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毎年夏になると、学校や公園で子どもが熱中症で倒れたというニュースを耳にします。でも「子どもって体が丈夫なんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。
実は、子どもは大人と比べて熱中症になりやすい体の特徴をいくつも持っています。体温調節機能がまだ発達途上にあること、体格や身長による物理的なリスクがあること、そして「つらい」と言葉で伝えにくいこと——これらが重なって、子どもの熱中症リスクは高くなります。
夏休み前のこの時期に、ぜひ知っておいてほしい内容をまとめました。
目次
- 子どもの熱中症、どれくらい起きているの?
- 理由① 汗腺が未発達で、うまく汗がかけない
- 理由② 体重あたりの体表面積が広く、外気温の影響を受けやすい
- 理由③ 身長が低いほど、気温が高い場所にいる
- 理由④ 急な暑さに体が対応しきれないことがある(暑熱順化)
- 理由⑤ 「暑い・つらい」をうまく伝えられない
- 【チェックリスト】こんなサインに気をつけて
- 場所別・年齢別の対策
- よくある質問(Q&A)
- 著者の視点:2児の母として感じること
- まとめ
- 参考文献
- 医療免責事項
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子どもの熱中症、どれくらい起きているの?
総務省消防庁の発表によると、2024年(令和6年)5月〜9月に熱中症で救急搬送された人数は全国で9万7,578人と、調査開始以来の過去最高を記録しました。このうち7〜17歳の「少年」が全体の9.0%、生後28日〜6歳の「乳幼児」が0.6%を占めています(総務省消防庁、2024年)。
こども家庭庁がまとめたデータでは、2023年(5〜9月)の子どもの熱中症による救急搬送人員は10,384人で、前年より2,180人増え、直近5年間で最多となりました(こども家庭庁、2025年)。
高齢者の搬送が注目されがちですが、子どもの熱中症は決して少なくない。そしてその背景には、大人とは異なる体のしくみがあります。
理由① 汗腺が未発達で、うまく汗がかけない
ヒトが体温を下げる手段で最も重要なのが「発汗」です。汗が皮膚の表面で蒸発するとき、気化熱として体の熱が奪われます。
ところが、思春期前の子どもは汗腺をはじめとした体温調節機能がまだ十分に発達していません(環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」)。研究によると、子どもの発汗量が少ない原因は汗腺の数ではなく、1つの汗腺あたりの発汗量が少ないことと、熱刺激に対する汗腺の感受性が低いことにあることが示されています(Falk B, Sports Med. 1998, PMID: 9587181)。
では、汗が十分にかけない子どもはどうやって体温を調節しているのでしょうか。
子どもは、未発達な発汗能力を補うために皮膚血流量を著しく増加させるという特徴的な熱放散を行います(環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」)。皮膚の表面に血液をより多く送ることで、体の表面から熱を逃がすのです。
この方法は気温が皮膚温より低い場合には有効に働きます。しかし炎天下のように気温が皮膚温を超える状況では、逆に周囲の熱を体内に取り込んでしまうことになり、深部体温が大人より大きく上昇し、熱中症のリスクが急増します(環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」)。
理由② 体重あたりの体表面積が広く、外気温の影響を受けやすい
子どもは大人に比べて、体重に対する体表面積の比率が大きいという体格的な特徴があります。
体表面積は「熱を放散する場所」、体重は「熱を産生する場所(熱源)」と考えると、この比率が大きいということは、周囲の環境温度の影響を受けやすいことを意味します(Falk B, Dotan R. Appl Physiol Nutr Metab. 2008, PMID: 18347699)。
気温が低い場合には体表面積の大きさが有利に働き、効率よく体表面から熱を逃がすことができます。一方、気温が高い夏の炎天下では、周囲の熱を吸収しやすく体温が上がりやすいという不利な面が現れます(こども家庭庁、2025年)。
国際的な研究でも、子どもは大人に比べて体重あたりの体表面積が大きく、乾燥した環境下での熱放散においては有利に働く一方、極端な高温環境では熱獲得の速度が増すと報告されています(Falk B, Dotan R. Appl Physiol Nutr Metab. 2008, PMID: 18347699)。
つまり子どもの体は「熱しやすく冷めやすい」——気温が快適な範囲では問題になりませんが、夏の高温環境ではリスクとなります。
理由③ 身長が低いほど、気温が高い場所にいる
あまり知られていませんが、地面の近くは気温が高い傾向があります。
