ナッツは1日何グラム?15〜20gで頭打ちになる研究を保健学博士が解説

動脈硬化ケア

ナッツは体にいい。そう聞いて、間食を素焼きのナッツに替えた方は多いと思います。一方で、カロリーが高いこともよく知られています。毎日食べて大丈夫なのか。どのくらいまでならいいのか。

先に答えを書いておきます。研究で差が出ていたのは、1日15〜20グラムあたりまで。それより多く食べても、上積みはほとんど見られませんでした。

この記事で分かることを、先に4つ書きます。

  • 研究で差が出ていたのは、1日15〜20グラムあたりまで。それ以上では上積みがほとんどなかった
  • 20グラムの小袋は、エネルギーにして122〜143キロカロリー
  • 「脂質の種類がいい」の中身は、ナッツごとに違う
  • ナッツと脳卒中・認知症の関係は、研究によって結果が分かれている

ナッツは1日何グラム?研究で差が出ていた量

20の研究をまとめた解析

ナッツを食べる量と、病気や死亡との関係を調べた研究は数多くあります。そのうち20の研究をまとめた解析(文献1)が、量によって結果がどう変わるかを調べました。

結果は、量が増えるほどリスクが下がり続ける、という単純な形ではありませんでした。全死亡では、少ない量のところで大きく下がり、1日15〜20グラムを超えると、それ以上は下がらなくなっていました。心血管の病気でも、およそ15グラムまでで低下が見られ、それより多い量での上積みはありません。冠動脈疾患では、15〜20グラムを超えたあとの低下は「わずか」でした。

論文自身も、ほとんどの病気で、低下の大部分は1日およそ15〜20グラム、または週5〜6回分までで見られた、とまとめています。著者らは、それ以上の低下を示す根拠が乏しいとして、1日20グラムを計算の基準に使いました。

「食べれば長生きする」という意味ではない

この解析に入っているのは、ふだん食べている量を調べ、その後の経過を追いかけた観察研究です。ナッツを食べてもらって比べた試験ではありません。

論文は限界として、ナッツをよく食べる人に共通する傾向を挙げました。たばこを吸わない、やせ型、よく体を動かす、赤身肉や加工肉が少なく、果物と野菜が多い。こうした生活習慣の違いが、結果に入り込んでいる可能性があるということです。もっとも、喫煙や運動、体格、食事の内容で調整した研究でも、関連は残っていたと報告されています。

ですから、ここから言えるのは「20グラムで病気が防げる」ではなく、「多く食べるほど良い、という形ではなかった」ということになります。

私は、ナッツを毎日のように食べています。食塩無添加の小袋を、小腹がすいたときに。

実践ポイント
  • 目安は1日20グラム前後。研究では、それより多く食べても上積みはほとんど見られていません
  • 「体にいいから多めに」は、この解析からは出てきません。増やすより、いまの量を守るほうに目を向けてください

20グラムの小袋は、どのくらいの量か

1日20グラムとは、どのくらいなのか。国の食品成分表(文献2)から、食塩を加えていない3種類のナッツについて、20グラムあたりの値を出しました。成分表は100グラムあたりの値なので、20グラムへの換算はこちらで計算しました。

20グラムあたりエネルギー食物繊維
アーモンド(いり・無塩)122 kcal2.2 g
くるみ(いり)143 kcal1.5 g
らっかせい(大粒種・いり)123 kcal2.3 g

小袋1つで、122〜143キロカロリー。いちばん高いのはくるみで、脂質もほかの2つより多く含まれます。

食物繊維は1.5〜2.3グラム。国の食事摂取基準(文献3)では、食物繊維の1日の目標量は、50〜64歳の女性で18グラム以上、男性で22グラム以上。20グラムのナッツで、女性の目標量の1割前後にあたる計算です。

動脈硬化への効果は、自分では実感できません。ただ、便通には良さそうだと感じています。

食物繊維がとれる、というところまでは成分表で確かめられます。便通への効果そのものは、この記事では調べていません。

私も、小袋にしています。

実践ポイント
  • 大袋から食べると、量が分からなくなります。小袋を選ぶか、20グラムを先に取り分けてから食べてください
  • 買うときは「食塩無添加」の表示を確かめてください。味付けのナッツには、食塩が加えられています

