野菜ジュースの棚には、赤いもの、緑のもの、そして黄色やオレンジ色のものが並んでいます。オレンジ色のパッケージを手に取ったとき、「これは何にいいのだろう」と思ったことはないでしょうか。
売り場では「目に」「骨に」といった言葉が添えられていることがあります。ただ、その色をつくっている成分が何なのかまで書かれていることは、あまりありません。
この記事では、黄・オレンジの野菜ジュースの色をたどりながら、査読を経た研究で何がどこまで報告されているのかを整理します。先に申し上げておくと、「目に」と言われる成分も、「骨に」と言われる成分も、にんじん以外の野菜や果物のものです。
黄・オレンジの色をつくっているのはβカロテンです
黄色やオレンジ色の野菜ジュースは、多くの場合にんじんが中心です。この色は、カロテノイドと呼ばれる色素の一群によるもので、にんじんで最も多いのはβカロテンです。
米国農務省のデータベース(FoodData Central)によると、生のにんじん100 gあたりのβカロテンは8,280 µgです。野菜のなかでも高い部類に入ります。
βカロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。ビタミンAは視覚や免疫、皮膚の機能に関わる栄養素として知られています。「にんじんは目にいい」という言い伝えには、このビタミンAという筋道があります。
ただし、ビタミンAと視覚の関係は、足りないときに問題が起きるという話です。すでに足りている人がさらに多く摂れば見え方が良くなる、という意味ではないと私は理解しています(著者の視点として)。
ここでもう一点。このあと出てくる「ルテイン」や「βクリプトキサンチン」は、βカロテンとは別の成分です。同じカロテノイドという括りに入っていても、多く含まれる野菜も、研究されてきた文脈も違います。ここが混ざると、話がずれていきます。
著者の視点: 売り場で私が見ているのは、パッケージの正面ではなく裏側です。「黄・オレンジ」と銘打っていても、原材料表示の先頭に何が来ているかで中身はかなり変わります。
実践ポイント
- 黄・オレンジの野菜ジュースを選ぶときは、原材料表示の先頭を確認してみてください(著者の視点として)
- ここで挙げた数値は、野菜そのものの値です。製品に何がどれだけ入っているかは、メーカーの表示を確認してください
「ルテインで目に」とよく言われますが、ルテインは緑の葉物の成分です
ルテインは、目の網膜の黄斑部に存在するカロテノイドで、加齢黄斑変性との関連が長く研究されてきました。「ルテイン=目」という説明は、この文脈から来ています。
そのルテインが多く含まれているのは、黄・オレンジの野菜ではなく緑の葉物のほうです。
USDA FoodData Central による、生の状態100 gあたりの値(µg)です。
| ルテイン+ゼアキサンチン | βカロテン | βクリプトキサンチン | |
|---|---|---|---|
| にんじん(生) | 256 | 8,280 | 0 |
| ほうれん草(生) | 12,200 | 5,630 | 0 |
| ケール(生) | 6,260 | 2,870 | 27 |
生のほうれん草のルテイン+ゼアキサンチンは、生のにんじんの約48倍にあたります。「ルテインを摂りたい」という目的でオレンジ色の野菜ジュースを選ぶと、目的と手段がかみ合いません。
では、ルテインを補うこと自体はどうなのか。ここは、大きな試験の結果が一つの答えに収束していません。
加齢黄斑変性が進行するリスクの高い50〜85歳の4,203名を対象に、ルテイン10 mgとゼアキサンチン2 mgを加えた効果を調べた多施設ランダム化二重盲検試験(AREDS2)があります。この試験からは、解析の切り口によって違う結果が出ています。
- 各治療群をプラセボ群と比べた主要解析では、有益な効果も有害な効果も示されませんでした
- 一方、あらかじめ決められていた「ルテインを摂った群 対 摂らなかった群」の解析では、進行のハザード比0.90(95%信頼区間 0.82-0.99)、p = 0.04と、有意な差が報告されています
- さらに、食事からのルテイン・ゼアキサンチン摂取量が最も少なかった層に限ると、ハザード比0.74(95%信頼区間 0.59-0.94)、p = 0.01でした
研究グループ自身が、これらは否定的な主要結果のもとでの探索的な解析に大きく依拠していること、多重比較の補正をしていないことを、限界として明記しています。「効く」とも「効かない」とも、まだ言い切れる段階ではありません。
