梅雨に眠れないのはなぜ?睡眠の質を下げる原因と対策7選をエビデンスで解説

睡眠

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梅雨の時期になると、「夜なかなか寝つけない」「しっかり寝たはずなのに疲れが取れない」と感じる方は少なくないのではないでしょうか。実は、この季節特有の蒸し暑さや日照不足は、睡眠の質に影響を与えると考えられています。

私自身、梅雨の時期は蒸し暑さや曇り続きの空模様のせいか、眠りが浅くなったり朝の目覚めが悪くなったりしがちです。同じように感じている方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省も、睡眠で十分に休養がとれていない人の割合が近年増えていると報告しています(出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」2023年策定・2024年公表)。この記事では、梅雨に睡眠の質が下がる理由と、今日から実践できる対策を、公的機関の資料と査読付き論文をもとに保健学博士・看護師の視点から解説します。


梅雨に睡眠の質が下がる主な要因

梅雨に眠りが浅くなる背景には、主に「高温多湿」と「日照不足」という2つの環境要因があると考えられています。

1. 高温多湿による体温調節の負担

人は眠りに入るとき、体の中心部の温度(深部体温)が下がることで自然な眠気が訪れるとされています。手足の血管が広がって熱を外に逃がし、深部体温が下がっていく——この流れがスムーズに進むと、寝つきがよくなると考えられています。

ところが梅雨の高温多湿な環境では、汗が蒸発しにくく、体にこもった熱が逃げにくくなります。その結果、深部体温が下がりにくくなり、寝つきや眠りの深さに影響すると考えられています。

この点について、健康な男性を対象に高温多湿(35℃・湿度75%)の環境で睡眠を調べた実験研究では、睡眠中に本来下がるはずの深部体温(直腸温)の低下が妨げられ、深い眠りである徐波睡眠やレム睡眠が減り、覚醒(目が覚めている状態)が増えたことが報告されています(出典:Okamoto-Mizuno K, et al. Effects of humid heat exposure on human sleep stages and body temperature. Sleep. 1999;22(6):767-773.)。

寝室の温熱環境に関する研究では、睡眠の質に対しては湿度そのものよりも温度の影響のほうが大きいとされています。ただし湿度が高い環境は、発汗による放熱を妨げて暑さの不快感を強めるため、結果的に睡眠に影響すると考えられています。つまり梅雨は「気温+湿気」の組み合わせが眠りにくさを生んでいる、と整理できます。

厚生労働省の睡眠ガイドでも、良質な睡眠のために「室内は快適と感じられる適度な室温を心がけること」が挙げられています(出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。

2. 日照不足による体内時計の乱れ

私たちの体内時計は、朝の光を浴びることで毎日リセットされ、夜になると睡眠を促すホルモン「メラトニン」が分泌されるリズムが整うとされています。

朝に強い光を浴びると体内時計が前に進み、夜の規則的な眠気につながる一方、日中ずっと薄暗い環境で過ごすとメラトニンの分泌が始まる時刻が後ろにずれやすいことが、光と概日リズムに関する研究で報告されています。実際、日中を薄暗い光(約10ルクス)の下で過ごすと夜のメラトニン分泌の立ち上がりが遅れ、日中に明るい光を浴びるとメラトニンのリズムが保たれた、とする実験研究があります(出典:Takasu NN, et al. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2006;291(6):R1799-R1807.)。

梅雨は曇りや雨の日が続き、日中に浴びる光の量が不足しがちです。これが体内時計のリズムを乱し、夜の寝つきや睡眠の質に影響すると考えられています。朝の光と睡眠の関係については、朝の散歩が睡眠の質を上げる?セロトニン→メラトニンの流れは本物でも詳しく解説しています。

補足:気圧の変化について

「梅雨は気圧の変化で体調が崩れる」と感じる方もいます。いわゆる「気象病」と呼ばれるもので、気圧の変化が自律神経に影響する可能性が指摘されています。

ただし、気圧の変化と睡眠の質との直接的な関連を示す研究は、現時点では多くありません。そのため本記事では、気圧については「体調の変化を感じる人もいる」という位置づけにとどめ、確実なエビデンスのある「温湿度」と「日照不足」を中心に対策をお伝えします。気圧の影響を強く感じる方は、後述の体調管理の工夫を取り入れていただくとよいと考えています。


睡眠の質低下が体に与える影響

睡眠が不足したり質が下がったりすると、日中の眠気や集中力の低下だけでなく、健康面でもさまざまな影響があるとされています。

厚生労働省の睡眠ガイドでは、睡眠不足が肥満・高血圧・糖尿病・心疾患・脳血管障害などの発症リスク上昇や症状の悪化と関連し、メンタルヘルスの不調とも相互に影響することが指摘されており、成人に必要な睡眠時間の目安として「6時間以上」が示されています(出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。睡眠時間と死亡リスクを調べた大規模なメタ解析でも、睡眠時間が短い人は適切な睡眠をとる人と比べて死亡リスクが高いと報告されています(出典:Cappuccio FP, et al. Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis. Sleep. 2010;33(5):585-592.)。