環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」のコラムによると、東京都心で気温が32.3℃だった日に、150cmの高さでは32.3℃であったのに対し、幼児の身長に近い50cmの高さでは35℃を超え、地面に近い5cmでは36℃以上に達していました。
アスファルトの照り返し熱(輻射熱)を受けやすい地面に近い環境で過ごすことの多い幼い子どもたちは、大人が「暑い」と感じているとき、さらに高温の環境にさらされているのです(こども家庭庁、2025年)。
ベビーカーを使っているお子さんがいる保護者の方も特に注意が必要です。ベビーカーの座面は地面に近く、アスファルトからの照り返し熱の影響を大人よりも強く受ける位置にあります。
理由④ 急な暑さに体が対応しきれないことがある(暑熱順化)
暑さへの「暑熱順化」とは、繰り返し高温環境にさらされることで体が徐々に暑さに適応していく生理的なプロセスです。一般的に数日〜2週間程度かかるとされています(環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」)。
子どもの暑熱順化については、成人と比較した場合の獲得速度の差異に関して研究が続いており、現時点では一概に「時間がかかる」とは言い切れない面もあります。ただし、エアコンの効いた室内中心の生活から急に屋外で活動する場合、体が暑さに慣れていない状態であることは確かであり、特に注意が必要です(環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」)。
また、梅雨明けや夏休みの開始直後など、急に暑くなる時期は特に注意が必要です。体が暑さに慣れていない状態で、急激に気温が上昇する場面での熱中症リスクが高まります。
こども家庭庁は、日頃から適度な外遊びなどを通じて体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」の大切さを呼びかけています(こども家庭庁、2025年)。
理由⑤ 「暑い・つらい」をうまく伝えられない
子どもの熱中症には、生理学的なリスクだけでなく「コミュニケーション」の問題もあります。
特に乳幼児は、暑さや体の不調を言葉で伝えることができません。また少し大きくなった子どもでも、遊びに夢中になっていると体のサインを見逃しやすく、先生や大人に「暑い・しんどい」と言い出しにくい場面もあります(こども家庭庁、2025年)。また、集団活動や部活動などの環境では、体調不良を申し出ることに心理的なハードルを感じる子どももいると考えられます。
子ども自身の訴えを待つだけでなく、大人が積極的に顔色や汗の様子を観察することが重要です。
【チェックリスト】こんなサインに気をつけて
子どもは自分で体調の変化を伝えにくいため、周囲の大人が次のようなサインに気づくことが大切です。これらの症状は熱中症以外の疾患でも現れることがありますが、暑い環境にいた後に見られた場合は特に注意が必要です。
まず涼しい場所で休ませ、水分補給を(軽症のめやす)
- 顔が赤く、ひどく汗をかいている
- めまいや立ちくらみがある
- 筋肉がつる(こむら返りなど)
※涼しい場所に移動し、水分・塩分補給を行っても15〜30分程度で改善しない場合や、症状が悪化する場合は、医療機関を受診してください。
医療機関への受診を検討するサイン(中等症のめやす)
- 頭痛・吐き気・嘔吐がある
- ぐったりして元気がない、倦怠感が強い
※これらの症状は熱中症以外の疾患でも現れることがあります。判断に迷う場合は医療機関にご相談ください。
すぐに救急車を呼ぶサイン(重症のめやす)
- 汗をまったくかいていない・皮膚が乾燥している(炎天下にいたのに)
- 呼びかけへの反応がおかしい、または応じない
- 意識が朦朧としている、まっすぐ歩けない
- 自分でペットボトルのふたを開けられないほど衰弱している
- けいれんを起こしている
場所別・年齢別の対策
乳幼児(0〜6歳)
- ベビーカー移動では地面に近い高温に注意。保冷シートの活用や、日陰・涼しい時間帯の選択を
- 短時間でも車内に置き去りにしない(車内温度は急速に上昇します)
- 汗や顔色をこまめに確認。「汗をかいていない」「顔が赤い」は要注意
ベビーカー移動の暑さ対策には、ファン付き保冷シートが役立ちます。保冷剤とファンを組み合わせたタイプは、地面からの照り返し熱を受けやすいベビーカーシート周辺の温度を効果的に下げてくれます。

幼稚園・保育園児(3〜6歳)
- 外遊びの前後に水分補給の声かけを。のどの渇きを感じる前に補給する習慣を
- 帽子は必須。通気性の良い素材を選ぶ
- 保育士や先生と「体調が変わったら教えてね」と約束しておく
小学生(7〜12歳)
- 部活・習い事・公園遊びでは、定期的な休憩と水分補給を大人が声かけ
- 「水分補給は恥ずかしくない」「つらいときは言っていい」と伝える
- 帰宅後すぐに顔色・ぐったり感を確認する
学校行事・屋外スポーツ
- 梅雨明け直後・夏休み開始直後は体が暑さに慣れていないため、急な運動量増加に注意
- 暑さ指数(WBGT)を確認し、28℃以上では激しい運動を中止することを検討する(環境省「熱中症予防運動指針」)
よくある質問(Q&A)