黄・オレンジの野菜ジュースという観点では、この議論の決着を待つ必要はありません。試験で使われたのはルテイン10 mgとゼアキサンチン2 mg、合わせて12 mgです。上の表から換算すると、生のにんじんで約4.7 kgに相当します。同じ計算を生のほうれん草ですると、約98 gです。この成分を食事から集めるなら向かう先は緑の葉物だということが、量の面からもはっきりします。
もっとも、これは含有量の換算にすぎません。食品から摂った場合にサプリメントと同じ効果が得られるかどうかまで、この試験が答えているわけではありません。
著者の視点: 同じ試験でも、切り口を変えると別の答えが出てきます。こういうとき、都合のいい解析をひとつだけ引いて「効く」とも「効かない」とも書けてしまう。私は学生にも、結論の一文だけでなく、それがどの解析の話なのかを必ず確かめるよう伝えるようにしています。
実践ポイント
- ルテインを食事から摂りたいのであれば、ほうれん草やケールなどの緑の葉物が中心になります
- 黄・オレンジの野菜ジュースに、その役目を期待するのは難しいと考えられます
- 加齢黄斑変性は、自己判断で対処する病気ではありません。見え方に変化を感じたときは眼科を受診してください
「骨に」と言われている成分は、柑橘のものです
野菜ジュースと骨、という文脈で名前が挙がるのがβクリプトキサンチンです。温州みかんをはじめとする柑橘に多い成分で、日本では静岡県三ケ日町の住民を対象とした前向きコホート研究がよく引用されます。
男性146名、閉経前女性99名、閉経後女性212名を4年間追跡した研究です。この期間に骨粗鬆症を新たに発症したのは閉経後女性15名で、男性と閉経前女性では発症がありませんでした。
閉経後女性を血中βクリプトキサンチン濃度で三つに分けると、最も高い群の骨粗鬆症発症のオッズ比は、最も低い群を基準にして0.07(95%信頼区間 0.01-0.88)と報告されています。
ここは、ていねいに読む必要があります。同じ研究のなかに、性質の違う解析が二つ入っているからです。
ひとつは、骨粗鬆症を新たに発症したかどうかを見た解析。ここで有意だったのはβクリプトキサンチンで、**βカロテンのオッズ比は0.24(95%信頼区間 0.05-1.21)**と、信頼区間が1をまたいでいます。統計学的に有意ではありません。
もうひとつは、4年間で橈骨の骨密度がどれだけ変化したかを見た解析。こちらでは、血中βカロテン濃度が最も高い群のほうが、最も低い群より骨密度の減少が有意に小さかったと報告されています。
つまり、「βカロテンは骨と無関係」とは言えません。一方で、骨粗鬆症の発症という結果まで見ると、有意な差は示されていない。そういう状態です。
そのうえで、黄・オレンジの野菜ジュースにとって決定的なのは、こちらです。**にんじんにβクリプトキサンチンは含まれていません。**上の表のとおり、USDAの値は0です。骨粗鬆症の発症で有意な結果が出ている成分は、にんじんを主体としたジュースには入っていないのです。
なお、この研究は介入試験ではなく観察研究です。発症15名という数の少なさが、信頼区間の極端な広さに表れています。
観察研究であることには、もう一つ意味があります。血中のカロテノイド濃度が高い人は、野菜や果物をよく食べている人でもあります。βカロテンという成分そのものの働きと、野菜をよく食べる暮らしそのものの影響とを、この設計では切り分けられません。
また論文には、農林水産省と果樹科学振興財団から助成を受けたこと、そして資金提供者がデータ収集と解析に関与したことが明記されています。
著者の視点: 資金源が論文に明記されていること自体は、隠していないという意味で誠実な姿勢です。私が気にしているのは、別のところです。成分の名前だけが先に有名になり、その成分が入っていない食品にまで貼りつけられていく。その過程のほうが、読者にとって困ることだと受け止めています。
実践ポイント
- βクリプトキサンチンを食事から摂りたいのであれば、温州みかんなどの柑橘が中心になります
- にんじんを主体とした野菜ジュースに、この成分は期待できません
- この研究が測っているのは血中の濃度で、何を食べたかまでは追っていません。柑橘を食べれば同じ結果になる、とまで読むことはできません
搾ってジュースにすると、吸収は上がります。ただし条件があります