日本人は、どのくらい食べているのか

20グラムという量は、日本人がふだん食べている量と比べるとどうでしょうか。

日本のある地域で、35歳以上の約3万人を追いかけた研究があります(文献4)。1992年に食事を調べたところ、ナッツを食べる量の平均は、男性で1日1.8グラム、女性で1.4グラム。そのおよそ8割はピーナッツでした。

20グラムは、この平均の10倍以上にあたります(こちらの計算です)。ただし30年以上前の調査で、今の日本人の量ではありません。

この研究の男性では、ナッツを最も多く食べていたグループのほうが、最も少なかったグループより全死亡が少ない結果でした。著者らは、少ない量でも死亡リスクの低下と関連していた、とまとめています。

実践ポイント
  • ふだんナッツをほとんど食べない方は、少量からで構いません。全死亡では、少ない量のところで下がり方が大きくなっていました(文献1)
  • 20グラムを毎日食べなければ、と考えなくて大丈夫です。文献1も「週5〜6回分まで」という言い方をしています

「脂質の種類」はナッツごとに違う

私がナッツを食べるようになったのは、18年ほど前に、地中海式の食事が動脈硬化に良いという論文を読んだのがきっかけです。

ナッツもオリーブ油も、脂肪酸の8〜9割が不飽和

ナッツやオリーブ油は「脂質の種類がいい」とよく言われます。成分表(文献2)で、脂肪酸の内訳を確かめました。割合の計算は、成分表の値をもとにこちらで行いました。

脂肪酸の内訳不飽和うち一価うち多価飽和
アーモンド92%68%24%8%
くるみ90%15%75%10%
らっかせい81%51%31%19%
オリーブ油86%78%8%14%

どれも、脂肪酸の8〜9割が不飽和脂肪酸。ここは、よく言われているとおりでした。

ところが、中身はナッツごとに違います。アーモンドはオリーブ油に近く、一価不飽和脂肪酸が中心。くるみは多価不飽和脂肪酸が75パーセントを占め、n-3系の脂肪酸も20グラムあたり1.79グラム含まれます。アーモンドとらっかせいには、n-3系はほとんど入っていません。なお、アーモンドの値は成分表の推定値です。

試験で確かめられている程度が違う

では、どちらの脂肪が体にいいのか。ここは、確かめられている程度に差があります。

飽和脂肪を多価不飽和脂肪に置き換えた無作為化試験を8つまとめた解析(文献5)では、冠動脈疾患が19パーセント少なくなっていました。飽和脂肪を減らす試験を15まとめた解析(文献6)でも、心血管の病気の合計が21パーセント少なくなっています。ただ、文献6では、全死亡と心血管による死亡にはほとんど差が出ていません。

一方、一価不飽和脂肪への置き換えはどうか。文献5は、発表の時点でそれを試した無作為化試験はなかった、と書いています。文献6も、データが非常に限られているとして、効果を「不明」としました。

もう1つ、大事な点があります。文献5と文献6は、ナッツを食べてもらった試験ではなく、脂肪の置き換えの試験です。「ナッツを食べれば、この効果が出る」とまでは言えません。

地中海式の食事にナッツを足した試験

ナッツを使った試験もあります(文献7)。ただし、ナッツだけを食べてもらった試験ではなく、地中海式の食事と組み合わせた試験です。心血管の病気のリスクが高い55〜80歳の7,447人を、3つのグループに分けました。地中海式の食事にエキストラバージンオリーブオイルを足すグループ、ミックスナッツを足すグループ、そして脂肪を減らすよう助言を受けるグループです。

心筋梗塞・脳卒中・心血管による死亡が起きたのは、ナッツのグループで3.4パーセント、オリーブオイルのグループで3.8パーセント。助言のグループは4.4パーセントでした。

この試験は、2013年に発表された論文が、いったん取り下げられました。一部の施設で、決められた方法どおりにグループを振り分けていなかったことが分かったためです。2018年に分析をやり直して再発表され、結論の言い方も「減らした」から「割り付けられた人で低かった」に変わっています。

一価不飽和脂肪が中心のオリーブオイルを足したグループも、ナッツのグループと同じように低い結果です。ですから、一価不飽和脂肪は効かない、とは言えません。言えるのは、試験で確かめられている程度が違う、というところまでです。文献1も、この試験で効いたのが地中海式の食事なのか、ナッツなのか、その組み合わせなのかは分からない、と書いています。

