緑茶カテキンで血管年齢は若返る?動脈硬化予防への効果を保健学博士が解説

食事・栄養

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緑茶を毎日飲んでいる方は多いと思いますが、「緑茶カテキンは血管に良い」という話を耳にしたことはないでしょうか。健康診断や人間ドックで「血管年齢」を測定する機会が増えている中、日々の食事や飲み物でどこまで血管の健康をサポートできるのか、気になっている方も多いはずです。

この記事では、緑茶カテキンと血管年齢・動脈硬化予防の関係について、国内外の査読済み論文を参考に整理していきます。


血管年齢とは?動脈硬化とどう関係しているのか

血管年齢とは、血管の硬さやしなやかさを年齢に置き換えて表した指標で、健康診断や人間ドックでは主に「心臓足首血管指数(CAVI)」や「脈波伝播速度(PWV)」といった検査値をもとに算出されます[9]。また、研究の場面では、血管内皮の働きを示す「血流依存性血管拡張反応(FMD)」や、動脈の硬さに関連する「中心血圧の増大指数(AIx)」といった指標も、血管の状態を評価するために用いられています。これらの値が実年齢よりも高い場合、血管が硬くなりやすい状態、つまり動脈硬化が進行しやすい状態にあると考えられています。

動脈硬化は、血管の内側にLDLコレステロールなどが沈着し、血管壁が厚く硬くなっていく変化で、長い時間をかけて徐々に進行するのが特徴です。動脈硬化が進むと血管内皮の機能低下や血圧の上昇を伴いやすくなり、これが将来の心血管疾患や脳血管疾患のリスク因子の一つとして報告されています。

【著者の視点】 血管年齢は一つの数値だけで決まるものではなく、血管の硬さ・内皮の働き・血圧への反応など、複数の側面を組み合わせて評価される指標です。そのため、ある食品を摂ったことで「血管年齢が何歳若返った」と一言で言い切るのは難しく、研究データを見るときは「どの指標が、どの条件で、どの程度変化したのか」を丁寧に確認する必要があると感じています。


緑茶カテキンとは?主な種類と特徴

緑茶に含まれるポリフェノールの一種であるカテキンは、緑茶特有の苦味・渋味のもとになる成分で、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCG)など複数の種類があります。中でもEGCGは緑茶カテキンの中で含有量が多く、抗酸化作用をはじめとするさまざまな生理作用について、研究が積み重ねられてきた成分です。

緑茶カテキンには、抗酸化作用や抗炎症作用といった複数の生理機能が報告されており、なかでもEGCGについては血小板の働きに関する作用も報告されています。これらが血管の健康と関連する可能性があるとして注目されています。

【著者の視点】 「カテキン」とひとくくりに語られることが多いのですが、種類によって体内での働き方には違いがあるとされています。研究結果を見るときも、「緑茶という飲み物そのもの」を使った研究なのか、「精製したEGCGという単一成分」を使った研究なのかによって、結果の解釈が変わってくる点は、研究を読む上で意識しておきたいポイントです。


緑茶カテキンが血管に働きかけるメカニズム

緑茶カテキンの摂取が血管の状態と関連すると考えられている背景には、いくつかの生理学的なメカニズムが関わっているとされています。

第一に、カテキンには強い抗酸化作用があり、LDLコレステロールの酸化を抑える働きが報告されています[1]。酸化されたLDL(酸化LDL)は血管内皮を傷つけ、動脈硬化の初期段階であるプラーク形成に関与すると考えられているため、酸化を抑えることは血管内皮を保護する方向に働く可能性があります。

第二に、カテキン(EGCG)が血管内皮細胞の一酸化窒素合成酵素(eNOS)を活性化し、一酸化窒素(NO)の産生に関与する可能性が、ラットの血管組織やウシの血管内皮細胞を用いた基礎研究で報告されています[2]。NOには血管を拡張させる働きがあり、血管のしなやかさの維持と関連すると考えられています。