Q. 何歳から熱中症のリスクがありますか? A. 乳幼児(0歳〜)から熱中症のリスクがあります。特に体温調節機能が未熟な乳幼児は高リスクです。年齢が上がっても思春期前までは汗腺の発達が十分でないため、油断は禁物です。
Q. 子どもの水分補給はどれくらいが目安ですか? A. 「何mL飲む」という絶対量の目安は、活動量や気温・湿度によって大きく異なります。こども家庭庁は「のどが渇く前に」「こまめに」補給することを推奨しています。スポーツや外遊びをする場合は、水分と塩分の両方を補える飲料(スポーツドリンクや経口補水液)も選択肢になります。
Q. 子どもの熱中症と発熱(かぜなど)はどう見分ければいいですか? A. 熱中症は「高体温(hyperthermia)」という医学的概念で、細菌・ウイルスへの免疫反応で体温が上がる「発熱(fever)」とは異なります。熱中症は高温環境での活動後に現れやすく、涼しい場所に移動させ冷やすことで改善する場合があります。一方、感染症による発熱はそうした環境要因と無関係に生じます。判断がつかない場合は医療機関を受診してください。
Q. プールや水遊びをしていると熱中症にはならないですか? A. 水の中や水辺でも熱中症は起こります。水中では涼しいと感じていても、照り返しや脱水は進んでいます。水から出た後の休憩・水分補給も忘れずに。
Q. 子どもが倒れたらどうすればいいですか? A. まず涼しい場所(エアコンの効いた室内や日陰)に移動させ、衣服を緩めます。意識があり飲める状態なら、経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ飲ませます。首の周り・わきの下・太ももの付け根を冷やすことも有効です。意識がおかしい、呼びかけに反応しない場合はすぐに119番を呼んでください。
子どもに飲ませやすい経口補水液として、ゼリータイプは塩味が感じにくく、スプーンで少しずつ与えられるため嘔吐時や飲みにくいときにも使いやすいです。


著者の視点:2児の母として感じること
うちには2人の子どもがいます。毎年夏になると、水筒の中身の確認と「ちゃんと飲んだ?」の声かけが日課になります。でも正直なところ、下の子が保育園児のころ、お迎えのあとにぐったりしていて慌てたことがありました。「もっと早く気づけたかもしれない」という後悔は今でも覚えています。
子どもは遊びに夢中になると、暑さも体のつらさも後回しにしてしまいます。それは子どもらしい無邪気さでもあるのですが、熱中症については「子どもが気づいて言う」のを待つだけでは不十分だと、身をもって感じています。保護者や周囲の大人が先回りして環境を整え、声をかけ続けることの大切さを、今回の記事を書きながら改めて実感しました。
まとめ
子どもが熱中症になりやすい主な理由は5つです。
- 汗腺が未発達で、発汗による体温調節が十分にできない
- 体重あたりの体表面積が広く、高温環境の影響を受けやすい
- 身長が低いほど気温が高い地面付近の環境にさらされる
- 暑さに慣れていない状態(暑熱順化が不十分)で急な高温環境にさらされやすい
- 「つらい」を言葉にしにくく、大人が気づくことが必要
子ども自身が熱中症を防ぐことには限界があります。夏休み前のこの時期に、水分補給のルールを確認し、子どもの様子を観察する習慣を作っておきましょう。
参考文献
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」第3章「高齢者と子どもの注意事項」(https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/3-2.pdf)
- こども家庭庁「みんなで見守り『こどもの熱中症』を防ぎましょう!」(https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety-actions/cases/netchusho)最終更新2025年
- Falk B. Effects of thermal stress during rest and exercise in the paediatric population. Sports Med. 1998 Apr;25(4):221-40. PubMed PMID: 9587181
- Falk B, Dotan R. Children’s thermoregulation during exercise in the heat — a revisit. Appl Physiol Nutr Metab. 2008;33(2):420–427. PubMed PMID: 18347699
- 総務省消防庁「令和6年(2024年)5月から9月の熱中症による救急搬送状況」(2024年10月公表)
⚕️ 医療免責事項
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、医療上のアドバイスや診断・治療に代わるものではありません。お子さんの体調に関してご心配がある場合は、かかりつけの医師や医療機関にご相談ください。
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