トマト缶の塩分は多い?成分表では確かめられない理由を保健学博士が解説

動脈硬化ケア

トマト缶は塩分が多い。そう思って、缶が必要な料理でも生のトマトを使っている——という方は、少なくないと思います。

国の成分表で確かめました。収載されているトマト缶(ホール)は「食塩無添加」の1種類だけで、食塩相当量は0グラムでした。

同じ成分表を読んでいくと、もう1つ出てきます。「ドライトマトは糖質が高い」という話の45グラムという数字。同じドライトマトに、4つの数字が載っていました。

この記事で分かることを、先に5つ書きます。

  • トマト缶の塩分は、成分表では確かめられません。収載されているホール缶は、食塩無添加の1種類だけです
  • 缶を生トマトで代えても、同じ200グラムならほとんど差がありません
  • ドライトマトの「糖質」には、成分表の中に4つの数字があります
  • 100グラムで並べた順番と、実際に使う量で並べた順番は、入れ替わります
  • 血糖では形態による差は一食8グラム未満。はっきり差が出るのは食塩でした

先に答えを書いておきます。いま使っている形のままで大丈夫です。この記事は、形を選び直させるための記事ではありません。選び直さなくていい理由を、数字で確かめる記事です。

数字は、国の成分表と、査読を受けた論文の原文から取りました。確かめられなかったことは、確かめられなかったと書きます。

「ドライトマトの糖質」には、4つの数字があります

成分表に「糖質」という欄はありません

国が出している食品の成分表(文献1)を開くと、意外なことに気づきます。「糖質」という名前の欄が、ありません。炭水化物のまわりに並んでいるのは、次のような欄です。

欄の名前何を表しているか
炭水化物食物繊維も含んだ値
利用可能炭水化物(質量計)でんぷんと糖類を実際に測って足した値
差引き法による利用可能炭水化物水分・たんぱく質・脂質・灰分を引いた残り
食物繊維総量食物繊維だけ

日本で「糖質」と呼ばれているのは、ふつう炭水化物から食物繊維を引いた値です。ただし、これも成分表にある欄ではありません。読む側が引き算をしています。

同じドライトマトに、4つの数字が載っています

成分表のドライトマト(食品番号06370)の欄を、そのまま書き出します。

どの欄か100グラムあたり
利用可能炭水化物(質量計)29.2 g
炭水化物 − 食物繊維総量(引き算)45.6 g
差引き法による利用可能炭水化物47.8 g
炭水化物(総量)67.3 g

よく見かける「45グラム」は、2行目の引き算です。「29グラム」と書かれているのを見たら、それは1行目。どちらも、同じ1つの食品の数字です。

4つの数字は、測り方も意味も違います。だから、ずれるのが当たり前です。問題は、どの欄を使ったのかを書かずに「糖質は◯グラム」と紹介されることにあります。

「63グラム」という数字も見かけます。これは、成分表のどの欄とも一致しませんでした。出どころを確かめられていないので、この記事では使いません。

ドライトマトは、自分では使ったことがありません。イタリアンレストランで食べる程度です。

実践ポイント
  • 糖質の数字を見たら、「どの欄の数字か」を確かめてください。同じ食品で2倍以上ちがうことがあります
  • 商品のパッケージに書いてあるのは「炭水化物」か「糖質」です。成分表の欄と一致しないことがあります。比べるなら、同じ呼び方のものどうしで
  • ここで判断しなくて大丈夫です。次の節で、実際に使う量に直します

100グラムで並べた表と、一食分で並べ直した表

まず、100グラムあたりで並べます

成分表から、トマトの形態を10種類まとめました(文献1)。糖質の欄は、炭水化物から食物繊維を引いた値です。成分表が載せている数字ではなく、こちらで引き算しました。

食品(100 gあたり)水分糖質食塩相当量β-カロテン
赤色トマト 生94.0 %3.7 g0 g540 µg
赤色ミニトマト 生91.0 %5.8 g0 g960 µg
ホール(缶・食塩無添加)93.3 %3.1 g0 g570 µg
トマトジュース(食塩添加)94.1 %3.3 g0.3 g310 µg
トマトジュース(食塩無添加)94.1 %3.3 g0 g310 µg
ドライトマト9.5 %45.6 g0.3 g2600 µg
トマトピューレー86.9 %8.1 g0 g630 µg
トマトペースト71.3 %17.3 g0.1 g1000 µg
トマトケチャップ66.0 %25.9 g3.1 g510 µg
トマトソース87.1 %7.4 g0.6 g480 µg

