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「熱中症は7月・8月だけの問題」——そう思っていませんか? 実は、5月や6月、そして9月でも、毎年数千人から数万人規模で熱中症による救急搬送が発生しています。 むしろ、真夏以外の時期は「油断」「体が慣れていない」という2つのリスクが重なり、重症化しやすい側面もあります。 この記事では、なぜ真夏以外でも熱中症が危険なのか、月ごとの特徴と中高年が取るべき対策を解説します。
5月から救急搬送が始まっている——消防庁の最新データ
総務省消防庁は毎年5月から9月にかけて、熱中症による救急搬送の調査を実施しています。 令和7年(2025年)の確定値(消防庁発表)によると、5月から9月の累計搬送人員は100,510人と、調査開始以降で過去最多を記録しました。
月別の搬送人員を見ると:
- 5月:2,614人(死亡1人)
- 6月:17,229人(死亡26人)——6月として過去最多
- 7月:39,375人(死亡48人)
- 8月:31,526人(死亡39人)
- 9月:9,766人(死亡3人)
「熱中症は7月・8月の問題」というイメージが強いですが、6月の搬送人員は17,229人と、8月の約半数に匹敵します。5月でも2,000人以上が搬送されており、「まだ大丈夫」という感覚が命取りになりかねません。
著者の視点
私の子どもたちが熱中症になったのは、真夏ではなく5月・9月・10月のことでした。いずれも外遊びの後で、嘔吐してしまったのが最初のサインでした。「まだそんな季節じゃない」「もう涼しくなってきた」という油断から、水分を促すのをついつい忘れていたのが原因だったと思います。
それ以来、5月から10月は季節に関係なく、外遊びの前後には必ず水分補給を促すようにしています。子どもは自分からなかなか水を飲みたがらないので、親が声をかけ続けることが大切です。
なぜ真夏以外に熱中症が起きやすいのか
5月:体が暑さに慣れていない「暑熱順化不足」
5月に熱中症が起きやすい最大の理由は、暑熱順化(しょねつじゅんか)が十分でないことです。
暑熱順化とは、体が暑さに適応するプロセスのことで、発汗機能の向上・血液循環の効率化などが含まれます。この適応には個人差がありますが、厚生労働省の熱中症予防対策マニュアルでは7日以上かけて暑さに慣らしていくことが推奨されています。
5月は前年の冬から春を経て、体がまだ暑さに慣れていない状態です。急に気温が上がる日が続くと、体が対応しきれず熱中症を引き起こしやすくなります。特にゴールデンウィーク明けから気温が急上昇する年は要注意です。
中高年は暑熱順化に時間がかかる
愛知医科大学の研究(小川、2006年・日本衣服学会誌)によると、高齢者では暑熱順化の速度が若年者より遅く、さらに暑さへの適応が消える「脱順化」が早期に起こりやすいことが示されています。「去年は平気だったから」という感覚を過信しないことが重要です。
また、産業医学レビュー(2022年)では、暑熱順化は3〜4日で消失することが指摘されています。涼しい日が続いた後に急に気温が上がる日——たとえば5月の連休明けや梅雨の晴れ間——は特に危険です。
6月:梅雨の高湿度が体温調節を妨げる
6月は気温だけで見れば真夏ほど高くありません。しかし、梅雨の高湿度が体温調節を大きく妨げます。
汗が体温を下げる仕組みは「気化熱」によるもので、汗が蒸発するときに体の熱を奪います。しかし湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温を下げる機能が低下します。気温が低めでも湿度が高い日は、体感的には猛暑日に近い負担がかかることがあります。
令和7年(2025年)6月の搬送人員が17,229人と6月として過去最多を記録したことは、梅雨時期の熱中症リスクの高さを示しています。
また「雨だから涼しい」「曇りだから安全」という油断も危険です。雨の日でも気温と湿度が高ければ熱中症リスクはほとんど変わりません。
9月:残暑と油断のダブルリスク
9月は暦の上では秋ですが、残暑が続くことが多く、熱中症リスクが続きます。令和7年(2025年)9月の搬送人員は9,766人と、依然として高い水準が続いています。
9月特有のリスクは「終わった」という油断です。
- エアコンの使用を早々に止めてしまう
- 水分補給の意識が下がる
- 「もう秋だから」と帽子や日傘をしまう
こうした行動が重なり、9月に重症化するケースが見られます。特に中高年・高齢者は、先述の研究(小川、2006年)が示すように、秋に暑さがぶり返したときに暑熱順化が消えた状態で高温にさらされるリスクが高く、注意が必要です。
中高年が特に注意すべき理由
消防庁の令和7年(2025年)データによると、熱中症による救急搬送のうち65歳以上の高齢者が過半数以上を占めています。
なぜ中高年・高齢者のリスクが高いのでしょうか。
体温調節機能の低下 Cole et al.(2023年・PLoS ONE)のシステマティックレビューによると、高齢者では汗腺の反応が遅れ、発汗が始まる体温の閾値が上昇することで、暑熱環境下での体温上昇がより大きくなることが示されています。暑くても「暑い」と感じにくく、危険なレベルまで体温が上がっても自覚しにくい状態が続きます。
のどの渇きを感じにくい 厚生労働省「高齢者のための熱中症対策」リーフレットによると、加齢により暑さやのどの渇きに対する感覚が鈍くなるため、脱水が進んでも水分補給のタイミングが遅れがちになります。
暑熱順化に時間がかかる 体の適応能力が低下しているため、5月・6月の急な気温変化に対応しにくくなっています。
持病・服薬の影響 持病のある方や薬を服用している方は、入浴・外出の際に主治医に確認することをおすすめします。
子どもも要注意——親・祖父母が知っておきたいこと
熱中症は中高年・高齢者だけの問題ではありません。子どもも同様に注意が必要です。
こども家庭庁によると、令和5年(2023年)5〜9月の子どもの熱中症による救急搬送人員は10,384人にのぼり、直近5年で最多を記録しています。
なぜ子どもは熱中症になりやすいのか
関西大学らの研究グループが2023年に発表した査読論文(Journal of Thermal Biology)によると、子どもの体温調節反応は体温調節機能の未熟さと体の小ささによって不利な状態にあることが示されています(Tsuzuki et al., 2023・PMID: 37055125)。
こども家庭庁はこの特性を踏まえ、子どもが熱中症になりやすい理由として次の3点を挙げています。
体温調節機能が未発達で、汗をかく機能が未熟なため、暑さを感じてから発汗までに時間がかかります。そのため体に熱がこもりやすく、体温が急上昇しやすい状態が続きます。
身長が低いため地面からの照り返しの影響を強く受けます。大人の顔の高さで32℃の時、子どもの顔の高さでは35℃程度の感覚になることがあります。
自分で体調の変化を訴えられないことがあります。遊びに夢中になると異変に気づかず、周囲の大人が顔色や汗の量に気を配る必要があります。
著者の経験でも、子どもたちが外遊びの後に嘔吐するという形で熱中症のサインが出るまで、本人たちは「つらい」と言いませんでした。子どもの様子を大人が積極的に見守ることが大切です。
子どもの熱中症については別記事で詳しく解説しています。
月別・危険な状況チェックリスト
5月に注意したい状況
- 久しぶりに屋外での運動や農作業をする
- 「まだ5月だから」と帽子・日傘を持ち歩かない
- ゴールデンウィーク後に急に活動量が増える
- 水分補給をせずに外出する
- 気温が高い日に長時間直射日光の下にいる
6月に注意したい状況
- 「雨だから涼しい」と油断する
- 湿度が高い日に激しい動きをする
- 梅雨の蒸し暑さでも「気温が低いから大丈夫」と思う
- 室内でエアコンを使わずに過ごす
- 水分補給を忘れる
9月に注意したい状況
- 「もう秋だから」とエアコンを切る
- 帽子や日傘をしまってしまう
- 水分補給の頻度を夏より大幅に減らす
- 残暑の中で屋外作業・外出をする
真夏以外の熱中症を防ぐ5つの対策
1. 5月から暑熱順化を意識する
5月に入ったら、意識的に体を暑さに慣らしましょう。毎日少しずつ屋外で活動する時間を設け、体を徐々に慣らすことが大切です。急に長時間の屋外活動をすることは避けましょう。
2. 気温だけでなく「湿度」にも注意する
梅雨時期は特に湿度が体感温度を左右します。天気予報で気温だけでなく湿度も確認する習慣をつけましょう。環境省は熱中症リスクの指標として「暑さ指数(WBGT)」の活用を推奨しており、気温・湿度・輻射熱を組み合わせた指標です。
3. 水分補給は季節を問わず継続する
「9月になったから水分補給をやめていい」ということはありません。残暑が続く限り、こまめな水分補給は必須です。水や麦茶でも構いませんが、屋外活動や発汗が多い場合はナトリウムも補給できる飲み物が適しています。
▶️やっぱりスポーツドリンク・経口補水液が安心。

