連休明けの腸内環境|食物繊維で戻るのか、誰に効くのかを保健学博士が解説

季節の変わり目・連休

連休が明けると、お腹の調子がいつもと違う。食べ過ぎた自覚もある。そんなとき、「腸活」という言葉が目に入ります。

食物繊維をとる。発酵食品をとる。サプリで補う。どれももっともらしく見えます。

この記事では、その根拠とされている研究を1本ずつ開いて確かめました。先に申し上げておくと、腸内環境は確かに食事で変わります。ただし、同じものを食べても同じようには変わりません。

腸の中の細菌は、思われているより少ない

「腸内細菌は100兆個、重さは1〜2キロ」。よく見る数字です。

2016年に、新しい推計が出ています。

体重70 kgを基準にした推計では、体内の細菌は約38兆個。ヒトの細胞は約30兆個で、比は1.3対1と計算されました。論文は「文献にある10対1や100対1という値は、およそ1対1という値に置き換えるべきだ」と書いています。ただし「より正確な測定ができるようになるまでは」という条件つきです。

重さのほうは、さらに差があります。細菌の総重量は約0.2 kg。体重の0.3%ほどです。

この論文が名指しで置き換えを求めたのは、比のほうです。「100兆個」「1〜2キロ」という言い方そのものを否定したわけではありません。ただ、示された推計値とは大きく離れています。

著者の視点: 数字が大きいほど、話は劇的になります。「100兆個の細菌があなたを支配している」と書けば、記事は読まれるでしょう。ただ、その数字が10年前に訂正されていることまで確かめている記事は、あまり見かけません。

実践ポイント

  • 腸活の記事を読むときは、まず入口の数字を疑ってみる
  • 「100兆個」「1〜2キロ」と書いてあれば、その記事の情報は古い可能性があります
  • 数字の大きさと、実際の重要さは別ものです

食事を変えると、腸の中は確かに変わります

数は思ったより少なくても、変わりやすさは本物です。

2014年に報告された研究があります。参加者にとってもらったのは、動物性の食品だけの食事と、植物性の食品だけの食事。それを短期間続けて、腸内細菌がどう変わるかを調べました。

結果は、細菌群集の構造が変わったというものでした。さらに、細菌の遺伝子発現については、食事による違いが個人差を上回ったと報告されています。

動物性の食事で増えたのは、胆汁に強い菌でした。減ったのは、植物の多糖を分解する菌です。

もうひとつ、この研究が指摘していることがあります。動物性の食事でBilophila wadsworthiaという菌が増えた点です。著者らは、脂質と胆汁酸、そして炎症性腸疾患を結ぶ可能性に言及しています。

ここで区別しておきたいことがあります。数日で動くのは、細菌の構成です。このあと出てくる酪酸のような代謝産物や、検査値の変化を調べた試験は、いずれも2週間や12週間という長さで組まれています。構成が動くことと、体に何かが起きることは、時間の単位が違います。

著者の視点: 連休の食事は、まさにこの「動物性に寄った食事」です。焼肉、揚げ物、飲酒。数日でも腸の中が動くという話には、実験的な裏づけがあります。ただし、この研究が調べたのは細菌の構成であって、体調ではありません。

実践ポイント

  • 「連休の食べ過ぎで腸が乱れる」という話には、実験的な裏づけがあります
  • ただし数日で動くのは細菌の構成です。お腹の張りやだるさ、検査値が動くかまでは示されていません
  • 変わりやすいということは、戻りやすいということでもあります

食物繊維は、種類によって結果が違います

では、何を食べれば戻るのか。ここで話が単純ではなくなります。

2019年に報告された試験があります。健康な若年成人174名を対象に、2週間、3種類の発酵性食物繊維を比べたものです。

先に断っておきます。この試験が与えたのは食品ではありません。飲んだのは、市販の精製粉末を水に溶かしたものです。量は、じゃがいも由来で1日28〜34 g。とうもろこし由来で20〜24 g、イヌリンで20 gでした。ふつうの食事から摂れる量ではありません。

与えた粉末腸内細菌の構成酪酸(短鎖脂肪酸)
じゃがいも由来のレジスタントスターチ変わったもっとも増えた
とうもろこし由来のレジスタントスターチ変わった有意に増えなかった
チコリ根由来のイヌリン変わった有意に増えなかった

