トマトは血圧・コレステロールにいい?リコピンの働きと食べ方を保健学博士が解説

動脈硬化ケア

赤いトマトを見ると、なんとなく体に良さそうな気がします。あの色の正体はリコピンという成分で、実際に血圧やコレステロールとの関連が調べられてきました。

先に結論をお伝えします。トマト・リコピンの摂取は、血圧の低下と関連することが比較的一貫して報告されています。コレステロールへの働きは研究によって結果がばらつき、まだ確定的ではありません。そして意外なのが食べ方です。生よりも、加熱して油と一緒にとる方が、リコピンは体に取り込まれやすいことがわかっています。

私は小さい頃からトマトが好きです。畑からもいできたトマトを洗って、そのまま食べる。あの味は格別でした。今はさすがにできませんが、夏のトマトのおいしさは変わらず、毎日食べています。

だからこそ、期待を込めすぎないように気をつけながら、いま分かっていることを査読論文をもとに整理します。


リコピンとは何か:色素であり、抗酸化物質

リコピンは、トマトやスイカ、ピンクグレープフルーツなどに含まれる赤い色素です。カロテノイドと呼ばれる成分群のひとつですが、β-カロテンと違ってビタミンAには変換されません。体内では、主に抗酸化物質として働きます。

動脈硬化は、血管の壁に入り込んだLDLコレステロールが酸化されることが引き金のひとつになります。リコピンはこの酸化を抑える方向に働くと考えられており、そこから「血管に良いのでは」という研究が積み重ねられてきました。

著者の視点: 前提として押さえておきたいことがあります。リコピンは「血圧の薬」でも「コレステロールの薬」でもありません。抗酸化という間接的な働きから、血管に良い方向の変化が期待されている——その距離感で読むのが正確だと考えています。

実践ポイント

  • リコピンはトマトのほか、スイカ・ピンクグレープフルーツ・柿などにも含まれる
  • サプリメントより、まずは食品からとるのが基本
  • 効果を期待して一度に大量にとるより、日常的に食べ続けるほうが理にかなっている

血圧:比較的一貫して「下がる方向」と報告されている

トマト・リコピンの効果でもっとも根拠がそろっているのが血圧です。

トマトやリコピンの補給が心血管リスク因子に与える影響をまとめたシステマティックレビュー・メタ分析では、血圧・血中脂質・血管内皮機能に良い方向の作用がみられました(文献1)。近年、複数のメタ分析を統合したアンブレラレビューでも、血圧の改善は質の高い研究で一貫して確認された一方、脂質については結果がばらついたと整理されています(文献2)。

このアンブレラレビューでは、目安となる量にも触れています。1日5〜30mgのリコピン、量にすると生のトマト1〜2個ぶんに相当します。特別に多く食べる必要はない、というのが実際のところです。

著者の視点: 「トマトで血圧が下がる」と聞くと大げさに感じますが、下がり幅そのものは大きくありません。ただ血圧は、わずかな差でも長期的には心血管リスクと関わってきます。薬の代わりにはならない。けれど、毎日の食事に置く価値はある。私はそう受け止めています。

実践ポイント

  • 目安は1日リコピン5〜30mg(生のトマト1〜2個ぶん)。無理のない量で十分
  • 血圧の薬を飲んでいる方も、食事としてのトマトは基本的に問題なし。ただし治療の代わりにはならない
  • 降圧薬を服用中で心配な方は、主治医に一度確認を

コレステロール:条件つきで、まだ結論は出ていない

期待されがちなコレステロールについては、正直に言うと結果がまとまっていません。

初期のメタ分析では、1日25mg以上という比較的多めのリコピンをとった試験に限って、総コレステロールとLDLコレステロールの低下が示されていました(文献3)。一方、近年のアンブレラレビューでは脂質への影響は研究間でばらつきが大きく、確実性は低いと評価されています(文献2)。対象者によっても反応が違い、高血圧のある人では総コレステロールの低下が、糖尿病や肥満のある人ではHDLや中性脂肪の改善がみられた、という報告もあります。

つまり「誰にでもLDLが下がる」とは言えない段階です。

著者の視点: LDLを下げたいと相談を受けたとき、私がトマトを第一手として挙げることはありません。脂質の質を変える、水溶性食物繊維を増やす——先に効くものがはっきりしているからです。トマトは、その土台の上に置く一品だと考えています。

実践ポイント

  • LDL対策としてトマトに期待しすぎない。土台は脂質の質と食物繊維
  • コレステロールが気になる方は、まず食事全体を見直す(詳しくは末尾の関連記事へ)
  • トマトは食事に足す一品。コレステロールの薬や治療の代わりにはならない