梅雨の一時的な寝苦しさであっても、続けば疲労の蓄積につながりかねません。「季節のせいだから」と放置せず、できる対策から整えていくことが大切だと考えています。なお、適切な睡眠時間の考え方については何時間寝ればいい?結論:7時間が最適解、ただし「時間より規則性」が重要もあわせてご覧ください。


今日からできる梅雨の睡眠対策7選

1. 寝室の温度と湿度を快適に保つ

蒸し暑さで熱がこもると深部体温が下がりにくくなるため、エアコンの冷房や除湿(ドライ)機能、除湿機などを活用し、寝室を快適と感じられる環境に整えることがすすめられています(出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。エアコンを我慢しすぎないことも、この時期は大切だと考えています。

💡 おすすめアイテム 梅雨の寝室の温湿度管理には、除湿機やサーキュレーター、温湿度計が役立ちます。室内の状態を「見える化」すると、快適な環境づくりの目安になります。

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2. 就寝の1〜2時間前に入浴する

入浴で一時的に体を温めると、その後に手足から熱が放散され、深部体温が下がりやすくなることで寝つきがよくなると考えられています。

ぬるめ〜温かめのお湯(およそ40〜42.5℃)に入り、就寝の1〜2時間前に済ませておくと、寝つくまでの時間(入眠潜時)が平均でおよそ10分短縮した、とするシステマティックレビュー・メタ解析があります(出典:Haghayegh S, et al. Sleep Medicine Reviews. 2019;46:124-135. PMID: 31102877)。ポイントは「就寝直前」ではなく「1〜2時間前」という点です。

日本人を対象とした研究でも同様の傾向が報告されています。就寝1.5〜2時間前に深部体温が上がりやすい「しっかりとした浴槽浴」を行った場合、シャワーのみの場合と比べて寝つくまでの時間が有意に短くなったとされています(出典:Maeda T, et al. Effects of bathing-induced changes in body temperature on sleep. J Physiol Anthropol. 2023;42(1):20.)。

3. 朝に光を浴びる

曇りや雨の日でも、屋外の明るさは室内よりずっと強いとされています。朝起きたらカーテンを開け、できれば数分でも外の光を浴びることで、体内時計を整える助けになると考えられています。朝の光の取り入れ方は散歩は朝と夕方どちらが効果的か|目的別の最適タイミングをエビデンスで解説も参考になります。

💡 おすすめアイテム 梅雨で朝の自然光が不足しがちな時期は、設定時刻に向けて徐々に明るくなる「光目覚まし時計」を、朝の光を浴びる習慣の補助として取り入れる方もいます。

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4. 寝具・パジャマは吸湿性のある素材を選ぶ

汗をかいても肌に張りつきにくい、吸湿性・通気性のよい素材の寝具やパジャマを選ぶと、寝床内の蒸れをやわらげる助けになると考えています。綿や麻などの天然素材は、梅雨の時期に取り入れやすい選択肢です。

💡 おすすめアイテム 梅雨の蒸れ対策には、綿・麻・吸湿速乾素材のパジャマや、通気性のよい敷きパッドが選択肢になります。

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5. 適度な運動習慣を取り入れる

ウォーキングなどの適度な運動習慣は、睡眠の質を高めるうえで役立つとされています(出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。実際、81件のランダム化比較試験(参加者6,193人)をまとめたメタ解析でも、運動によって睡眠の質の指標(PSQI)が有意に改善したと報告されています(出典:Zhou X, et al. Effects of exercise on sleep quality in general population: Meta-analysis and systematic review. Sleep Med. 2024.)。雨で外に出にくい時期は、室内でできる軽いストレッチなどから始めるのもよいと考えています。

6. カフェインとアルコールの摂り方を見直す

カフェインには覚醒作用があり、夕方以降の摂取は寝つきを妨げる可能性があるとされています。睡眠ガイドでは、カフェインの摂取が1日400mg(コーヒーをカップで約4杯)を超えると眠りにくくなる可能性があると示されています。実際、400mgのカフェインを就寝直前・3時間前・6時間前に摂取した影響を調べた研究では、6時間前の摂取であっても総睡眠時間が短くなったと報告されており、夕方以降のカフェインには注意が必要と考えられています(出典:Drake C, et al. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed. J Clin Sleep Med. 2013;9(11):1195-1200.)。

また、眠るためにお酒を飲むこと(寝酒)は、睡眠の質を悪化させる可能性があるとされています(出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。27件の研究をまとめたメタ解析でも、アルコールはレム睡眠の出現を遅らせ、その量を減らすことが示されており、寝つきのための飲酒は睡眠の質を守る方法としては適切でないと考えられています(出典:Gardiner C, et al. The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2025;80:102030.)。

