帰省したら親が痩せていた|体重減少の目安と受診の判断を保健学博士が解説

季節の変わり目・連休

久しぶりに実家に帰って、玄関で親を見た瞬間に「あれ」と思う。去年より、小さくなった気がする。

でも本人は「歳だからね」と笑う。滞在は2泊3日。明日には、帰らなければいけません。

この記事では、厚生労働省が後期高齢者の健診で使っている質問票をもとに、目安になる数字と、滞在中に確かめられることを整理します。

半年ぶりだから、気づけました

結論から書きます。間隔が空いていることは、弱みではありません。

毎日そばにいる家族は、少しずつの変化に気づけないことがあります。同じ顔を毎日見ているからです。

半年、あるいは1年ぶりに会う人は、その間の変化をまとめて受け取ります。だから「あれ」と思える。

著者の視点:私自身、実家には半年に1回ほどしか帰りません。両親が後期高齢者になってから、「痩せたな」と思うようになりました。予防が専門でも、短い滞在では分かりません。そこは正直に書いておきます。この記事も、原因を言い当てるものではありません。

実践ポイント

「気のせいかな」で流さないでください。久しぶりに会った人の「あれ」は、拾う価値があります。

まず、去年の写真を探してみてください。並べると、記憶より確かです。

目安は「6か月で2〜3kg」です

数字の線引きがあります。厚生労働省の質問票に、そのまま書かれています。

後期高齢者の健診では、15項目の質問票が使われています(文献1)。フレイルなど高齢者の特性をふまえて、健康状態を総合的に把握するためのものです(文献1)。

(後期高齢者とは、75歳以上の方を指します。著者による補足です。)

その6問目が、これです。

6か月間で2〜3kg以上の体重減少がありましたか ①はい ②いいえ(文献1)

この質問の目的も、資料に明記されています。

低栄養状態のおそれを把握する(文献1)

この設問は、「基本チェックリスト」から採用されたものです(文献1)。なぜ2〜3kgなのか、どの研究から出た数字なのかは、この資料には書かれていません。そこは分からないまま使っている、と正直に書いておきます。

そして、こう説明されています。

低栄養は筋肉量の減少から体重減少をきたす(文献1)

資料には、体重減少があるとどうなるかも載っています。体重減少がある人は、ない人に比べて、2年後に要介護状態になるリスクが1.61倍高い。この数字は、文献1が引用している国内の追跡研究(Makizako H, Shimada H, et al. BMJ Open. 2015)のものです。私はこの原著を開いていません。文献1に紹介されている数字として書いています。

著者の視点:1.61倍が何のリスクなのかを、正確に受け取ってください。これは要介護状態になるリスクであって、死亡やがんのリスクではありません。健康記事では、この種の数字がよく取り違えられます。私が数字を見るとき、いちばん先に確かめるのは「何のリスクか」です。

もう一つ。これは、体重が減った人と減らなかった人を追いかけて比べた研究です。「体重が減ったから要介護になった」と示したものではありません。体重が減る背景には、すでに何かが起きていることが多いからです。それでも、減っていることに気づけば、その「何か」を探しにいけます。

実践ポイント

この6か月で、2〜3kg以上減っていませんか。本人に、そのまま聞いてください。

体重計がなければ、服やベルト、指輪、入れ歯の合い具合でも見当がつきます。「ズボンがゆるくなった」は、拾うべきひと言です。

著者の視点として補足すると、実家に体重計がないなら、置いてくるのがいちばん確実です。次に帰るまでの半年、記録が残ります。

本人は、気づいていないことが多いです

「歳だから」と本人が言うのは、隠しているからではありません。本当に気づいていないことがあります。

厚生労働省の資料に、こう書かれています。

低栄養は本人が自覚しにくく、気づかないうちに進行していることが多いため、体重減少はよい指標となる(文献1)

「自覚しにくい」と、国の資料が書いているのです。だから体重という、目に見える数字を指標にしている。

資料は、聞き取りのポイントとして「意識して減らしているのか(ダイエット等)、無意識のうちに減少しているのかを確認する」ことを挙げ、「やせ型でかつ無意識に減少している場合は特に注意が必要である」としています(文献1)。

