味噌を買うとき、「赤味噌がいい? 白味噌? それとも麦味噌?」と棚の前で迷った経験はないでしょうか。健康を気にするほど、種類選びに悩みがちです。ただ、結論を先に言ってしまうと、どの種類がいちばん健康にいいかは決めきれません。味噌選びでほんとうに大切なのは、種類より「減塩」です。この記事では、味噌の分類と、なぜ種類より塩分なのかを、成分と研究から解説します。動脈硬化予防を専門にしてきた立場からの整理です。
(味噌汁そのものの健康効果は〔味噌汁は健康にいい?1日何杯が最適かを保健学博士が解説〕で扱っています。)
味噌は「色」ではなく「原料」で分ける
まず整理したいのが分類です。「赤か白か」は見た目の色の違いで、正確な分類ではありません。味噌は、大豆に加える麹の原料で分けるのが基本です。
米味噌は大豆+米麹で、全国で最も一般的です(赤・白の違いは、おもに熟成期間や製法の差から生まれます)。麦味噌は大豆+麦麹で、甘みが強く、九州・四国で親しまれています。豆味噌は大豆を主体に長く熟成させたもので、東海地方のコクのある味噌です。
著者の視点:「赤味噌は体にいい、白味噌は…」といった色ベースの健康談義をよく見かけますが、色は熟成や原料の“結果”にすぎません。「色ではなく原料で分ける」と知るだけで、選び方の軸がぶれなくなります。
実践ポイント:地域や好みで、米・麦・豆から飲み続けやすいものを選べば十分です。健康のために苦手な種類を我慢する必要はありません。
種類によって健康効果に差はある?
では、種類で効果は変わるのでしょうか。どの味噌にも共通しているのは、原料である大豆由来の成分です。大豆たんぱくについては、摂取するとLDL(悪玉)コレステロールがわずかに下がると報告されています(Zhan S, Ho SC. Am J Clin Nutr. 2005)。
一方で、「米味噌と麦味噌と豆味噌で、健康への効果にこれだけ差がある」と言えるほどの比較データはありません。味噌の良さは、種類の違いよりも、大豆と発酵という共通の土台に支えられている、と考えるのが実態に合っています。
著者の視点:種類ごとの優劣を期待して来られる方は多いのですが、正直なところ、そこに大きな差を示す証拠は乏しいです。種類選びに悩む時間より、次に触れる塩分に目を向けるほうが、健康にはずっと効きます。
実践ポイント:種類は好みで選び、パッケージでは「食塩相当量」を見る習慣をつけましょう。効果の差は、種類より塩分で決まると考えて大丈夫です。
いちばん大事なのは「塩分」
味噌選びで最も効くのが塩分です。塩分(ナトリウム)を減らすと血圧が下がることは、繰り返し確かめられています。長期の減塩と血圧の関係をまとめた研究(34試験)では、減塩によって収縮期血圧が全体で平均4.2mmHg(正常血圧の人でも約2.4mmHg)低下し、もともと血圧が高い人ほど下がり方が大きいと報告されています(He FJ, et al. BMJ. 2013)。
塩分のとりすぎは、血圧だけの問題でもありません。日本人を対象にした大規模研究では、塩分・塩蔵食品の多い食生活が胃がんのリスク上昇と関連すると報告されています(Tsugane S, et al. Br J Cancer. 2004)。だから味噌選びの本質は、種類ではなく「いかに塩分を抑えるか」に移ります。
著者の視点:「どの味噌が体にいいか」に注ぐエネルギーの半分でも「塩分をどう減らすか」に向ければ、健康への見返りははるかに大きい。数字を見てきた者としての、正直な実感です。
実践ポイント:減塩をうたう味噌(通常品より2割前後カットが目安)を選び、だしを効かせて味噌の量そのものを減らす。食塩相当量は商品でかなり幅があるので、買うときにラベルを見比べてみてください。
「だし入り」「減塩」味噌はどう選ぶ?
市販の味噌には「だし入り」や「減塩」タイプもあります。だし入りは手軽で味も決まりやすい反面、製品によっては食塩相当量が高めだったり、うま味調味料が加えられていたりします。便利さと引き換えに、塩分と原材料はラベルで確かめたいところです。
減塩味噌は、塩分を抑えたぶんを、だしや具でおいしさを補う前提の商品です。「減塩=物足りない」を避けるには、だしをしっかり効かせるのが近道です。
著者の視点:だし入り味噌は忙しい人の味方ですが、「だし入り=健康的」ではありません。塩分と原材料を確認したうえで便利に使うもの、と捉えるのがちょうどいいと思います。
実践ポイント:ラベルの「食塩相当量」と原材料をチェック。だしを自分で足せるなら、無添加・減塩タイプに自分のだしを合わせると、塩分を調整しやすくなります。
まとめ:種類より「減塩と続けやすさ」
味噌は色ではなく原料(米・麦・豆)で分かれますが、健康効果に大きな差を示す証拠は乏しく、共通する大豆・発酵の恩恵が土台になっています。そのうえで本当に効くのは、種類選びではなく塩分管理です。減塩味噌を選び、だしを効かせて量を抑え、無理なく続ける。これが、味噌選びのいちばん確かな答えになります。
医療に関する免責事項
本記事は、査読済みの学術論文をもとにした一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の診断・治療・予防を推奨したり、医師その他の医療専門職による助言に代わるものではありません。紹介した研究は対象や条件が限られ、すべての方に同じ効果が当てはまるわけではありません。高血圧・腎臓病などで塩分制限を受けている方、持病のある方は、味噌の種類や量について主治医・管理栄養士の指示を優先してください。
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主な参考資料
- Zhan S, Ho SC. Meta-analysis of the effects of soy protein containing isoflavones on the lipid profile. Am J Clin Nutr. 2005;81(2):397-408. DOI: 10.1093/ajcn.81.2.397. PMID: 15699227
- He FJ, Li J, MacGregor GA. Effect of longer term modest salt reduction on blood pressure: Cochrane systematic review and meta-analysis of randomised trials. BMJ. 2013;346:f1325. DOI: 10.1136/bmj.f1325. PMID: 23558162
- Tsugane S, Sasazuki S, Kobayashi M, Sasaki S. Salt and salted food intake and subsequent risk of gastric cancer among middle-aged Japanese men and women. Br J Cancer. 2004;90(1):128-134. DOI: 10.1038/sj.bjc.6601511. PMID: 14704797
- Katagiri R, Sawada N, Goto A, et al. Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study. BMJ. 2020;368:m34. DOI: 10.1136/bmj.m34. PMID: 31996350


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