では、黄・オレンジの野菜ジュースに何が期待できるのか。βカロテンそのものの吸収については、比較的新しい報告があります。
健康な成人16名(20〜30歳、全員非喫煙者)を対象に、生のにんじんと搾りたてのにんじんジュースを比べた、ランダム化クロスオーバー試験です。両群のβカロテン量は25 mgに揃えられ、そのために摂ったのは、にんじん320 g、ジュース530 gでした。摂取後24時間にわたって血中濃度が測定されています。
その結果、血中βカロテンのピーク値はジュースのほうが2.33倍、曲線下面積(AUC)は2.09倍と報告されています。搾る過程で細胞壁が壊れ、βカロテンが放出されやすくなるためと考察されています。
この結果を日常に持ち込むときには、前提が四つあります。
ひとつめ。この試験では、両群とも菜種油50 mLを一緒に摂っています。油を摂らない条件は検証されていません。
ふたつめ。搾ると、重量あたりのβカロテン濃度はむしろ下がっています(にんじん7.88に対し、ジュース4.78 mg/100 g)。総量が減ったうえで、残った分が吸収されやすくなる、という構図です。
みっつめ。この試験では血中の抗酸化能(ORACおよびTRAP)も測定されましたが、にんじんとジュースのあいだに有意な差は認められませんでした。単回の摂取では変化を検出できなかった可能性がある、と著者自身が述べています。「ジュースにすると抗酸化力が上がる」という話にはなっていません。
よっつめ。使われたのは搾りたての生ジュースで、飲んだ量は530 gです。市販の、加熱殺菌された紙パック1本(200 mL)とは、状態も量も違います。
なお、搾ってβカロテンが出やすくなるとき、同じ工程で食物繊維の多くは搾りかすとして残ります。細胞壁が壊れるという一つの現象に、得な面と損な面の両方がある、ということです。
著者の視点: 私自身、野菜ジュースはたまに買います。朝ご飯のときに飲むこともありますし、タイミングは色々です。ただ、飲むこと自体を何かの「対策」として位置づけたことはありません。手軽なぶん期待も膨らみやすい飲みものだ、というのが正直なところです。
実践ポイント
- この試験は、油を含む条件(菜種油50 mL)で行われています。油を摂らない場合にどうなるかは、検証されていません
- そのうえで、βカロテンは脂溶性ですから、油を使った料理や食事と合わせるのは理にかなっていると考えます(著者の視点として)
- 搾りたて530 gと市販の紙パック200 mLでは、状態も量も違います。上の倍率を、そのまま市販品に当てはめることはできません
「たくさん摂るほどいい」ではありません
βカロテンには、量を増やせば増やすほど良い、とは言えない事情があります。
先ほどのAREDS2では、もとの処方に含まれていたβカロテンを外した処方も、同時に検証されました。ここで、βカロテンを含む群に入る可能性があったのは、現在喫煙しておらず、禁煙から1年以上経っている人だけです。現在喫煙している人と、無作為化の1年以内に禁煙した人は、βカロテンを含まない群に割り付けられる設計になっていました。それ以前の研究で、βカロテンのサプリメントと喫煙者の肺がんとの関連が指摘されてきたことを踏まえた設計です。
その人たちのなかでの比較で、βカロテンを割り付けられた群の肺がんは1,348名中28例(2.1%)、割り付けられなかった群では1,341名中11例(0.9%)と報告されています(p = 0.04)。そして、肺がんを発症した人の91%は、過去に喫煙歴のある人でした。いま吸っていなくても、かつて吸っていた人にリスクが集まっている、ということです。
研究グループはこれらを受けて、この種のサプリメントにはβカロテンよりルテイン・ゼアキサンチンのほうが適切だと結論しています。
ここで区別しておきたいのは、これはサプリメントとしてまとまった量を摂った場合の報告であり、野菜や野菜ジュースを飲んだ場合の話ではない、という点です。食品として摂るβカロテンについて、同じ懸念が示されているわけではありません。
著者の視点: 「体にいい成分」として紹介されたものが、形を変えて高用量になったとたんに別の顔を見せる。これはβカロテンに限った話ではありません。成分の名前だけを見るのではなく、どういう形で、どれだけ摂るのかまで見る必要があるのではないでしょうか。
実践ポイント
- 喫煙している方、過去に喫煙されていた方は、βカロテンのサプリメントは避けるのが無難です