著者の視点:ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。本人の「大丈夫」は、嘘ではありません。気づいていないだけかもしれない。だから「大丈夫って言ってたし」で終わらせないでほしいのです。逆に言えば、本人が否定しても、家族が見た変化には意味があります。

実践ポイント

聞き方を、ひとつだけ変えてみてください。

「痩せた?」ではなく「体重、最近はかった?」と聞く。前者は否定されて終わりますが、後者は数字の話になります。

減らそうとしているのか、勝手に減っているのか。ここだけは、はっきりさせてください。

75歳から、フレイルの割合が変わります

「後期高齢者になってから気になりだした」という感覚には、データの裏づけがあります。

文献1に、フレイル(加齢によって予備能力が落ち、回復力が下がった状態。要介護に至る前の段階とされています)の年齢別の割合が載っています。文献1が引用している国内の調査(Shimada H, Makizako H, et al. J Am Med Dir Assoc. 2013、対象5,104人)のものです。

年齢 フレイルの割合
65〜69歳 5.6%
70〜74歳 7.2%
75〜79歳 16%
80歳以上 34.9%

74歳までと、75歳からで、倍以上ちがいます。

フレイルの判定に使われる基準(J-CHS基準)も、文献1に載っています。

①体重減少(6か月で2〜3kg以上の減少)②筋力低下(握力:男性26kg未満、女性18kg未満)③疲労感(訳もなく疲れたような感じがする)④歩行速度(秒速1.0m未満)⑤身体活動(週1回以上の定期的な運動)——3つ以上でフレイル、1〜2つでプレフレイル(文献1)

1つ目が、体重減少です。先ほどの「6か月で2〜3kg」と同じ数字が使われています。

著者の視点:この表を見て、私は自分の実感が気のせいでなかったと知りました。ただし、これは観察された割合であって、「75歳になったらこうなる」という話ではありません。80歳以上でも、6割以上は該当していない。そこも一緒に読んでください。なお握力の基準値は、別の学会の基準(AWGS 2019。日本サルコペニア・フレイル学会が公表しているもので、詳しくは記事末尾の「夏に筋肉量が減った?」で扱っています)では男性28kg未満とされていて、数値が一致していません。家庭で握力を測る機会は少ないので、この記事では体重と歩く速さに絞ります。

実践ポイント

親が75歳を超えているなら、見る目を少し変えてください。「まだ元気だから」の“まだ”が、通用しにくくなる年齢です。

ただし、不安になるためではありません。気づける機会が半年に1回しかないなら、その1回を使うだけです。

滞在中に確かめられる8つのこと

短い滞在でも、確かめられることがあります。健診でプロが使っている質問票が、手がかりになるからです。

先に、断っておきます。この質問票が想定しているのは、健診の場、通いの場、かかりつけ医の医療機関です(文献1)。家族が使うことは、想定されていません。

それでも、聞いている中身そのものは、一緒に過ごせば確かめられるものです。判定するためではなく、受診をすすめるかどうかの手がかりとして使ってください。

後期高齢者の質問票は15問。そのうち8問は、帰省中の会話と食卓で確かめられます。

質問(文献1より) 滞在中にできること
6か月で2〜3kg以上減ったか 本人に聞く。服のゆるみでも
1日3食きちんと食べているか 一緒に食事をする
半年前に比べて固いものが食べにくいか 食卓で分かる
お茶や汁物でむせることがあるか 食卓で分かる
以前に比べて歩く速度が遅くなったか 一緒に歩く
この1年間に転んだことがあるか 聞く
週に1回以上は外出しているか 聞く
体調が悪いときに、身近に相談できる人がいるか 聞く

歩く速さについて、文献1には具体的な確かめ方が示されています。

“青信号で横断歩道を渡れるか”など、日常生活に支障がないかを確認する(文献1)

そして、遅くなった理由を分けることも求めています。

息切れによって歩行が遅くなったのか、膝や腰の痛みによって遅くなったのかを確認する(文献1)