酪酸は短鎖脂肪酸のひとつで、腸のバリアを保つ働きなどが調べられている物質です。

3種類とも細菌の構成は変えました。ところが酪酸が増えたのは、じゃがいも由来のものだけでした。

なお、この研究は食物繊維サプリメントを販売している企業からの資金提供を受けています(大学と研究財団の資金も入っています)。論文は「競合する利害はない」と宣言しています。

著者の視点: 同じ「発酵性食物繊維」でも、腸の中で起きることは違いました。ただし、この試験が調べたのは粉末です。あとで出てくるプロバイオティクスの試験を「サプリだから」と割り引くなら、この試験も同じだけ割り引く必要があります。自分の主張に都合のいい研究だけを別扱いしないよう、ここは書いておきます。

実践ポイント

  • 「食物繊維」とひとくくりにせず、何から摂っているかを見る
  • じゃがいも・冷やしたごはん・豆類には、レジスタントスターチが含まれます。ただしこの試験は食品を調べていません。食品で同じことが起きるかは示されていません
  • イヌリンを添加した食品が「腸活」を掲げていても、酪酸が増えるとは限りません(粉末での結果です

しかも、効く人と効かない人がいます

同じ試験には、もっと踏み込んだ結果があります。

じゃがいも由来のレジスタントスターチをとった人の多くで、ビフィズス菌が増えました。ここまでは「腸活が効いた」と言いたくなる結果です。

ところが、酪酸が増えたのは別の人たちでした。

より高い酪酸濃度になりやすかったのは、Ruminococcus bromiiClostridium chartatabidum という菌が増えた人でした。さらに、Eubacterium rectale という菌がもともと多かった人で、その傾向がはっきりしていました。

ここで、ひとつ前の研究とつながります。動物性に寄った食事で減っていたのは、Eubacterium rectaleRuminococcus bromii でした。酪酸を作っていたのと、同じ菌です。

ビフィズス菌が増えたことと、酪酸が増えたことは、重なりませんでした。論文は「ビフィズス菌はレジスタントスターチをよく分解するが、短期的には酪酸の増加に寄与しない可能性がある」と書いています。

論文の要旨欄には、こうあります。「発酵性食物繊維がどれも同じように短鎖脂肪酸を増やすわけではない」「個人の細菌叢の構成が、特定の食品に反応するかどうかを決める」

著者の視点: ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。同じものを同じだけ食べても、もともと腸に何がいるかで結果が変わる。そして自分の腸に何がいるかは、ふつう分かりません。「これをやれば整う」という書き方が、どこで無理をしているのかが見えます。

実践ポイント

  • 同じ食品で、人によって結果が違うことがあります
  • 「効かない」と感じても、続け方が悪いわけではないかもしれません
  • 著者の視点として、1種類に絞らず、いくつか試して自分に合うものを探すほうが現実的だと考えます(試験がそう勧めているわけではありません)

「発酵食品を毎日」の根拠を開けてみると

腸活の助言でよく並ぶのが、ヨーグルト・納豆・味噌・キムチです。その根拠として挙げられる研究のひとつを開いてみます。

2025年に報告された、58名を対象にしたランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。12週間、2種類の菌を投与しました。

結果は目を引きます。主要評価項目のLDLコレステロールが、プラセボ群と比べて39.97 mg/dL低下しました。体重、BMI、腹囲、収縮期血圧、総コレステロールも下がっています。

ただし、この差には±26.83という幅がついています。平均は大きく動いたが、人によるばらつきも大きかったということです。

この数字を、そのまま「納豆や味噌を食べましょう」の根拠にはできません。理由が3つあります。

ひとつめ。この試験が投与したのは、特定の2つの菌株です。ヨーグルトも納豆も味噌もキムチも、この研究には出てきません。

ふたつめ。対象がメタボリックシンドロームのリスク因子をもつ人でした。連休明けにお腹の調子が気になる、というだけの人とは違います。

みっつめ。LDLが39.97 mg/dL下がるというのは、薬に近い大きさです。58名・単一施設・12週間の試験から出た数字としては、慎重に見るべき水準だと考えます。