- サプリメントを検討するときは、いま飲んでいる薬や他のサプリメントも含めて、医師・薬剤師に相談してください
それで、黄・オレンジの野菜ジュースは何にいいのか
はじめの問いに戻ります。
言えるのは、βカロテンの供給源になるということです。βカロテンは体内でビタミンAに変わる材料で、にんじんは野菜のなかでもこれを多く含みます。搾ってジュースにすれば、吸収されやすくもなります。
そして「目に」と言われるルテインは緑の葉物の成分、「骨に」と言われるβクリプトキサンチンは柑橘の成分でした。オレンジ色のジュースに、この二つの役目まで求めるのは無理があります。色ごとに得意な成分が違う、というだけの話です。
著者の視点: この手の飲みものは、「効く」「効かない」の二択に押し込まれがちです。でも、そのどちらにも収まりません。得意なことがあって、苦手なこともある。そう書き分けるのが、いちばん誠実なところに落ち着くはずです。
実践ポイント
- 黄・オレンジのジュースは、βカロテンを補う一杯として位置づけると、期待とずれません
- ルテインなら緑の葉物、βクリプトキサンチンなら柑橘。目的が決まっているなら、そちらへ
- 飲む量やタイミング、そもそも野菜の代わりになるのかという話は、別の記事にまとめています(下記)
医療に関する注意
この記事は、査読を経た研究をもとに情報を整理したものであり、診断や治療の指針を示すものではありません。特定の食品や成分が、病気を予防したり治療したりすることを保証するものでもありません。
持病のある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方、薬を服用中の方は、食生活を大きく変える前に、主治医または薬剤師にご相談ください。見え方の変化、骨や体調について気になることがある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
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使用文献
- Chew EY, Clemons TE, SanGiovanni JP, Danis RP, Ferris FL 3rd, Elman MJ, et al.; The Age-Related Eye Disease Study 2 (AREDS2) Research Group. Secondary Analyses of the Effects of Lutein/Zeaxanthin on Age-Related Macular Degeneration Progression: AREDS2 Report No. 3. JAMA Ophthalmology. 2014;132(2):142-149.
- Sugiura M, Nakamura M, Ogawa K, Ikoma Y, Yano M. High Serum Carotenoids Associated with Lower Risk for Bone Loss and Osteoporosis in Post-Menopausal Japanese Female Subjects: Prospective Cohort Study. PLoS ONE. 2012;7(12):e52643.
- Choi M, Baek J, Park E. Comparative bioavailability of β-carotene from raw carrots and fresh carrot juice in humans: a crossover study. Nutrition Research and Practice. 2025;19(2):215-224.
- U.S. Department of Agriculture, Agricultural Research Service. FoodData Central.(にんじん 生 FDC 170393/ほうれん草 生 FDC 168462/ケール 生 FDC 168421)2026年8月6日閲覧
※本記事は健康情報の提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。症状や体調についての具体的なご相談は、医師または薬剤師にご確認ください。


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