ドライトマトだけが、けた違いに見えます。糖質45.6グラム。エネルギーも291キロカロリーで、生トマトの14倍以上あります。この表を見て「ドライトマトは避けよう」と思うのは、自然なことです。

ところが、いちばん左の水分の欄に、答えが出ています。ドライトマトの水分は9.5パーセント。ほかの形態が66〜94パーセントなのに対して、ほとんど残っていません。

水分の量から計算すると、ドライトマト100グラムは、生のトマトおよそ1.5キログラムを乾かしたものにあたります(成分表に載っている数字ではなく、水分の欄からの計算です)。そういう食べ方は、まずしません。

実際に使う量で並べ直します

ここから先の量は、すべて目安です。成分表に「一食分」という欄はありません。台所で使うだろう量を、こちらで置きました。ご家庭の量に置き換えて読んでください。数字は掛け算だけで動きます。

食品(目安の量)糖質食塩相当量β-カロテン
赤色トマト 生/中1個 150 g5.6 g0 g810 µg
赤色ミニトマト 生/5個 75 g4.3 g0 g720 µg
ホール(缶・食塩無添加)/400 g缶の半分 200 g6.2 g0 g1140 µg
トマトジュース(食塩添加)/1本 200 g6.6 g0.60 g620 µg
トマトジュース(食塩無添加)/1本 200 g6.6 g0 g620 µg
ドライトマト/2〜3枚 5 g2.3 g0.01 g130 µg
トマトピューレー/大さじ2 30 g2.4 g0 g189 µg
トマトペースト/大さじ1 15 g2.6 g0.01 g150 µg
トマトケチャップ/大さじ1 15 g3.9 g0.46 g76 µg
トマトソース/1人分 100 g7.4 g0.60 g480 µg

順番が入れ替わりました

2つの表の1位を、並べて見てください。

見るもの100 gで並べた1位一食分で並べた1位
糖質ドライトマト 45.6 gトマトソース 7.4 g
(ドライトマトは2.3 gで下から2番目)
β-カロテンドライトマト 2600 µgホール缶 1140 µg
(ドライトマトは130 µgで最下位)
食塩相当量ケチャップ 3.1 gジュース(食塩添加)と
トマトソース 0.60 g

3つとも、1位が入れ替わっています。「ドライトマトは糖質が高い」も「ドライトマトはβ-カロテンが豊富」も、100グラムで比べたときだけ成り立つ話でした。

水分が9.5パーセントから94.1パーセントまでちがう食品を、同じ100グラムで並べる。それ自体に、無理があります。

実践ポイント
  • 「100グラムあたり」の表を見たら、自分が使う量に直してから比べてください。掛け算だけで済みます
  • この記事の量は目安です。大さじ1が何グラムかは、ご家庭の計量スプーンと商品で変わります
  • 乾いているもの・濃いものほど、100グラムの表では悪く見えます。ドライトマトとトマトペーストが、その例です。水分が抜けているだけなので、身構えなくて大丈夫です

血糖で見ると、形態による差は小さいです

一食分の糖質は、どれも8グラム未満でした

一食分の表を、糖質の多い順に読み直します。トマトソース7.4グラム、ジュース6.6グラム、ホール缶6.2グラム、生トマト5.6グラム。いちばん多いものでも7.4グラムです。

比べる相手を置きます。同じ成分表で、ごはん(精白米・うるち米)は100グラムあたり糖質35.6グラム(文献1)。茶碗1杯を150グラムとすると、53.4グラムになります。

糖質
ごはん 茶碗1杯(150 g)53.4 g
トマトソース 1人分(100 g)7.4 g
生トマト 中1個(150 g)5.6 g
ドライトマト 2〜3枚(5 g)2.3 g

トマトのどの形を選んでも、ごはん1杯の7分の1より下です。血糖のためにトマトの形態を選び直す意味は、この範囲では見当たりませんでした。

例外が1つあります。ケチャップは大さじ1で糖質3.9グラム。量が増えると効いてきます。大さじ3なら11.7グラムです。

食事の10分前にトマトジュースを飲んだ研究があります

日本で行われた研究です(文献2)。健康な若い女性21人が、白米200グラムを食べる10分前に、3つのうちどれかを飲みました。順番を変えて、別の日に全部試しています。