なお、この論文は著者の1名がプロバイオティクスを扱う企業に雇用されていることを開示しています。資金源も、食品関連企業と大学の研究センターです。論文は「資金提供者は研究デザイン・データ収集・解析・公表の判断に関与していない」と明記しています。

著者の視点: 開示されているので、隠れているわけではありません。ただ、こうした試験の結果が「発酵食品を毎日」という一般向けの助言に翻訳されていく途中で、対象も、投与したものも、効果の大きさの前提も落ちていきます。落ちたあとの文だけが、記事に残ります。

実践ポイント

  • 発酵食品を食べることを否定する話ではありません。おいしくて続くなら続ける価値があります
  • ただし「この研究で効果が示された」と書かれていたら、何を投与した研究かを見る
  • 特定の菌株のサプリの結果は、食品全般には広げられません

日本の目標量は、理想の値ではありません

では、食物繊維はどれくらい摂ればいいのか。日本には公的な目安があります。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に、実態が載っています。日本人成人の摂取量は、中央値で1日13.3 g。もとになっているのは、平成30・令和元年の国民健康・栄養調査です。

年代別に見ると、意外な向きになっています。

年齢男性女性
18〜29歳11.69 g10.61 g
30〜49歳12.45 g11.5 g
50〜64歳13.84 g13.44 g
65〜74歳16.23 g16.41 g
75歳以上15.8 g14.34 g

数字は1日あたりの中央値です。いちばん少ないのは18〜29歳。そこから65〜74歳まで増えていき、75歳以上で再び減ります。

なぜ25 gなのか。報告書が参照したメタ・アナリシスに、根拠があります。1日あたり少なくとも25〜29 g。この量が、さまざまな生活習慣病リスクの低下に寄与すると報告されています。中央値の13.3 gは、その半分ほどです。

そのうえで、目標量の決め方に注目したいところがあります。報告書はこう書いています。

厚生労働省の報告書より

理想的な目標量は成人では25 g/日以上と考えられるが、現在の日本人の摂取実態を鑑み、その実行可能性を考慮して、これよりも低く設定されている

目標量は、理想の値ではありません。現状の13.3 gと理想の25 gの中間である19.2 gを参照して、そこから算定されています。届く見込みのある値に、あらかじめ下げてあるということです。

サプリメントについても、報告書は踏み込んで書いています。

厚生労働省の報告書より

同じ量の食物繊維を通常の食品に代えてサプリメント等で摂取したときに、ここに記されたものと同等の健康利益を期待できるという保証はない

食品由来で摂取できる量を超えて大量の食物繊維をサプリメント等によって摂取すれば、ここに記されたよりも多くの(大きな)健康利益が期待できるとする根拠はない

便秘についても慎重です。追加摂取には1日10 g・少なくとも4週間が必要とされること、そして腸にガスがたまるといった症状の悪化も報告されていることから、「慎重に判断されるべきである」としています。

著者の視点: 公的な文書が、ここまではっきりサプリメントに言及しているのは珍しいと感じました。「目標量に届かないならサプリで」という補い方を、この報告書は支持していません。

実践ポイント

  • 日本人の中央値は1日13.3 g。リスク低下に寄与するとされる25〜29 gの、およそ半分です
  • 目標量は理想より低く設定されています。届いても「理想的」ではありません
  • 便秘のために食物繊維を足すなら、報告書が挙げているのは1日10 g・少なくとも4週間。ただしガスがたまるなど症状の悪化も報告されているため、始める前に主治医に相談を

それで、連休明けに何をするか

最後に、数字そのものの話をひとつ。

日本食品標準成分表は、七訂から八訂で食物繊維の測定法が変わりました。同じ食品でも、成分値が変わっています。

食品(可食部100 gあたり)七訂八訂
精白米のごはん0.3 g1.5 g
角形食パン2.3 g4.2 g

食品が変わったわけではありません。測り方が変わっただけです。そして目標量のほうは、七訂と同じ測定法にもとづいて算定されています。報告書は「八訂を用いた場合の値は高めに算出されることを考慮すべき」としています。