実践ポイント
  • ナッツの種類を1つに決める必要はありません。どれも脂肪酸の8〜9割が不飽和です
  • くるみを混ぜると、多価不飽和脂肪とn-3系の脂肪酸が入ります
  • ナッツは「足す」より「置き換える」形で。文献5と文献6が調べたのも、飽和脂肪からの置き換えでした

ナッツで脳卒中や認知症は防げる?10年追った研究

最近、ナッツと認知機能についての研究が報じられました(文献8)。脳卒中のない1,742人のデータで、ナッツを多く食べる人ほど、認知機能の検査の点数が高いという関連が出ています。

ただし、これは同じ時点で、食べる量と点数を測った結果です。同じ研究では、10年間追いかけた分析も行われました。その10年間に、脳卒中が49件、認知症が61件起きました。ナッツを食べる量と、これらの発症とのあいだに、関連は見られませんでした。

研究者自身も、この結果を「予備的なもの」と書き、ナッツは認知機能に「役立つ可能性がある」という言い方にとどめています。

実践ポイント
  • 認知症を防ぐ目的で、ナッツの量を増やす根拠はありません
  • いま20グラム前後を食べている方は、そのままで構いません

まとめた解析と日本の研究で、はっきり出た病気が違う

ナッツと脳卒中については、研究によって結果が分かれています。

20の研究をまとめた文献1では、ナッツを多く食べる人で冠動脈疾患がはっきり少なくなっていました。脳卒中は、量が増えるごとの計算でははっきりした差が出ていません。量の形で見ると、1日10〜15グラムあたりまでは低下が見られています。

一方、日本の45〜74歳、7万4,793人を追いかけた研究(文献9)では、ピーナッツを多く食べる人で脳卒中が少なく、虚血性心疾患でははっきりした差が出ていません。

はっきり出た病気が、入れ替わっています。どちらの論文も、この違いの理由は示していません。この記事でも、理由の推測はしないでおきます。

共通していることもあります。どちらの研究でも、「食べるほど悪くなる」という結果は出ていません。文献1では、脳卒中で1日30グラムのあたりにわずかな上向きが見られました。ただ、発症と死亡に分けて見ると、この上向きは見られませんでした。

実践ポイント
  • 脳卒中か心臓か、どちらを防ぎたいかで量を変える根拠はありません
  • 20グラム前後を超えて増やす理由は、文献1の結果からは出てきません

医療に関する注意

この記事は、査読を受けた論文と国の資料をもとにした一般的な情報です。診断や治療を目的としたものではありません。

  • ナッツを食べたあとに、口のかゆみ、じんましん、息苦しさなどが出た場合は、食べるのをやめて医療機関を受診してください。ナッツは、アレルギーを起こすことがある食品です
  • 腎臓の働きが落ちていて、カリウムやリンを制限されている方は、主治医か管理栄養士にご相談ください。20グラムあたりのカリウムは、アーモンド148ミリグラム、くるみ108ミリグラム、らっかせい152ミリグラム(文献2をもとに計算)
  • 食塩を制限されている方は、食塩無添加の表示を確かめてください
  • この記事で紹介した研究の多くは観察研究で、ナッツが病気を防ぐことを示したものではありません

まとめ

ナッツは、どのくらい食べればいいのか。

研究で差が出ていたのは、1日15〜20グラムあたりまで。それより多く食べても、上積みはほとんど見られていません。量を増やす必要はなく、小袋1つ、20グラムが目安です。

脂質の中身はナッツごとに違うので、種類を1つに決める必要もありません。いつもの小袋を、いつもの量で。それが、この記事の答えです。

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【資金源・利益相反について】文献1・文献5・文献6・文献8は、公的な研究機関や財団、国際機関から研究費を受けています。そのうえで文献5の筆頭著者は、食品企業や食品業界の団体を含む複数の組織から、講演などの謝礼を受けていることを開示しています。

文献4・文献7・文献8・文献9については、利益相反の開示を確認できませんでした。文献7は、資金源の一部も確認できていません。資金の偏りがあるかどうかを、この記事では判断できていません。

瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。

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