水分補給の詳細は「夏の水分補給、水だけじゃダメな理由」もあわせてご参照ください。

4. エアコンは残暑・秋口まで活用する
「もったいない」「秋だから」という理由でエアコンを早々に切るのは危険です。近年は10月に入っても気温が高い日が続くことがあり、室温が高いと感じるようであれば10月中も状況に応じてエアコンを使いましょう。私自身、子どもたちが10月に熱中症になった経験があります。「暦の上での秋」と「体への負担」は別物です。
5. 天気予報・熱中症情報を毎日確認する
環境省の熱中症予防情報サイトでは、暑さ指数(WBGT)の実況・予測が公開されています。また、熱中症警戒アラートが発表された日は特に注意が必要です。
よくある誤解Q&A
Q. 5月はまだ涼しいから熱中症にはならない?
気温が低くても、急な気温上昇や直射日光・高湿度の組み合わせで熱中症になることがあります。消防庁のデータでは毎年5月に2,600〜3,700人規模が救急搬送されています。「まだ5月」という安心感が最も危険です。
Q. 曇りや雨の日は熱中症にならない?
曇りや雨の日でも、気温と湿度が高ければ熱中症リスクはほぼ変わりません。特に梅雨時期は湿度が体温調節を妨げるため、気温が低く見えても油断は禁物です。
Q. 9月に入れば安心?
残暑が続く9月も注意が必要です。令和7年(2025年)の9月の搬送人員は9,766人で、依然として高水準でした。「秋になったから」と対策をやめることが重症化につながります。
Q. 涼しい室内にいれば真夏以外は安全?
室内でもエアコンなしで高温多湿な状態が続けば熱中症になります。特に中高年・高齢者は自覚しにくいため、室温の管理が重要です。
あわせて読みたい【熱中症シリーズ】




まとめ
真夏以外でも熱中症は起きます。消防庁のデータが示すように、5月・6月・9月にも毎年数千〜数万人規模で救急搬送が発生しています。
- 5月:暑熱順化不足に注意
- 6月:梅雨の高湿度が体温調節を妨げる
- 9月:残暑と油断のダブルリスク
中高年の方は体温調節機能が低下しているため、季節を問わず水分補給・室温管理・外出時の対策を継続することが大切です。「もう終わった」「まだ大丈夫」という感覚が最も危険です。ぜひ今日から年間を通じた熱中症対策を意識してみてください。
使用文献
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf

https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_1-3.pdf
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/content/contents/000675892.pdf
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pdf/heatillness_leaflet_senior_2022.pdf





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