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「エアコン代がもったいない」が熱中症を招く
「電気代が高いから」と昼間にエアコンを切る。「少しくらい暑くても大丈夫」と設定温度を高めにしたまま過ごす。
こうした節約意識が、実は熱中症の引き金になっているケースが少なくありません。
消防庁の調査では、熱中症による救急搬送のうち住居内(自宅)での発生が最も多く、全体の4割近くを占めています(消防庁「令和5年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」)。外出中よりも、むしろ「自宅でエアコンをうまく使えていない状態」で倒れる人が多いのです。
つまり、「節約のためにエアコンを我慢する」ことは、医療費や入院費につながるリスクがあります。本当の意味での節約は、エアコンを正しく使いながら、無駄な電力を削ることです。
この記事では、エアコンの効率を上げる方法と、著者が実際に家庭で実践している暑さ対策を合わせてご紹介します。
エアコンを効率よく使う4つの方法
① フィルターを2週間に1度掃除する
最もコストゼロで実践できる節電策です。
フィルターが目詰まりしていると、エアコンは同じ設定温度を維持するために余分な電力を消費します。環境省によると、2週間に1度フィルターを掃除するだけで冷房時に約4%の消費電力削減になるとされています(環境省「みんなで節電アクション」)。
資源エネルギー庁のデータでは、定期的なフィルター掃除で年間約31.95kWh・約860円の節約になるとされています(資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」)。なお電気代の単価は地域・プランによって異なるため、実際の節約額はこれより高くなる場合があります。
掃除の手順はシンプルです。フィルターを取り外し、掃除機でほこりを吸い取るだけ。汚れがひどい場合は水洗いし、完全に乾かしてから戻してください。
② 設定温度より「体感温度」を管理する
「エアコンの設定温度を上げれば節電になる」は正しいですが、上げすぎると熱中症リスクが高まります。大切なのは設定温度の数字ではなく、室内の体感温度を適切に保つことです。
資源エネルギー庁のデータでは、冷房の設定温度を1度上げると約10〜13%の消費電力削減になるとされています。ただしこれは節電の話であり、高齢者や子どもがいる家庭では熱中症予防を優先してください。
体感温度を下げるには、設定温度を下げるよりもサーキュレーターや扇風機を併用するほうが効率的です。風が体に当たると涼しく感じやすくなるため、設定温度を変えずに快適に過ごせる可能性があります(環境省「みんなで節電アクション」)。
💡 サーキュレーターはエアコンの対角線上に置き、天井に向けて風を送ると室内の空気が循環しやすくなります。

③ 自動運転を賢く活用する
資源エネルギー庁によると、エアコンは起動時に多くの電力を消費するため「こまめに切る」は必ずしも節電になりません。ダイキンなど主要メーカーの情報では、30分以内の短時間外出であればつけっぱなしのほうが消費電力が少ない場合があるとされています。ただし長時間の外出では切ったほうが節電になるため、外出時間に応じて判断してください(資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」、各メーカー情報より)。
就寝時は自動運転で切らずに運転し続けることで、熱中症予防と快適な睡眠を両立できます。特に熱帯夜が続く7〜8月は、就寝中もエアコンを切らないことが推奨されています(環境省「熱中症環境保健マニュアル」)。
④ 室外機の周辺を整理する
室外機は外気に熱を放出することで冷房が機能します。室外機の周りに物が置いてあったり、直射日光が当たり続けていたりすると効率が落ち、消費電力が増えます。
- 室外機の周囲には十分なスペースを確保する(メーカーの設置基準に従う)
- 直射日光が当たる場合は日よけを設置する(ただし通気を妨げない位置に)
- 室外機の吹き出し口をふさがない
わが家では室外機の上に日よけカバー(遮光タイプ)を取り付けたところ、エアコンの効きが体感で改善しました。直射日光を遮ることで室外機の熱交換効率が上がるためと考えられます。
一般社団法人省エネ推進協議会の検証では、遮光率85%の遮光ネットで室外機を遮光したところ約10%の省エネ効果が確認されています。適切に設置された日よけ全般では、5〜21%の消費電力削減が報告されています(各種実証実験データより)。
ただし、室外機カバーには注意が必要です。側面を囲う「囲い型カバー」は排熱を妨げてエアコンの効率を下げるだけでなく、故障の原因にもなります。使用するのは必ず上部に置くだけの日よけ・遮光タイプにしてください。
💡 室外機への直射日光が気になる場合は、通気を妨げない日よけタイプがおすすめです。取り付けも簡単で、夏場の節電効果が期待できます。