第三に、EGCGには血小板の過剰な凝集を抑える作用が、ヒトの血小板を用いた実験で報告されており[3]、血栓形成のリスクとの関連が指摘されています。

【著者の視点】 これらのメカニズムは、培養細胞や動物を用いた基礎研究の段階で報告されているものが中心です。基礎研究で確認されたメカニズムが、そのままヒトの体内でも同じように働くとは限らないため、「メカニズムとしては理にかなっている」という段階の情報と、「ヒトを対象とした臨床研究で確認されている」という段階の情報は、分けて理解することが大切だと考えています。


査読論文からみる緑茶カテキンと血管・動脈硬化への効果

ここからは、緑茶やカテキンと血管の状態に関するヒトを対象とした研究について、代表的な報告をいくつか紹介します。

血圧との関連

緑茶カテキンの摂取と血圧の関係を調べたランダム化比較試験を統合したメタアナリシスでは、緑茶やカテキンの摂取が、収縮期血圧でおよそ2mmHg、拡張期血圧でおよそ1.7mmHgの低下と関連していたと報告されています[4]。この研究では、緑茶やそのカテキンは血圧の改善と関連する可能性があり、特に収縮期血圧が130mmHg以上の人ではその関連がより大きい可能性があると述べられています。

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血管内皮機能(FMD)との関連

血管の状態を評価する指標の一つに、血流依存性血管拡張反応(FMD)があります。お茶の摂取とFMDの関係を調べた複数の介入研究を統合したメタアナリシスでは、FMDは血管の反応性を示す指標として位置づけられ、お茶の摂取が血管内皮機能の改善と関連する可能性が示されています[5]。なお、このメタアナリシスは緑茶・紅茶を含む「お茶」全般を対象としたものであり、緑茶カテキンに限定した知見ではない点には留意が必要です。

一方で、緑茶飲料・緑茶抽出物・精製したEGCGをそれぞれ単回摂取し、摂取後のFMDの変化を比較したクロスオーバー試験では、緑茶を摂取した場合にのみFMDの改善がみられ、精製したEGCGや緑茶抽出物の単独摂取では同様の改善が確認されなかったと報告されています[6]。この研究では、EGCG単独ではなく、緑茶に含まれる他の成分や成分同士の組み合わせが関与している可能性が指摘されています。なお、この研究は単回摂取後の急性的な変化を検討したものであり、日常的に飲み続けた場合の長期的な効果を直接示すものではない点には留意が必要です。

これらをあわせると、「緑茶(飲料そのもの)の摂取」と血管内皮機能の変化との関連を示す報告は複数存在する一方で、「緑茶カテキン(特にEGCG)という成分単体」が血管内皮機能の改善に直接結びつくかどうかについては、現時点では明確な結論が出ていないといえるでしょう。

動脈の硬さ(動脈スティフネス)との関連

2型糖尿病のある方を対象に、カテキンを含む緑茶エキスを12週間摂取してもらったランダム化比較試験では、プラセボ群と比較して、緑茶エキスを摂取した群で中心血圧の増大指数(AIx, central augmentation index)が低下したと報告されています[7]。増大指数は動脈の硬さを反映する指標の一つとされ、この研究では緑茶エキスが標準治療の補助として動脈の硬さの改善に役立つ可能性があると述べられています。

【著者の視点】 これらの研究をまとめて見ると、「緑茶やカテキンの摂取が、血圧・血管内皮機能・動脈の硬さといった血管に関連する指標の変化と関連している」という報告は一定数存在します。ただし、対象者の人数が数十人規模の研究が多く、対象者の年齢や持病の有無、もともとの飲茶習慣などによって結果が変わりうる点には注意が必要です。特にFMDについては、「緑茶という飲み物全体」としての効果と、「カテキンという成分単体」の効果が、研究によって異なる結果を示している点が印象的です。「緑茶を飲めば血管年齢が確実に下がる」、あるいは「カテキンという成分さえ摂れば血管が若返る」と言い切れるだけのエビデンスの蓄積段階には、まだ至っていないと考えています。