「効かなかった」試験もある

期待できる話ばかりでは公平ではないので、うまくいかなかった研究も紹介します。

英国で行われたランダム化比較試験では、やや太めの健康な中年男女に、トマト加工品(リコピン1日32〜50mg相当)またはリコピンのサプリメント(1日10mg)を12週間とってもらいました(文献4)。かなり多い量です。ところが、血中脂質・血圧・炎症マーカーといった代表的な心血管リスク指標に、意味のある変化は認められませんでした

著者らは「もともと健康な中年でリスク指標が正常範囲にある人では、トマトやリコピンを増やしても、これらの指標を下げる効果は乏しい」と結論づけています。

著者の視点: この結果は、むしろ納得のいくものだと感じています。血圧やコレステロールが正常な人で、そこからさらに下がることは考えにくい。効果が出やすいのは、値が高めの人です。「トマトを食べれば誰でも数値が良くなる」ではなく、もともとの状態によって反応が違う——ここは正直に押さえておきたい点です。

実践ポイント

  • 健診の値が正常なら、トマトで数値が大きく動くことは期待しにくい
  • それでも食べる意味はある(野菜全体の摂取・食習慣の質という観点)
  • 数値を下げたい方は、まず基本(減塩・体重・運動・脂質の質)から

更年期以降の女性では、複数の指標が動いた

一方、対象を絞ると別の景色が見えてきます。

台湾で行われたランダム化試験では、過体重の閉経後女性60名(45〜70歳)を2群に分け、8週間の食事介入を行いました(文献5)。トマト群では、いつもの野菜のうち2皿ぶんを生のトマトに置き換え、朝食と昼食で食べてもらっています。その結果、対照群と比べて、体脂肪量・体脂肪率・腹囲・総コレステロール・中性脂肪・収縮期血圧・血糖が低く、HDLコレステロールは高いという差がみられました。

先ほどの「効かなかった」試験と比べると、対象がまったく違います。もともと代謝の指標が乱れている人ほど、変化が出やすいという構図です。

著者の視点: この研究が私にとって興味深いのは、サプリではなく生のトマトを、いつもの野菜と置き換えた点です。何かを足すのではなく、入れ替えるだけ。無理なく続けられる形だと思います。更年期以降は、女性ホルモンの変化で脂質や血圧が動きやすくなる時期です。その時期の食事に、こうした選択肢があるのは心強いと感じます。

実践ポイント

  • 研究では、いつもの野菜2皿ぶんをトマトに置き換えて朝食・昼食に。野菜の総量は変えずに真似できる形
  • 対象は過体重の閉経後女性60名(45〜70歳)の研究。すべての人に同じ結果とは限らない
  • トマトばかりに偏らせる必要はない。野菜全体の量を保ったうえで、その一部をトマトに

死亡・脳卒中との関連:観察研究では良い方向

ここまでは介入試験の話でした。長期の観察研究では、もう少し大きな数字が並びます。

疫学研究28本をまとめたメタ分析では、リコピンの摂取量や血中濃度が高い人ほど、脳卒中のリスクが26%、総死亡が37%、心血管疾患が14%低い方向に関連していました(文献6)。

ただ、この数字は慎重に読む必要があります。観察研究なので、因果関係までは示せません。リコピンをよくとる人は、野菜全体をよく食べ、運動もし、喫煙も少ない——そうした生活習慣ごとの差が、数字に反映されている可能性が十分にあります。

著者の視点: 「トマトで死亡リスクが37%下がる」という切り取り方は、しばしば見かけます。でも、この数字が示しているのは、あくまで関連です。トマトを食べる生活には、たいてい他の良い習慣も伴っている。私はそこも含めて「野菜をよく食べる暮らしの一部」として読むのが誠実だと思っています。

実践ポイント

  • 大きな数字ほど、観察研究かどうかを確かめるクセを
  • トマト単体ではなく、野菜の多い食事全体を目指す
  • 「これさえ食べれば」という発想からは、いったん離れる

食べ方が結果を変える:生より「加熱+油」

ここが、この記事でいちばん実用的な部分です。

リコピンは脂溶性で、しかも細胞の中に閉じ込められています。そのままでは吸収されにくい。1992年の古典的な研究では、加熱して油と一緒に調理したトマトジュースを飲んだときだけ血中のリコピンが増え、未加熱のジュースでは増えなかったと報告されています(文献7)。加熱によって細胞壁がこわれ、油に溶け出すことで、体に取り込まれやすくなるためです。