ダイキン工業の実験では、10年以上前のエアコンに3年分のホコリが溜まった状態からフィルター掃除と室外機周辺の整理を行ったところ、消費電力量が約半減したという結果が出ています(ダイキン工業「節電実証実験」2022年)。長年手入れをしていない場合、その効果は特に大きくなります。
著者が実践している節約×暑さ対策4選
ここからは、看護師・保健学博士として熱中症の知識を持ちながら、実際に家庭で実践している暑さ対策をご紹介します。
① 遮光・遮熱カーテンで室温上昇を防ぐ
わが家では数年前から遮光・遮熱カーテンに替えています。体感として、昼間に閉めておくだけで帰宅時の室温が明らかに違います。
夏の室内温度の上昇の多くは窓からの日射熱が原因とされています。環境省も「外出時はカーテンを閉めると室温上昇を防ぐ効果がある」としています(環境省「みんなで節電アクション」)。
遮光・遮熱カーテンは光と熱の両方を遮ることで室温上昇を抑える効果があります。遮熱機能のあるカーテンは窓際の温度上昇を 約3〜5℃ 抑える効果があるとされており(各カーテンメーカーの試験データより)、帰宅時の「蒸し風呂状態」を防ぐ実用的な対策です。
💡 遮光・遮熱カーテンを選ぶ際は遮熱率の数値を確認してください。UVカット機能付きのレースカーテンと組み合わせると、光を通しながら熱を遮断できます。

② ネッククーラーは子どもの必需品
うちの子どもたちは夏の外出時にネッククーラーが欠かせません。首を冷やすことで暑熱環境下での体感温度(熱感)が低下することが研究で示されており、屋外活動中の涼しさの維持に効果的とされています(Cao Y, et al. Sports Medicine Open, 2022)。
また、首の前側(前頸部)・脇の下・太もも付け根の3か所は「三大局所冷却」と呼ばれ、体表近くに太い血管が流れているため体温を下げやすい部位とされています(公益財団法人日本スポーツ協会「熱射病が疑われる場合の身体冷却法」)。冷やしすぎには注意が必要で、適度な時間での使用を心がけてください。
💡 子ども用は軽量で首への負担が少ないものがおすすめです。登下校・スポーツ・公園遊びなど長時間の屋外活動に重宝します。

③ アイスノン・保冷剤で就寝時の暑さを乗り切る
夜、エアコンをつけていても寝苦しいと感じるときはアイスノン(冷却枕)や保冷剤を活用しています。首の前側・両脇や脇の下など太い血管が体表近くを通る部位を冷やすことで、涼しく感じやすくなるとされています。
保冷剤や冷却ジェルはタオルに包んで首の前側・脇の下に当てると効果的です。直接肌に当てると冷やしすぎになることがあるため、必ずタオルに包んで使用してください。繰り返し使えるためコストパフォーマンスも高い暑さ対策です。
💡 就寝時の頭・首の熱こもりが気になる場合は、冷却ジェル枕や保冷剤対応の枕カバーも便利です。

