数週間たっても戻らない、あるいは増え続ける場合は、次の項目を確認してください
医療に関する注意
この記事は、査読を経た研究をもとに情報を整理したものであり、診断や治療の指針を示すものではありません。
特定の食事法や器具が、体重を減らしたり病気を防いだりすることを示すものではありません。紹介した研究はいずれも限られた人数・期間で行われたもので、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
この記事が扱っているのは、成人の体重です。紹介した総説では、子どもでBMIパーセンタイルに影響が見られず(−0.4%)、大学生でも体重の変化は有意ではありませんでした(0.1 kg)。総説自身が「子ども・思春期・大学生については、正確な結論を出すには研究が少なすぎる」としています。成長期の方は、体重の増減について自己判断せず、保護者や医療機関にご相談ください。
次のような場合は、食事や運動を変える前に医療機関にご相談ください。
- 意図していないのに体重が減っている
- 短期間に急激に体重が増えた
- むくみをともなって体重が増えた(心臓・腎臓・甲状腺の病気が隠れていることがあります)
- 強い疲労感やだるさが続いている
体重や食事のことを考えると強くつらくなる方へ。過去に摂食障害を経験された方、体重の数字にとらわれやすい方にとって、「何日で戻す」「毎日記録する」といった助言は負担になることがあります。この記事の内容を無理に実行する必要はありません。つらさが続く場合は、精神科・心療内科や、かかりつけの医療機関にご相談ください。
持病のある方、薬を服用中の方、妊娠中・授乳中の方は、体重や食事について自己判断で大きく変えず、主治医や管理栄養士にご相談ください。
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使用文献
- Yanovski JA, Yanovski SZ, Sovik KN, Nguyen TT, O’Neil PM, Sebring NG. A prospective study of holiday weight gain. N Engl J Med. 2000;342(12):861-867.(公的資金による研究です/米国NIH) https://europepmc.org/articles/PMC4336296
- Díaz-Zavala RG, Castro-Cantú MF, Valencia ME, Álvarez-Hernández G, Haby MM, Esparza-Romero J. Effect of the Holiday Season on Weight Gain: A Narrative Review. J Obes. 2017;2017:2085136.(本記事では抄録に記載されている範囲のみを引用しています/公的資金による研究です) https://europepmc.org/articles/PMC5514330
- Kreitzman SN, Coxon AY, Szaz KF. Glycogen storage: illusions of easy weight loss, excessive weight regain, and distortions in estimates of body composition. Am J Clin Nutr. 1992;56(1 Suppl):292S-293S.(本記事では抄録に記載されている範囲のみを引用しています/資金源・利益相反は確認できていません) https://doi.org/10.1093/ajcn/56.1.292s
本記事では使用していませんが、本文で言及した文献
- Helander EE, Wansink B, Chieh A. Weight Gain over the Holidays in Three Countries. N Engl J Med. 2016;375(12):1200-1202.(購読者限定で要旨も公開されておらず、内容を確認できなかったため使用していません/著者の1名の所属は Withings 社) https://doi.org/10.1056/NEJMc1602012
※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。


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