つまり、「今日は何グラム摂れた」という計算は、どの表を使うかで変わります。先に出た25〜29 gという値も、七訂と同じ測定法にもとづくものです。八訂の成分表で足し算して25 gに届いても、同じ25 gではありません。

ここまでを合わせると、連休明けにできることは、こう整理できます。

元の食事に戻すこと。動物性に寄った食事で腸内細菌が動くことは示されています。戻せば、また動きます。

食物繊維を、いくつかの種類から摂ること。ここは著者の視点として書きます。実験でもっとも酪酸を増やしたのは、じゃがいも由来のレジスタントスターチでした。ただし増えたのは一部の人だけで、しかも食品ではなく粉末での話です。誰が増える側なのかは事前に分かりません。分からないなら分散させる、という判断です。

グラム計算に寄りかからないこと。25〜29 gという目安そのものは意味がありますが、どの成分表で足すかで数字が変わります。「足りていない」の向きを知る道具として使い、1グラム単位で管理する道具としては使わない、という距離感です。

発酵食品は、続くなら続けること。ただし研究で示された効果は、特定の菌株のサプリのものです。

著者の視点: 今回読んだ研究が示していたのは、地味なことでした。食事を変えれば腸の中は動く。ただし、どう動くかは人によって違う。そこまでが、いま分かっていることです。分かっていないことのほうが多い領域で、断定している文を見かけたら、そこは疑っていい。読者にお渡しできるのは、たぶんその構えのほうです。

実践ポイント

  • 連休明けの数日で戻そうとしない。研究の介入期間は2週間や12週間です
  • お腹の張りや便通の変化が続くなら、食事を足す前に受診を
  • 「これで整う」と書いてある記事より、「人による」と書いてある記事のほうが正確です

医療に関する注意

この記事は、査読を経た研究と公的な報告書をもとに情報を整理したものであり、診断や治療の指針を示すものではありません。

特定の食品やサプリメントが、病気を予防したり治したりすることを示すものではありません。紹介した試験はいずれも限られた人数・期間で行われたもので、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。

次のような場合は、食事を変える前に医療機関にご相談ください。

  • 便に血が混じる、黒い便が出る
  • 体重が意図せず減っている
  • 発熱や強い腹痛をともなう
  • 便通の変化が数週間続いている

炎症性腸疾患・過敏性腸症候群などで治療中の方、腸の手術を受けたことがある方は、食物繊維の量や種類について主治医や管理栄養士にご相談ください。持病のある方、妊娠中・授乳中の方も同様です。

あわせて読みたい

使用文献

  • Sender R, Fuchs S, Milo R. Revised Estimates for the Number of Human and Bacteria Cells in the Body. PLOS Biology. 2016;14(8):e1002533. https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.1002533
  • David LA, Maurice CF, Carmody RN, Gootenberg DB, Button JE, Wolfe BE, et al. Diet rapidly and reproducibly alters the human gut microbiome. Nature. 2014;505:559-563.(本記事では抄録に記載されている範囲のみを引用しています) https://www.nature.com/articles/nature12820
  • Baxter NT, Schmidt AW, Venkataraman A, Kim KS, Waldron C, Schmidt TM. Dynamics of Human Gut Microbiota and Short-Chain Fatty Acids in Response to Dietary Interventions with Three Fermentable Fibers. mBio. 2019;10(1):e02566-18.(食物繊維サプリメントを販売する企業からの資金提供を含みます) https://journals.asm.org/doi/10.1128/mbio.02566-18
  • Luangphiphat W, Prombutara P, Jamjuree P, Chantarangkul C, Suwannasin S, Prombutara P, et al. The efficacy of Lacticaseibacillus paracasei MSMC39-1 and Bifidobacterium animalis TA-1 probiotics in modulating gut microbiota and reducing the risk of the characteristics of metabolic syndrome: A randomized, double-blinded, placebo-controlled study. PLOS ONE. 2025;20(1):e0317202.(著者1名がプロバイオティクス企業に雇用されていることが開示されています) https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0317202
  • 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書.Ⅱ 各論 1 エネルギー・栄養素「炭水化物」.2024年10月公表(2025年3月正誤反映).2026年8月8日閲覧. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316464.pdf
瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。

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