④ ベランダの水掃除で周辺温度を下げる
朝や夕方にベランダを水で流して掃除するようにしています。これは「打ち水」と同じ原理で、水が蒸発するときに周囲の熱を奪う気化熱を利用したものです。
日本気象協会「熱ゼロ研究室」の実測では、打ち水前の地面表面温度62.4℃が打ち水後に41.8℃へと約20℃低下し、その効果は約1時間持続することが確認されています(日本気象協会「熱ゼロ研究室」)。また国土交通省もヒートアイランド対策として打ち水を公式に推進しています(国土交通省「打ち水大作戦」)。
ベランダで行う場合も同様に、室外機周辺の温度を下げることでエアコンの効率向上にもつながると考えられます。
打ち水は朝や夕方など、気温がピークでない時間帯に行うのが効果的です。気温が最も高い時間帯はすぐに蒸発してしまい効果が持続しません(環境省「まちなかの暑さ対策ガイドライン」)。
高齢者・子どもがいる家庭は節電より安全優先
ここまで節電方法をご紹介しましたが、高齢者や子どもがいる家庭では、節電よりも熱中症予防を優先してください。
高齢者は体温調節機能の低下により暑さを感じにくく、子どもは体温調節機能が未発達です。どちらも室温が高くても「暑い」と感じにくく、気づかないうちに熱中症が進行するリスクがあります(環境省「熱中症環境保健マニュアル」)。
節電の工夫はあくまでも「エアコンを正しく使った上での効率化」です。我慢してエアコンを切ることは節約になりません。
熱中症で救急搬送・入院した場合の医療費は、夏の電気代をはるかに上回ることが多いと考えています。
よくある質問(Q&A)
Q. エアコンはつけっぱなしと、こまめに切るのはどちらが節電になりますか?
A. 一般的に、30分以内の外出であればつけっぱなしのほうが消費電力が少ないとされています。エアコンは起動時に多くの電力を消費するためです。ただし機種や外気温によって異なるため、詳しくはメーカーや資源エネルギー庁の情報をご確認ください(資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」)。
Q. 設定温度28℃が推奨されていますが、暑くて無理です。
A. 環境省が推奨する28℃はあくまで「省エネの目安」であり、熱中症予防の観点からは個人の体調・年齢・活動量に合わせた室温管理が重要です。高齢者・子ども・体調不良の方がいる場合は、快適に過ごせる温度設定を優先してください。節電はサーキュレーターの併用やフィルター掃除など他の方法で補いましょう。
Q. 電気代が心配で夜もエアコンを切ってしまいます。
A. 熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上)は就寝中もエアコンを切らないことが環境省のガイドラインで推奨されています。睡眠中は発汗に気づきにくく、脱水・熱中症が進行するリスクがあります。タイマーで途中に切れるよりも、自動運転での連続運転のほうが効果的とされています(各メーカー情報より)。
Q. 古いエアコンと新しいエアコン、電気代はどのくらい違いますか?
A. 資源エネルギー庁のデータによると、10年前のモデルと最新の省エネタイプを比較した場合、消費電力量に大きな差があるとされています。10年以上使用しているエアコンは、買い替えだけで大幅な節電につながる可能性があります(資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ」)。
著者より
「電気代が高い夏、どこまで節約していいのか」という疑問は、多くのご家庭が持っていると思います。
看護師として救急外来で働いていた頃、「エアコンをつけるのがもったいなくて…」とおっしゃる患者さんに何度もお会いしました。特に高齢の方に多く、心が痛かったのを覚えています。
節電は大切です。でも、「我慢してエアコンを切る節約」だけは避けてほしいのです。フィルター掃除、サーキュレーターの活用、遮光・遮熱カーテン——こうした工夫を重ねることで、エアコンをしっかり使いながら電気代を抑えることは十分に可能です。
この記事が、安全に夏を乗り越えるための一助になれば嬉しいです。
医療免責事項
本記事は一般的な健康・生活情報の提供を目的としており、医療行為・診断・治療の代替となるものではありません。個別の症状や体調については、必ずかかりつけ医または医療専門家にご相談ください。
参考文献
- 消防庁「令和5年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r5/heatstroke_nenpou_r5.pdf
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル」https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/full.pdf
- 環境省「みんなで節電アクション|家庭でできる節電アクション|エアコンで節電」https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/setsuden/home/saving03.html
- 環境省「まちなかの暑さ対策ガイドライン」https://www.env.go.jp/content/900404653.pdf
- 資源エネルギー庁「省エネポータルサイト|無理のない省エネ節約|空調」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/airconditioning/index.html
- ダイキン工業「フィルター掃除と室外機周辺の片付けによるエアコンの節電効果を検証」2022年8月 https://www.daikin.co.jp/press/2022/20220809
- 一般社団法人省エネ推進協議会ほか複数の実証実験データより(各メーカー・団体の公開情報を参照)
- 国土交通省「水の週間打ち水大作戦」https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/tochimizushigen_mizsei_tk1_000023.html
- 日本気象協会「熱ゼロ研究室|打ち水効果をサーモカメラで観測」https://www.netsuzero.jp/netsu-lab/lab07
- Cao Y, Lei TH, Wang F, Yang B, Mündel T. “Head, Face and Neck Cooling as Per-cooling Modalities to Improve Exercise Performance in the Heat: A Narrative Review and Practical Applications.” Sports Medicine Open. 2022;8(1):16. doi: 10.1186/s40798-022-00411-4. PMID: 35092517
- 公益財団法人日本スポーツ協会「熱射病が疑われる場合の身体冷却法」https://www.japan-sports.or.jp/medicine/tabid/916/Default.aspx
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