飲んだもの食事30分後の血糖
水127.8 ± 4.0 mg/dL
トマトジュース 200 g113.9 ± 4.9 mg/dL
トマトジュース+レモン10 g+えごま油5 g103.1 ± 3.4 mg/dL

いちばん低かったのは、レモンと油を足した条件でした。水と比べた差は、統計的にもはっきりしています。

ただし、この研究をそのまま受け取ることはできません。限界が3つあります。

  • トマトジュース単独の効果ではありません。はっきり差が出たのは、レモンとえごま油を足した条件でした。ジュースだけの条件(113.9)も水(127.8)より低い数字ですが、この差の統計については、抄録で確認できませんでした
  • 3つの条件で、エネルギーと脂質がそろっていません。402・354・315キロカロリー。脂質は5.6グラムと0.6グラム。何が効いたのかを、切り分けられていません
  • 対象は、平均21歳の健康な女性21人です。HbA1cの平均は5.2パーセント。血糖を気にしている中高年とは、条件が違います
実践ポイント
  • 血糖のために、トマトの形を選び直す必要はなさそうです。いま使っている形のままで大丈夫です
  • 食前に飲む形を試すなら、量は文献2と同じ200グラムが目安になります。ただし21人・平均21歳の女性で調べた結果で、これを超える範囲は分かっていません
  • ケチャップだけは、量を見てください。大さじ1で糖質3.9グラム、食塩0.46グラム。大さじ1におさめれば、ほかの形と変わりません

はっきり差が出るのは、糖質ではなく食塩です

トマト缶は、塩分が多いように思っていました。外国の製品が多いこともあって、あまり使っていません。トマト缶が必要な料理のときは、生のトマトを使っています。それが科学的にどうなのかは、検証したことがありませんでした。

この節で、確かめます。

トマト缶の塩分は、成分表では確かめられません

成分表でトマトの加工品を探すと、缶のホールは1つだけ収載されています。「ホール/食塩無添加」(食品番号06184)。食塩相当量は0グラムです(文献1)。

食塩を加えたホール缶は、成分表に収載がありません。トマトジュースには両方あります(食塩添加0.3グラム/食塩無添加0グラム)。缶のホールだけ、食塩無添加しか載っていません。

つまり「トマト缶に塩分が多いかどうか」を、成分表で確かめることはできませんでした。市販されている製品それぞれの食塩量も、この記事では調べていません。パッケージの表示を見ていただくしかありません。

缶を生トマトで代えると、どう変わるか

缶が必要な料理で生トマトを使う。この置き換えを、成分表で比べました。同じ200グラムで並べます。

200 gあたり生トマトホール缶(食塩無添加)
エネルギー40 kcal42 kcal
糖質7.4 g6.2 g
食物繊維総量2.0 g2.6 g
食塩相当量0 g0 g
β-カロテン1080 µg1140 µg
カリウム420 mg480 mg

ほとんど差がありません。缶のほうが糖質はわずかに低く、食物繊維とβ-カロテンはわずかに多い。食塩はどちらも0グラムでした。

生トマトで代える。食塩無添加の缶を選ぶ。成分表の上では、どちらも同じところに着きます。

一食分の食塩で並べ直すと、1位が入れ替わります

食品(一食分)食塩相当量
トマトジュース(食塩添加)200 g0.60 g
トマトソース 100 g0.60 g
トマトケチャップ 大さじ10.46 g
ドライトマト 2〜3枚0.01 g
生トマト/ホール缶(食塩無添加)/ジュース(食塩無添加)0 g

100グラムで並べたときの1位はケチャップ(3.1グラム)でした。一食分に直すと、ジュースとトマトソースに入れ替わります。ケチャップは大さじ1なら0.46グラムです。

そして0グラムの行があります。生トマト、食塩無添加のホール缶、食塩無添加のジュース。選べる、ということです。

なお、後の節で扱う研究(文献3)で使われたのは、トマトを炒めたソース(ソフリット)です。その中身が、論文の表に書かれています。トマトペースト35パーセント、玉ねぎ10パーセント、オリーブオイル5パーセント。そして砂糖3パーセントと塩2パーセント。