緑茶カテキンだけで血管年齢は若返るのか?限界と注意点

ここまで紹介してきたように、緑茶カテキンの摂取は、血管の状態に関連するいくつかの指標の変化と関連すると報告されています。しかし、これらはあくまで「関連」が報告されている段階であり、緑茶カテキンの摂取が動脈硬化を予防する、あるいは血管年齢を若返らせるということを直接証明したものではありません。

動脈硬化は、加齢、遺伝的要因、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、運動不足など、多くの要因が長期間にわたって複雑に関わりながら進行する変化です。緑茶カテキンの摂取がこれらすべての要因に影響を与えるわけではなく、緑茶カテキンの摂取だけで動脈硬化のリスクが大きく変化するとは考えにくいでしょう。

また、緑茶やカテキンを高濃度に含むサプリメント・健康食品を長期間・高用量で摂取することについては、肝機能への影響が懸念されるとする報告もあり、欧州食品安全機関(EFSA)などからも注意が呼びかけられています[8]。食品としてお茶を飲む量とは異なる点として、留意しておく必要があります。

【著者の視点】 「○○を食べれば血管年齢が若返る」という情報の多くは、研究の一部分だけを切り取って強調されたものであることが多いと感じています。緑茶カテキンに関する研究も同様で、「血管に関連する指標に良い変化がみられる可能性が報告されている」という情報を、生活習慣全体を見直すきっかけの一つとして受け止めることが、現実的で無理のない向き合い方だと感じています。


緑茶カテキンを日常生活に取り入れる際の考え方

緑茶カテキンの摂取そのものを目的にするのではなく、動脈硬化予防の基本となる生活習慣の一部として、緑茶を取り入れるという考え方が現実的でしょう。

例えば、食事の際の飲み物を緑茶に置き換える、糖分を含む飲料の一部を緑茶に置き換えるといった工夫は、結果的に総糖質摂取量や総カロリーの調整につながりやすく、血管の健康と関連する複数の要因に対して、間接的にプラスに働く可能性があります。

緑茶を食事と一緒に飲むこと自体は、多くの方にとって特に問題になるものではないと考えられます。ただし、緑茶に含まれるカテキン(タンニン)は、植物性食品に含まれる非ヘム鉄と結合し、鉄の吸収を一時的に低下させる可能性が報告されています。ある研究では、鉄を含む食事と緑茶を同時に摂取した場合、水を摂取した場合と比べて非ヘム鉄の吸収が約37%低下したのに対し、食事から1時間ほど時間をおいて緑茶を飲んだ場合は、その低下幅がおよそ半分程度にとどまったと報告されています[10]。貧血を指摘されたことがある方や、鉄分の多くを植物性食品から摂っている方は、食事中・食後すぐではなく、食事から30分〜1時間ほど時間をおいて緑茶を飲むという工夫も選択肢の一つになるでしょう。一方で、貧血の心配が特にない方であれば、食後に緑茶を飲むこと自体を過度に心配する必要はないと考えられます。

また、緑茶に含まれるカフェインの摂取量にも注意が必要です。カフェインに敏感な方や、就寝前に多量に摂取する場合は、睡眠の質への影響が報告されているため、量やタイミングを調整することが望ましいでしょう。

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【著者の視点】 緑茶を「一日に何杯飲むべきか」という量を意識するよりも、「これまで飲んでいた糖分の多い飲み物の一部を緑茶に置き換える」「食後の一杯を緑茶にする」といった、無理なく継続できる小さな置き換えの方が大切だと考えています。動脈硬化予防は、特定の食品の効果よりも、日々の積み重ねが土台になると考えています。


まとめ

緑茶や緑茶カテキンの摂取は、血圧や動脈の硬さに関連する指標の変化と関連すると、複数の査読済み研究で報告されています。また、緑茶(飲料そのもの)の摂取は血管内皮機能(FMD)の変化との関連も報告されていますが、この効果がカテキンという成分単体によるものかどうかについては、現時点では明確な結論が出ていません。これらはいずれも「関連」のレベルで報告されているものが中心であり、緑茶カテキンの摂取によって血管年齢が確実に若返る、動脈硬化が予防できると断定できる段階には至っていません。