著者の視点:この8問を、面接のように聞く必要はありません。一緒にごはんを食べて、一緒に買い物に行けば、半分は分かります。むせるかどうか、固いものを避けていないか、横断歩道を渡りきれるか。「観察しに行く」のではなく、「一緒に過ごす」だけでいい。そこがこの質問票のよくできているところだと思っています。

実践ポイント

滞在中に、この3つだけでもやってみてください。

1|一緒に食事をする。むせないか、固いものを避けていないか、残していないか。

2|一緒に歩く。横断歩道を、青のあいだに渡りきれるか。息切れか、痛みか。

3|「体調が悪いとき、すぐ相談できる人はいる?」と聞く。離れて暮らしているなら、ここがいちばん大事です。

「痩せた=がん」ではありません

先に、はっきりさせておきます。体重が減ったからといって、重い病気とは限りません。

文献1は、体重減少があったときの対応を、原因ごとに分けています。

考えられること(文献1) 対応
欠食・食事がとれていない 配食弁当や食材の宅配、日持ちのする食品(缶詰等)
気分がすぐれない、抑うつの可能性 心の健康状態の項目に戻って確認
ダイエット中 無理な内容になっていないか確認
それ以外(疾病が原因と考えられる) かかりつけがあれば相談。未受診なら医療機関の受診をすすめる

欠食の理由も挙げられています。独居、家庭内環境、高齢者世帯による孤立、生活機能の低下、経済的困窮や食事準備の不具合(文献1)。

病気だけが原因ではない、ということです。買い物に行けない、ひとりで食べるのがつまらない、作るのが億劫。そういうことでも体重は減ります。

著者の視点:臨床にいたころ、がんなどで急激に痩せていく方を何人も見てきました。だからこそ、区別して書いておきたいのです。あのときの「急激な痩せ」と、半年で2〜3kgは、速さがまったく違います。この記事で扱っているのは後者です。「痩せた=がん」と読まないでください。ただし——だからといって放っておいていい、という話でもありません。速さにかかわらず、原因を確かめる価値はあります。

実践ポイント

まず、食べられているかを見てください。食べているのに減っているのか、食べていないから減っているのか。ここで話が変わります。

食べていない場合は、理由を1つだけ聞いてください。「買い物?」「作るのが大変?」「ひとりだと食べる気にならない?」。理由によって、できることが違います。

帰る前の、声のかけ方

言い方があります。厚生労働省の資料が、面談の心得として書いていることです。

高齢になると「できないこと」に目が向きやすいため、「悪いところを見つけて指摘する」面談にならないようにする(文献1)

「今の時点でも健康であるということ」「こんなにやれていることがある」というメッセージを伝える(文献1)

これは保健師や医療者に向けて書かれたものですが、家族が伝えるときにも、そのまま当てはまります。

著者の視点:帰り際に「痩せたから病院行って」と言うと、たいてい「大丈夫だって」で終わります。心配は伝わりますが、行動には変わりません。だからこそ、文献1が求めている順番——できていることを先に言う——が効くのだと思います。「毎日ちゃんと歩いてるのすごいね。ついでに、体重だけ先生に診てもらってきてよ」。この言い方は、資料をもとに私が考えた例です。

実践ポイント

帰り際に、この2つを。

1|できていることを、先に言う。「よく歩いてるね」「ちゃんと3食食べててえらい」。

2|次の受診の予定を、その場で聞く。「次、病院いつ?」。決まっているなら「そのとき体重のことも言ってみて」で足ります。新しく受診させるより、はるかに実現します。

離れていても、できること

帰ったあとにできることが、いくつかあります。

文献1が挙げている対応のうち、離れていても手配できるものを並べます。

できること 中身
配食サービス 文献1が挙げている対応の1つ。自治体が扱っている場合もある
食材の宅配 買い物に行けないことが理由なら、これで変わる
日持ちのする食品を置いてくる 缶詰など(文献1)
地域包括支援センター 親の住む地域にある。家族からの相談も受けています