この研究では、これを1日100グラム、42日間食べています。つまり砂糖3グラムと塩2グラムを、毎日いっしょに摂っていたことになります。結果を読むときに、外せない条件です。

実践ポイント
  • 缶とジュースは「食塩無添加」を選べます。表示を1回見るだけです。次の買い物から始められます
  • 缶が必要な料理で生トマトを使うのも、成分表では不利になっていません。使い慣れたほうで大丈夫です
  • 市販のトマト缶の食塩量は、この記事では確かめていません。気になる場合は、栄養成分表示の「食塩相当量」をご覧ください
  • 市販のトマトソースやケチャップを使うときは、量を見てください。一食で0.5グラム前後になります

形態より、「何と一緒に、どう調理したか」でした

生・ソース・オイル入りソースを、同じ人で比べた研究

著者の問いに、いちばん近い研究です(文献4)。健康な40人が、4日に分けて次の4つを1回ずつ食べました。順番はくじ引きで決めています。

条件量体重60 kgなら
生トマト7.0 g/kg体重420 g(中3個ほど)
トマトソース3.5 g/kg体重210 g
オリーブオイル入りトマトソース3.5 g/kg体重210 g
対照(砂糖水)0.25 g/kg体重—

食べる前と、6時間後に血液を測っています。結果はこうでした。

  • どの形でも、食べる前と比べて総コレステロールと中性脂肪が下がり、HDLコレステロールが上がっていました
  • そのうえで、4つの指標だけは、オイル入りソースのほうが大きく動いていました。IL-6、VCAM-1、リンパ球のLFA-1、単球のCD36です
  • 総コレステロールとHDLの比が下がったのも、オイル入りソースのときだけでした

論文は「トマトの摂取は心血管のリスク因子に良い影響をもつ、とくに加熱して油を加えたもので」と結んでいます。

ここで、油の種類が重要になります。この研究で足されたのは精製オリーブオイルで、量はソースの重さの5パーセントでした。論文は、この油を分析してポリフェノールもカロテノイドも検出されなかったと書いています。つまり差が出たのは、オリーブオイルのポリフェノールのせいではありません。油という脂の場があったこと自体が効いた、という読み方になります。

ここも、そのまま受け取れません。限界が3つあります。

  • 1回食べた後の6時間を見た研究です。続けて食べたらどうなるかは、この研究では分かりません
  • 量が多いです。体重60キログラムで生トマト420グラム。中3個ほどを、1回で食べています
  • 対象は健康な人です。血糖やコレステロールを指摘されている人で同じになるかは、確かめられていません

炒めたトマトを42日間食べた研究

過体重・肥満の40人(女性13人・男性27人、平均40.8歳)が、炒めたトマトソースを1日100グラム、42日間食べた研究です(文献3)。食べない期間も設けて、同じ人で比べています。

変化が出たのは、血小板の固まりやすさでした。コラーゲンという物質で刺激したときの固まりやすさが、食べた期間で5.10 ± 3.06パーセント下がり、食べない期間では4.47 ± 3.52パーセント上がっていました。

動いたのは、そこだけでした。論文には、こう書かれています。

  • 血管の内側の働き(血管内皮機能)には、有意な差が出ませんでした(p > 0.05)。これは、血小板とならぶ主要な評価項目でした
  • 体重や腹囲、血液中の脂質、血液検査の値にも、有意な差は出ていません(p > 0.05)

論文自身の結論も、控えめです。「ソフリットは、血小板の活性化を下げることで心血管疾患の一次予防に役割をもつかもしれない」。そして限界として、人数が少ないことと、参加者が太めではあっても概して健康だったため変化を捉えにくかったことを挙げています。

そしてもう1つ。前の節で見たとおり、このソースには砂糖3パーセントと塩2パーセントが入っています。トマトと油だけの効果として読むことはできません。

「ペーストのほうが吸収がいい」の原典を読みました

加熱したトマトのほうがリコピンを吸収しやすい、という話の出どころは、1997年の研究です(文献5)。生トマトとトマトペーストを、リコピンの量を23ミリグラムにそろえ、コーン油15グラムと一緒に1回食べて比べています。

ペーストのほうが、血中濃度のピークで2.5倍、時間をかけた総量(AUC)で3.8倍でした。α-カロテンとβ-カロテンには差がありません。

吸収されやすい、という結果は、たしかにこの研究のものです。問題は、その理由としてよく添えられている説明のほうにあります。

「加熱するとリコピンがシス型に変わり、そのほうが吸収されやすい」。この説明を、いろいろな場所で見かけます。ところが原著には、こう書かれています。

The lycopene isomer pattern was the same in both fresh tomatoes and tomato paste.