7. 就寝前はリラックスする時間をつくる

寝る前の1時間程度は、強い光や刺激を避けてリラックスして過ごすことがすすめられています。寝室にスマートフォンを持ち込まず、できるだけ暗くして眠ることもポイントです(出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。寝る前のスマホと睡眠の関係については寝る前のスマホはなぜ睡眠に悪い?結論:ブルーライトより「脳の興奮」が問題で詳しく解説しています。

💡 おすすめアイテム 食べ物から睡眠をサポートしたい方は、メラトニンを含むキウイにも注目です。詳しくはキウイのメラトニン含有量|睡眠改善に効果的な量・タイミング・エビデンスを解説をご覧ください。


よくある質問(Q&A)

Q1. エアコンをつけて寝ると、朝に体がだるかったり冷えたりします。どうすればいいですか?

冷風が体に直接当たり続けると、冷えや不快感につながることがあります。風が体に直接当たらない向きに調整したり、設定温度を上げる・タイマーや自動運転を使うなどの工夫がすすめられます。それでも体調がすぐれない場合や症状が続く場合は、判断に迷う場合は医療機関へご相談ください。

Q2. 寝不足が続いたとき、昼寝で補ってもいいですか?

短い昼寝は日中の眠気の軽減に役立つとされていますが、長すぎる昼寝は夜の睡眠に影響することがあります。適切な昼寝の長さについては昼寝の効果的な時間|20分が最適解の理由をエビデンスで解説をご覧ください。日中の強い眠気が続く場合など、判断に迷う場合は医療機関へご相談ください。

Q3. 雨の日に頭痛もあって眠れません。市販の睡眠改善薬を飲んでもいいですか?

気圧の変化で頭痛などの不調を感じる方もいるとされています。市販薬の使用にあたっては、持病や服用中の薬との関係もあるため、自己判断は控えるのが安心です。頭痛が続く・強い場合や、薬の使用に判断に迷う場合は医療機関へご相談ください。

Q4. 朝起きても曇りで外が暗いとき、どうやって光を浴びればいいですか?

曇りの日でも、屋外の明るさは室内より強いとされています。窓際で過ごす、ベランダに少し出るなど、屋外の光に近い環境に身を置くことが助けになると考えられています。なお、対策を続けても睡眠の不調が改善しないときは、判断に迷う場合は医療機関へご相談ください。


著者より

蒸し暑さや長雨が続く梅雨は、心も体もすっきりしにくい季節です。私自身も、この時期は寝つきや朝の目覚めの悪さを実感することがあります。だからこそ、「眠れないのは気のせいではなく、環境にも理由がある」と知っていただくことが、対策の第一歩になると考えています。

今回ご紹介した方法は、どれも特別な道具がなくても始められるものばかりです。すべてを一度にではなく、取り入れやすいものから試していただければと思います。

瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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医療免責事項

本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療を行うものではありません。睡眠に関する不調が続く場合や、体調に不安がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。記事内で紹介した情報は執筆時点の公的資料・研究に基づいていますが、最新の情報や個別の状況については専門家にご確認ください。


参考文献

  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2023年策定・2024年公表)
  • Okamoto-Mizuno K, Mizuno K, Michie S, Maeda A, Iizuka S. Effects of humid heat exposure on human sleep stages and body temperature. Sleep. 1999;22(6):767-773.
  • Takasu NN, Hashimoto S, Yamanaka Y, Tanahashi Y, Yamazaki A, Honma S, Honma K. Repeated exposures to daytime bright light increase nocturnal melatonin rise and maintain circadian phase in young subjects under fixed sleep schedule. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2006;291(6):R1799-R1807. doi:10.1152/ajpregu.00211.2006
  • Haghayegh S, Khoshnevis S, Smolensky MH, Diller KR, Castriotta RJ. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019;46:124-135. doi:10.1016/j.smrv.2019.04.008
  • Maeda T, Koga H, Nonaka T, Higuchi S. Effects of bathing-induced changes in body temperature on sleep. J Physiol Anthropol. 2023;42(1):20. doi:10.1186/s40101-023-00337-0
  • Zhou X, Kong Y, Yu B, Shi S, He H. Effects of exercise on sleep quality in general population: Meta-analysis and systematic review. Sleep Med. 2024. (PMID: 39556996)
  • Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed. J Clin Sleep Med. 2013;9(11):1195-1200.
  • Gardiner C, Weakley J, Burke LM, Roach GD, Sargent C, Maniar N, Huynh M, Miller DJ, Townshend A, Halson SL. The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2025;80:102030. doi:10.1016/j.smrv.2024.102030
  • Cappuccio FP, D’Elia L, Strazzullo P, Miller MA. Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Sleep. 2010;33(5):585-592.

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