著者の視点:「地域包括支援センター」は、まだ介護保険を使っていない人には縁遠く感じるかもしれません。でも、家族が離れて暮らしていて心配だ、という相談で構いません。親の住む市区町村名と「地域包括支援センター」で調べれば出てきます。本人が動かなくても、家族から相談できます。

実践ポイント

帰りの電車のなかで、1つだけ調べてください。「(親の市区町村名) 地域包括支援センター」。

いま連絡しなくても構いません。番号を知っているかどうかで、次に何かあったときの速さが変わります。

次に帰るまでに、電話で聞けることも決めておいてください。「ごはん食べてる?」より「今日は何食べた?」のほうが、状況が分かります。

こうなったら、受診をすすめてください

迷ったときの線引きです。

  • 6か月で2〜3kg以上、体重が減っている(文献1)
  • 本人に、減らそうとした心当たりがない
  • もともと痩せている人の体重が、さらに減っている(文献1が「特に注意」としている状況)
  • 食べているのに減っている
  • むせる、固いものを避けるようになった
  • 横断歩道を、青のあいだに渡りきれない

著者の視点:この線引きは、「当てはまったら病気」という意味ではありません。臨床にいたころ、いちばんもったいないと思ったのは、気づいていたのに、受診が遅れたという話でした。目安は、受診を迷う時間を短くするためにあります。当てはまらなくても、気になるなら行っていいのです。

かかりつけ医があるなら、そこで足ります。新しい病院を探す必要はありません。文献1も、まずかかりつけへの相談をすすめています。

実践ポイント

「体重が半年で◯kg減っています」と伝えてください。それだけで、医師は必要な検査を判断できます。

著者の視点として補足します。強い痛み、血が混じる、急に食べられなくなった、といった変化があるときは、目安を待たずに受診してください。これは文献1にある記述ではなく、臨床で優先される変化として書いています。

まとめ

  • 半年ぶりだから気づけた。間隔が空いていることは、弱みではありません
  • 目安は「6か月で2〜3kg以上」。厚生労働省が後期高齢者の健診で使っている質問票の数字です
  • 低栄養は本人が自覚しにくいと、国の資料が書いています。「大丈夫」で終わらせないでください
  • 75歳から、フレイルの割合が倍以上になります(70〜74歳 7.2% → 75〜79歳 16%)
  • 15問のうち8問は、一緒に食べて、一緒に歩けば確かめられます
  • 「痩せた=がん」ではありません。買い物・調理・ひとりの食事でも、体重は減ります
  • 伝えるときは、できていることを先に。「次の受診のときに、体重のことも言ってみて」で足ります
  • 帰りの電車で、地域包括支援センターの番号だけ調べておいてください

この記事では、痩せた理由までは突き止められません。それは会って診てもらわないと分かりません。でも、確かめる入口までは、半年に1回の帰省でも持って帰れます。

医療に関する注意

この記事は、公的機関の資料をもとに情報を整理したものであり、診断や治療の指針を示すものではありません。

体重減少の原因は、ここに挙げたものだけではありません。数日の滞在で、家族が原因を判断することはできません。

紹介した「6か月で2〜3kg」は、低栄養のおそれを拾うための目安です。「これ以下なら安全」「これ以上なら病気」という線ではありません。

気になる変化があるときは、目安にあてはまるかどうかにかかわらず、かかりつけ医にご相談ください。

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【使用文献】

文献1 厚生労働省「後期高齢者の質問票の解説と留意事項」(別添)(2026年8月14日閲覧) mhlw.go.jp(PDF)

【引用についての注記】本文中の「要介護状態の発生リスク1.61倍」「フレイルの年齢別割合」「J-CHS基準」は、いずれも文献1に紹介されている数字です。それぞれの原著(Makizako H, Shimada H, et al. BMJ Open. 2015;5(9):e008462/Shimada H, Makizako H, et al. J Am Med Dir Assoc. 2013;14(7):518-524/フレイル診療ガイド2018年版)は、今回は取得していません。原著にあたると、条件や解析の詳細が異なる可能性があります。

瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。

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