リコピンの異性体のパターンは、生トマトとトマトペーストで同じだった——そう書かれています。つまり、この研究では「シス型に変わったから」という説明は成り立ちません。

では、なぜ吸収されやすかったのか。この論文は、そこを特定していません。だから、この記事でも理由は書きません。分かっているのは「ペーストのほうが多く吸収された」という結果だけです。

トマトを炒めるときに使うことが多いです。

なお、著者の問いにあった「煮込み」を直接調べた研究は、探しても見つかりませんでした。炒めたものと煮込んだものを比べた研究も、見つけられていません。煮込みが良いとも悪いとも、この記事では書けません。

実践ポイント
  • 油と一緒に加熱する形を支えているのは、文献3と文献4の2本です。炒める、ソースにする、どちらでも構いません。ただし文献3で動いたのは血小板だけ、文献4は1回食べた後の6時間です。「これをすれば動脈硬化が防げる」という水準の根拠ではありません
  • 油の量は、文献4のソースで重さの5パーセント、文献3のソースで5パーセントでした。ソース100グラムなら小さじ1杯強です。これを超える量が良いのかどうかは、分かっていません
  • 油の種類は、文献4では精製オリーブオイル、文献3ではエキストラバージンオリーブオイルでした。文献4は「ポリフェノールは検出されなかった」と書いています。高い油を選ばないといけない、とまでは言えません
  • 「煮込み」については、根拠を示せません。直接調べた研究が見つかりませんでした
  • 油を使わない形(生のまま、ジュースだけ)が悪いとは出ていません。文献4では、生トマトでも対照より良い方向に動いていました。生のまま食べる日は、そのままで大丈夫です

「リコピンが主役」だけでは説明がつかない、という報告があります

2026年に出た解析です(文献6)。トマトとトマト加工品を扱った47の研究(人を対象にしたもの16、動物や細胞のもの31)をまとめています。リコピンだけを取り出したサプリメントの研究は、意図的に除いています。

BMIが25以上の集団で、腹囲が1.153センチメートル小さくなっていました(95パーセント信頼区間 −2.27〜−0.04)。論文はこれを「小さいけれども統計的に意味のある差」と書いています。そして体重とBMIには、一貫した変化が見られませんでした。

この解析が全体として述べているのは、「トマトの効果は控えめで、体重を落とす方向ではなく、内臓の脂肪と代謝の経路に向いている」ということです。そして、さらに検討が必要だとも書いています。

この解析が指摘しているのは、別のことです。

  • リコピンの量を増やしても、効果が比例して大きくなる関係が見られなかった
  • リコピンを含まない材料でも、効果が出ていた

この2つから、働いているのはリコピン単独ではなく、食品全体の組み合わせだろう——と述べています。

リコピンに働きがないという話ではありません。リコピンの量だけで説明しようとすると、つじつまが合わないということです。

ここで、前の節と突き合わせておきます。文献5が測ったのは「リコピンが血中にどれだけ入ったか」でした。この解析が問うているのは「リコピンが主役かどうか」。別の問いを立てています。

そして吸収が増えることと、それが体に効くことは、別のことです。ペーストのほうが3.8倍吸収された(文献5)。けれどもリコピンの量を増やしても効果が比例しなかった(文献6)。この2つは、両方とも成り立ちます。油と一緒に加熱する形を支えているのは、リコピンの吸収の数字ではなく、食べた人で心血管の指標が動いた文献3と文献4です。

もう1つ、成分表を見ていて気づいたことがあります。国の成分表に、リコピンの欄がありません。今回見た10品目すべてを確認しました。カロテノイドとして載っているのは、α-カロテン・β-カロテン・β-クリプトキサンチンの3つだけです。

だから「成分表を見れば、形態ごとのリコピン量が分かる」ということは、ありません。この記事の表でβ-カロテンを載せているのは、リコピンの欄がないからです。

実践ポイント
  • リコピンの量で形態を選ぶ根拠は、いまのところ薄いです。量を追わなくて大丈夫です
  • リコピンのサプリメントについては、文献6が意図的に除いています。この記事では判断できません
  • トマトを使った料理として食べる形が、研究で調べられている形です。そこから離れないでください