動脈硬化予防の基本は、バランスの良い食事、適度な運動、禁煙、血圧・血糖・脂質の管理など、生活習慣全体を整えることにあります。緑茶カテキンは、そうした生活習慣の一部として取り入れる選択肢の一つとして位置づけるのが、現時点でのバランスの良い捉え方だと考えています。


医療免責事項

本記事は、健康に関する一般的な情報提供を目的として、公開されている査読済み論文等を参考に作成したものであり、特定の症状や疾患の診断・治療・予防を目的とするものではありません。記事内で紹介した研究結果は、対象者・条件・摂取量などが研究ごとに異なるため、すべての方に同様の結果が得られるとは限りません。

血圧・血糖・脂質などの数値に不安がある方、すでに高血圧・糖尿病・脂質異常症・心血管疾患などの診断を受けている方、お薬を服用中の方は、緑茶やサプリメントの摂取量を変更する前に、必ず主治医または薬剤師にご相談ください。本記事の内容に基づいて行われた行動の結果について、当サイトおよび著者は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。


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瀬戸 茉莉花

看護師として大学病院・公立病院で臨床を経験後、現在も大学教員として17年間、看護学生の教育と生活習慣病予防の研究に携わっています。看護師・保健師。保健学博士。2児の母として、子育てをしながら情報発信中。
人の幸せの根底には、健康があると思っています。健康だからこそ、大切な人と楽しい時間を少しでも多く過ごせる。そのために健康オタク仲間を増やして、みんなで人生の最後まで元気でいたい。そんな思いでこのブログを書いています

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参考文献

本文中の[1]〜[10]は、それぞれ以下の文献に対応しています。

  1. Suzuki-Sugihara N, et al. Green tea catechins prevent low-density lipoprotein oxidation via their accumulation in low-density lipoprotein particles in humans. Nutrition Research. 2016;36(1):16-23.
  2. Lorenz M, et al. A constituent of green tea, epigallocatechin-3-gallate, activates endothelial nitric oxide synthase by a phosphatidylinositol-3-OH-kinase-, cAMP-dependent protein kinase-, and Akt-dependent pathway and leads to endothelial-dependent vasorelaxation. Journal of Biological Chemistry. 2004;279(7):6190-6195.
  3. Lill G, et al. Complex effects of different green tea catechins on human platelets. FEBS Letters. 2003;546(2-3):265-270.
  4. Khalesi S, et al. Green tea catechins and blood pressure: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. European Journal of Nutrition. 2014;53(6):1299-1311.
  5. Ras RT, et al. Tea consumption enhances endothelial-dependent vasodilation: a meta-analysis. PLoS ONE. 2011;6(3):e16974.
  6. Lorenz M, et al. Tea-induced improvement of endothelial function in humans: No role for epigallocatechin gallate (EGCG). Scientific Reports. 2017;7:2279.
  7. Quezada-Fernández P, et al. Effect of green tea extract on arterial stiffness, lipid profile and sRAGE in patients with type 2 diabetes mellitus: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. International Journal of Food Sciences and Nutrition. 2019;70(8):977-985.
  8. EFSA Panel on Food Additives and Nutrient Sources added to Food (ANS). Scientific opinion on the safety of green tea catechins. EFSA Journal. 2018;16(4):5239.
  9. Saiki A, Ohira M, Yamaguchi T, Nagayama D, Shimizu N, Shirai K, Tatsuno I. New Horizons of Arterial Stiffness Developed Using Cardio-Ankle Vascular Index (CAVI). Journal of Atherosclerosis and Thrombosis. 2020;27(8):732-748.
  10. Ahmad Fuzi SF, Koller D, Bruggraber S, Pereira DIA, Dainty JR, Mushtaq S. A 1-h time interval between a meal containing iron and consumption of tea attenuates the inhibitory effects on iron absorption: a controlled trial in a cohort of healthy UK women using a stable iron isotope. American Journal of Clinical Nutrition. 2017;106(6):1413-1421.

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