つまり、生のトマトをそのまま食べるより、オリーブ油で炒める・煮込む・トマトソースにする方が、リコピンという点では効率的です。加工品であるトマトジュースやトマト缶も、この観点では有利になります。

著者の視点: 私自身の食べ方が変わったのが、まさにこの点でした。もいだトマトをそのままかじる——あの記憶が強いぶん、トマトは生で、と思い込んでいました。でもリコピンをねらうなら加熱と油です。とはいえ、夏の生のトマトのおいしさは代えがたいですし、ビタミンCや水分という良さもあります。私は今も、生で食べる日と、スープや炒め物にする日を分けています。どちらが上という話ではなく、目的で使い分ければいい。そう考えています。

実践ポイント

  • リコピンをねらうなら加熱+油。オリーブ油で炒める、スープや煮込みにする
  • トマト缶・トマトジュース(食塩無添加)も手軽で効率的な選択肢
  • 生のトマトも良い。ビタミンCなど、加熱で失われやすい栄養を取りたいときに
  • 加塩タイプのトマトジュースは塩分に注意。血圧目的なら「食塩無添加」を選ぶ

注意しておきたいこと

体に良い食品でも、条件によっては気をつけたい点があります。

トマトはカリウムを多く含みます。健康な方には問題になりませんが、腎機能が低下してカリウム制限を受けている方は、量について主治医に確認してください。また、極端に大量のリコピンをとり続けると、皮膚がうっすらオレンジがかることがあります(健康被害ではなく、摂取を控えれば戻ります)。

サプリメントについても一言。研究の多くは食品としてのトマトやリコピンを扱っており、高用量サプリメントの長期的な安全性が確立しているわけではありません。

著者の視点: 「体に良い」と聞くと、つい量を増やしたくなります。でも栄養は、足せば足すほど良いというものではありません。トマトも同じです。毎日ひとつ、無理なく続く量。それが結局いちばん効きます。

実践ポイント

  • 腎臓病でカリウム制限のある方は、量を主治医に確認
  • サプリメントより食品から。高用量サプリの長期安全性は未確立
  • 加塩のトマトジュース・トマト加工品は、塩分表示を見る習慣を

まとめ

トマトに含まれるリコピンは、血圧の低下と比較的一貫して結びついています。コレステロールへの働きは条件によってばらつき、まだ結論は出ていません。観察研究では脳卒中や死亡リスクの低さとの関連も示されていますが、これは因果ではなく、生活習慣全体を映した数字として読むのが妥当です。

そして、いちばん実用的なのは食べ方です。リコピンをねらうなら、生より加熱して油と一緒に。目安は1日トマト1〜2個ぶん。特別なことは何も要りません。

今日の食事に、トマトをひとつ足すところから始めてみてください。

医療に関する免責事項

本記事は、査読済みの学術論文をもとにした一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の診断・治療・予防を推奨したり、医師その他の医療専門職による助言に代わるものではありません。紹介した研究は対象や条件が限られており、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。高血圧・脂質異常症・糖尿病などで治療中の方、腎臓病でカリウム制限を受けている方は、食事内容を大きく変える前に主治医や管理栄養士にご相談ください。トマトの摂取は薬物治療の代わりになるものではありません。

瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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主な参考資料

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  4. Thies F, Masson LF, Rudd A, et al. Effect of a tomato-rich diet on markers of cardiovascular disease risk in moderately overweight, disease-free, middle-aged adults: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2012;95(5):1013-1022. DOI: 10.3945/ajcn.111.026286
  5. Chen CY, Chien YW. Fresh tomato (Lycopersicon esculentum Mill.) in the diet improves the features of the metabolic syndrome: a randomized study in postmenopausal women. Biology (Basel). 2024;13(8):588. DOI: 10.3390/biology13080588. PMC11351368
  6. Cheng HM, Koutsidis G, Lodge JK, Ashor AW, Siervo M, Lara J. Lycopene and tomato and risk of cardiovascular diseases: a systematic review and meta-analysis of epidemiological evidence. Crit Rev Food Sci Nutr. 2019;59(1):141-158. DOI: 10.1080/10408398.2017.1362630. PMID: 28799780
  7. Stahl W, Sies H. Uptake of lycopene and its geometrical isomers is greater from heat-processed than from unprocessed tomato juice in humans. J Nutr. 1992;122(11):2161-2166. DOI: 10.1093/jn/122.11.2161. PMID: 1432255

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