まとめ

この記事で、はっきり言えることだけを並べます。

  • 「ドライトマトの糖質」には、成分表の中に4つの数字があります。29.2/45.6/47.8/67.3グラム。どの欄を使ったかで変わります(文献1)
  • 100グラムで並べた順番と、実際に使う量で並べた順番は入れ替わります。糖質もβ-カロテンも食塩も、1位が入れ替わりました
  • 一食分の糖質は、どの形態も8グラム未満でした。ごはん茶碗1杯の7分の1より下です。血糖のために形を選び直す意味は、この範囲では見当たりません
  • 差がはっきり出たのは食塩でした。ジュース(食塩添加)とトマトソースで一食0.60グラム。ただし食塩無添加を選べる形もあります
  • 形態より「何と一緒に、どう調理したか」のほうが、研究では大きく出ています(文献3・文献4)。もっとも、文献3で動いたのは血小板だけで、血管の内側の働きや脂質には差が出ていません
  • 「煮込み」を直接調べた研究は、見つかりませんでした。良いとも悪いとも書けません

いま台所にある形を、そのまま使ってください。生でも、缶でも、ジュースでも、炒めても構いません。それがこの記事の答えです。

そのうえで、足すことが1つだけあります。缶とジュースを買うときに「食塩無添加」の表示を見る。次の買い物から始められて、続けられます。持ち帰っていただきたいのは、それだけです。

医療に関する注意

この記事は、国の成分表と査読を受けた論文をもとにした一般的な情報です。診断や治療を目的としたものではありません。

  • 腎臓の働きが落ちていて、カリウムを制限されている方は注意してください。トマトにはカリウムが含まれます。生トマトは100グラムあたり210ミリグラム、ドライトマトは3200ミリグラム(文献1)。量については主治医か管理栄養士にご確認ください
  • 食塩を制限されている方も、同じです。ジュース・ソース・ケチャップは一食で0.5グラム前後になります
  • 糖尿病の薬を使っている方は、食事を変えるときに主治医にご相談ください。この記事の数字で薬を調整しないでください
  • 文献2と文献4は、1回だけ食べた後の短時間を見た研究です。続けて食べたときのことは分かりません
  • 文献2は21人、文献3と文献4は40人の研究です。人数は多くありません
  • 文献3で使われたソースには、砂糖3パーセントと塩2パーセントが入っています。トマトと油だけの効果ではありません
  • 文献3では、主要な評価項目の片方(血管の内側の働き)に有意な差が出ていません。体重・脂質・血液検査も同じです。論文自身が、人数の少なさを限界として挙げています
  • 文献6は、複数の研究をまとめた解析にあたります。もとになった研究の質や条件はそろっていません
  • この記事の数字は、いずれも集団を見たものです。ご自身に当てはめる判断は、医療者にご確認ください

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【使用文献】

  1. 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(食品成分データベース). https://fooddb.mext.go.jp/(2026年9月24日閲覧)
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  4. Valderas-Martinez P, Chiva-Blanch G, Casas R, et al. Tomato Sauce Enriched with Olive Oil Exerts Greater Effects on Cardiovascular Disease Risk Factors than Raw Tomato and Tomato Sauce: A Randomized Trial. Nutrients. 2016;8(3):170. PMID: 26999197
  5. Gärtner C, Stahl W, Sies H. Lycopene is more bioavailable from tomato paste than from fresh tomatoes. Am J Clin Nutr. 1997;66(1):116-122. PMID: 9209178
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【資金源・利益相反について】文献3と文献4は、いずれも公的機関(省庁と公的研究機関)から研究費を受けています。食品会社からの資金提供は記載されていません。一方で文献4では、試験に使った精製オリーブオイルが、油の製造会社から無償で提供されています(論文の謝辞に記載あり)。文献3では、著者2名が製薬会社との関係を開示しています(いずれも本研究とは無関係と記載)。文献4は「利益相反なし」と記載しています。

文献2・文献5・文献6については、資金源と利益相反の開示を確認できませんでした。資金の偏りがあるかどうかを、この記事では判断できていません。

瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。

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